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「金地金を使った消費増税鞘取り売買」

中国、金需要でもトップに

前回は急拡大している中国の金需要とその背景について取り上げてみた。その際に、2013年は金需要で初めて中国がインドを抜いてトップになったのは間違いなかろうとした。その後、世界的な金の広報調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)から2013年10-12月期の需給レポートが発表されたが、中国は1,065トンと前年の806トンから32%の増加でトップとなっていた。驚いたのはインドの数字だった。前年比で減少と見ていたのだが、レポートでは増加となっていたこと。金額ベースで見て年間輸入品で原油に次いで金が2位の規模となっているインドでは、ルピー安につながった経常収支の赤字拡大を抑えるために、2年前から金の輸入規制を強めてきた。1年目は効果が現れず、昨年は輸入関税を10%まで引き上げた上で、輸入した金の20%は再輸出する規制を掛け、それが証明されない場合には新たな輸入は認めないということまでやった。さすがに昨年の秋以降は、インド国内では需給が締まりロンドンの価格に対し100ドルにもなるプレミアムがついたほどだった。それが前年比で13%増の974トンとなったのは、まさにサプライズとなった。輸入規制が強められた結果、密輸が横行するだろう、またしているだろうとはされたのだが、この数字がその辺りの状況を勘案したのか否かは不明。言えるのは、欧米のファンドなどが予想した以上にアジア、インド、中東の実需は強かったということだろう。

消費増税を使った鞘取りは有効か

前回の補足はこれくらいにして、今回は国内の金事情について取り上げてみよう。日本国内では、4月から消費税が3%引き上げられるというので、駆け込み購入が色々な分野で目立っているとされる。消費税増税というと以前から話題に上るのが金地金だ。実物資産である金の購入時には消費税5%を上乗せした代金を支払うことになる。消費税は「購入する側が負担する税金」というのが前提になっている。となると保有している金地金を売却した場合、買い取る相手側が課税されるため買い付け金額に消費税を加えた額を支払うことになる。さて、売却時に先方が支払った消費税はどうなる。これは一般的に個人であれば納税の義務は免除されているので、そのまま受け取っていいことになっている。

この消費税をめぐる取り決めから手軽に売買が出来る金地金が消費税導入時や、その後の税率引き上げ時に注目されてきた。今回の場合ならば5%時に購入し、引き上げ後8%で売却すれば増税分の3%の金額が労せず得られるというわけだ。週刊誌などでは、裏ワザのような差益捻出法ということで取り上げられたりもする。果たして、それほどうま味のある取引だろうか。

確かに理屈の上では利益は得られるのだが、そこにはコストとリスクが隠れている。

まず国内の金地金の売買には、小売価格(顧客の買い値)と買取価格(顧客の売り値)の間に価格差がありグラム4,000円台半ばでは約80円となっている。価格差は「スプレッド」と呼ばれるが価格全体の1.8%ほどになり、顧客サイドからは実質的な手数料のようなものである。今回の3%消費増税で得られる差益は1.2%ほどになるというわけだ。さらに国内では500グラム未満の金地金には一般的に特別バーチャージといって別途手数料が必要になるため(割高)、小口では割に合わない。したがって、この差益狙いは500グラム以上の取引になる。4,000円を超えている現状では取引金額は最小でも200万円を超えることになる。2012年1月以降は、この金額を超えると金地金を買い取った扱い先は、所轄の税務署に支払い調書を提出することが義務付けられおり、これに該当する。

そもそも国内の金価格には、ドル建て価格の変動に加え日々のドル円相場の変動という2つの変数がある。うまく行けば消費増税の差益以上のものが得られる可能性があるが、1.2%の差益は吹き飛ぶこともある。つまり、コストとリスクさらには取引にかかわる手間を考えると、短期での鞘取り的な売買は、個人的にはお勧めはできない。長期保有で増税前に、というのが本来の姿ということ。

亀井 幸一郎(かめい こういちろう)プロフィール
過去コラム一覧


生活設計塾クルー取締役

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役
金融・貴金属アナリスト

中央大学法学部卒業。
山一証券に8年間勤務後、日本初のFP会社で投資顧問会社マネー・マネジメント・インスティチュート(MMI)入社。
1992年世界的な金の広報・調査機関ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。
企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。1998年独立し分析、評論活動に入る。
2002年マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。

「史観と俯瞰」をモットーに金融市場から商品市場、国際情勢まで幅広くウォッチしている。
日経CNBCテレビ「デリバティブ・ワールド」、ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」など数々のメディアでの市場分析のほか、住友金属鉱山サイトでは金市場を軸にした金融経済分析と市況解説を、投資情報誌ネット・マネーにて「亀井幸一郎の金市場の風」、日本証券新聞コラムなど定期寄稿中。

ブログ 『亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」』

 
掲載日:2014年3月4日

 
    

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