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ますます高まる企業の安全配慮義務

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今月に入り、2つのニュースが企業人事部の注目を集めている。ひとつは、事業者(企業)に心理的な負担の程度を把握するためのストレスチェックを義務付ける労働安全衛生法の改正案が3月13日付で今国会に提出されたこと。もうひとつは、会社員が過重労働でうつ病になった場合、過去の精神科通院歴などを会社側に申告していなかったことが社員側の過失に当たるかが争われた訴訟で、メンタルヘルスは申告がなくても会社側に安全配慮義務がある、と判断された最高裁の判決である。
 
まず、ストレスチェックの義務化については、今後の国会での法案審議の経過や具体的な手続き等を定める厚生労働省令の内容について注視が必要だが、提出された法案に盛り込まれている制度のポイントは下記の通りである。
 
・従業員50名以上の事業者にストレスチェックの実施を義務付け
・ストレスチェックの結果が一定の基準に該当する(つまりストレスが高い)従業員の希望に応じた医師による面接指導の実施の義務
・面接指導の結果に基づいた、医師の意見に基づく適切な措置(例えば、配置転換や時短勤務など)を実施する(企業側の)義務

今回の法改正では、従業員がストレスチェックを受けることで一人ひとりのセルフケアの意識を高める効果が考えられるが、それ以上に重要なのは、「企業側(事業主)が組織として必要な措置や対策を講じなければならない」という企業側の責務がより高まることにあるだろう。

そして、企業側の組織としての対応が益々必要になってくることを裏付けるのが、時機を同じく2014年3月24日に下された最高裁の差し戻し判決である。概要は下記の通り。

・原告は大手電機メーカーの元社員で、工場で生産ライン開発などを担当し、プロジェクトリーダーを務めていたが、うつ病と診断され休職。その前年に神経症との診断を受けたが、会社には伝えていなかった。会社は休職後に職場復帰しなかったとして原告を解雇

・その後、元社員は企業側を相手に解雇無効と損害賠償を求めて提訴し、解雇無効は二審で確定していたものの、最高裁では会社員が過重労働で鬱病になった場合、過去の精神科通院歴などを会社側に申告していなかったことが社員側の過失に当たるか、が争われた

会社側は、
・精神科への通院歴などを申告しなかったため、会社側が鬱病の発症回避などの対応を取れなかった
・業務を離れてもうつ病が完治せず、もともと原告社員固有の問題があった
などの主張のもと、損害賠償の減額を主張したが、

最高裁は、
・当時の原告社員の業務について「負担は相当過重だった」とした上で、通院歴や病名について「プライバシーに関わり人事考課にも影響しうる情報で、通常は知られずに働き続けようとする」と指摘
・さらに原告社員が体調不良を上司に伝え、1週間以上の欠勤を繰り返していたことから「会社側は過重な業務と認識しうる状況だった」と判断

との見解を示し、このことから「メンタルヘルスは労働者からの申告がなくても会社側に労働環境などに十分な注意を払うべき安全配慮義務がある」とし、過失相殺などを理由に損害額の2割を減額した二審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻したのである。

上記2つのニュースは、今後企業側がメンタルヘルスに関して益々積極的な取組姿勢を問われることにつながると考えられ、社会的にも非常に大きなインパクトを与えるものである。

ストレスチェックの義務化法案がこのまま法制化されれば、個人結果を個人が把握するだけではなく、組織分析結果などを使って、職場改善に努めているという姿勢も、会社が安全配慮義務を履行する上で必要という事になるだろう。そして、今回の最高裁判決も、従業員から病状についての申告がなくても、企業側は積極的に労働環境や業務負荷状況に関しての安全配慮義務を負うことを意味している。

こうした義務化や判例は、企業側からすると負担ばかりに目を向けがちであるが、大切なことは、企業側による従来よりも積極的な健康管理や職場改善への取組みが、従業員の働きやすい環境や、活き活きとした職場を創りだしていくことにつながることである。こうした大きな流れが働く人々の活性化につながり、日本経済や企業の活性化に向かう原動力になることを期待したい。

荻原 国啓(おぎわら くにひろ)プロフィール
過去コラム一覧

ピースマインド・イープ株式会社代表取締役社長

慶應義塾大学経済学部卒。在学中より人事コンサルティング会社新規事業開発や、新卒人材紹介事業等、人事マネジメント分野に従事後、(株)ピースマインド代表取締役社長(1998年創業~2011年3月)を経て現職。

日本国内最大規模のEAP(従業員支援プログラム)提供企業としてEAPやメンタルヘルス支援など、心理学・行動科学の専門性を活かした人と組織に関わる支援とコンサルティングを550以上の組織に展開。精神保健福祉士・産業カウンセラー・心理相談員。日本の起業家を世界に輩出する唯一の世界的起業家表彰制度EOYjapan2008セミファイナリスト。日本の次世代若手ベンチャー起業家を称える表彰制度DREAM GATE AWARD2008受賞。『クリックからはじめる自殺予防支援』代表世話人。

専門分野は人事・組織マネジメント、人材開発、EAP(従業員支援プログラム)、ストレスマネジメント、メンタルヘルス、震災ケア、レジリエンス、クライシスケア、ソーシャルビジネス等。

掲載日:2014年3月31日

 
 
    

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