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ゆでガエルの寓話

3月に入り大手企業の労使交渉が本格化しています。安倍政権の強い賃上げ要求に産業界も応え、3月12日には自動車、電機などの輸出関連企業を中心に積極的なベースアップ回答が示されました。こうした動きを、デフレ脱却、消費拡大に向けた動きと捉える向きがある一方で、今回の賃上げは、円安による環境変化やコスト削減が主たる要因となって収益が回復したものなので、その持続性と拡がりに限界があるという見方も少なくありません。

実際に、そうした慎重な見方を裏付けるかのように、同日の日経平均株価は、400円近く値下がりしました。下落のきっかけになったのは、緊迫するウクライナ情勢や中国の金融・経済リスク等ですが、最近の株式市場の不安定さは、「金融緩和」や「財政出動」といった短期的なカンフル剤や、「成長戦略」を描くだけでは株高を維持することが困難であることを示していると感じます。

鎌倉投信が設定・運用、販売する「結い 2101(ゆいにいいちぜろいち)」の投資先企業の株価について安倍政権発足以降の状況を分析すると、経済環境の好転によって企業業績も確かに上向いていますが、株価はそれをかなり上回るペースで上昇してきたことが見て取れます。株価は、長期的に観れば「企業のファンダメンタル価値(業績見通しや財務状況等から評価した実体的価値)」に連動します。そのため、先行する期待に対して実体が追随すればよいのですが、実体が伴わないと市場参加者が判断した時には、期待は単なるバブルに変わり株価下落のリスクが顕在化します。それだけに、株式投資においては、常に企業のファンダメンタル価値に投資の軸を据え、株価との相対的な位置関係のバランスを図りながら投資することが必要なのです。

一方で、政府や日銀のマクロ政策については、短期的処方箋として株価や不動産等の資産価値を高めて経済の血流をよくする段階から、成長戦略の具体的進展と、対となるべき行財政改革の断行が求められる段階に入ってきていると感じます。特に行財政改革については、4月からの消費税引き上げや、折に触れてなされる法人税の引き下げ等の議論はあるものの、改革らしい改革の道筋が十分には見えていません。

財務省のHPをみると、今の日本の財政状況を月収40万円世帯の家計に例えるならば、支出が約80万円、負債残高が約80百万円という現状が示されています。日本国債の保有者は日本国民であり、一方で政府のバランスシートには負債の反対側に十分な資産があるからストックをみれば大丈夫だという意見もあります。しかし、これだけバランスを崩したフロー収支の不均衡を是正するには、行財政に係る抜本改革なくして再生はないという危機感の方がむしろ健全といえるでしょう。

お湯が沸騰する鍋にカエルを入れれば、カエルは慌てて外に飛び出します。しかし、カエルを常温の水に入れ、少しずつ水温を上げていくと、生命への危機を感じることなくカエルはしばらく満足げに泳ぎますが、やがて体力を消耗して外に飛び出すことができず、しまいにはゆで上がってしまうという寓話があります。

出口の見えない金融の量的緩和、財政への過度な依存は、まるでこの寓話を見ているようです。健全な危機感を土台にした成長戦略、行財政改革の断行が求められます。

鎌田 恭幸(かまた やすゆき)プロフィール
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鎌倉投信株式会社 代表取締役 社長

1965年島根県生まれ。日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。
2008年11月 鎌倉投信(株) 創業。2011年8月テレビ東京系列「ガイアの夜明け」で紹介される。

著書「日本で一番投資したい会社」(アチーブメント出版)
共著「21世紀をつくる人を幸せにする会社」(ディスカヴァー21)

 掲載日:2014年3月28日

 
    

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