株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

セブン-イレブン好業績の秘密は地方戦略にあり

4月からの消費税の引き上げで消費の落ち込みが懸念され、小売業はその影響を大きく受けるとみられています。ところが意外なことに(?)、小売業の上場企業51社の2015年2月期の経常利益(小売業の多くは2月期決算)は8%の増益見通しとなっており、7割の小売業が増収増益を見込んでいます(日本経済新聞社集計)。

小売業の中でもコンビニ各社の好業績が目立っており、セブン-イレブンを擁するセブン&アイ・ホールディングス、ローソン、ファミリーマートの大手3社はそろって2期連続で最高益を更新する見通しです。

その中でも先頭を走るのがセブン-イレブンです。この背景には、同社の少子高齢化・人口減少への対応と地方戦略があります。コンビニといえばかつては若者の買い物客が中心で、店舗の立地も若者が多い大都市圏が中心でした。しかし同社の調査によると、1994年度には30歳未満の来店客が約60%を占めていたのに対し、2011年度には33%に減少し、逆に40歳以上の割合が48%と、半分近くに達しています。

これに対応して、同社は惣菜の販売に力を入れ、量を少なくしたりカロリーを抑えるなど、高齢者が買いやすい工夫をしています。また高齢者世帯を意識して、弁当など500円以上の商品を無料で宅配するサービスを始めており、急速に売り上げを伸ばしています。

コンビニ各社が従来から行っている公共料金の支払いや宅配受付などのサービスも、今や高齢者にとっても便利なサービスとなっています。つまり少子高齢化が進行している地方圏で、コンビニへのニーズがより高まっているのです。セブン-イレブンはそれをいち早く取り込んだことが、好業績の一因となっていると言えます。

それを象徴する出来事の一つが、四国進出です。同社は昨年まで四国に店舗がありませんでした。四国は国内で最も高齢化が進んでいる地域の一つであるため、かつては同社にとって新規出店の優先順位が低かったと思われますが、今や進出の必要性が高まったわけです。昨年3月に高松、徳島などで14店を一斉にオープンさせましたが、その後のわずか1年で四国の店舗数は香川、徳島、愛媛の3県で152店(2014年3月末現在)まで増やしています。

同社の地方出店の基本戦略はドミナント方式(高密度多店舗出店)です。これは、一定の地域内に集中して多店舗を出店させるというもので、物流効率を向上させてコストを抑えながら鮮度のよい商品供給を行うというねらいです。そして同社向けの商品だけを専用で製造する企業・工場を地元で確保して、商品の規格や品質、納期など同社の注文通りに製造する体制を作っています。

これが同社の好収益の源泉の一つなのですが、この高密度多店舗出店によって、地域の一定の範囲でどこにでも店舗がある状態をつくり、地元の消費者にとって便利な存在になるというねらいもあります。これもまた、高齢化の進む地域にとってはニーズに合っているというわけです。

セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長は「課題こそニーズだ」と指摘しています。少子高齢化に"対応しなければならない"というのは課題です。しかし少子高齢化によって、新しい商品やサービス、地域などで新しいニーズが生まれるということなのです。課題を「対応しなければならない」と受け身的にとらえるのではなく、逆に課題にこそニーズがあり、それをビジネスチャンスにしていくことが必要だというのです。

 同社が四国進出を果たしたことによって、同社の空白県は、高知、沖縄、鳥取、青森の4県だけとなりました。いずれも高齢化率の高い地域です。おそらく今後も地方戦略を加速し、"全都道府県制覇"を遠からず実現させるとみられます。

そしてこれは他のコンビニ各社も同じです。各社の競争はますます激化の様相を呈していますが、高齢化に対応する地方戦略がコンビニ業界の勝敗を分ける一つのキーワードになりそうです。

岡田 晃(おかだ あきら)プロフィール
過去コラム一覧

1971年日本経済新聞に入社。松山支局、東京地方部、産業部などを経て、編集委員。

1991年にテレビ東京に異動、経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など多くの経済番組のキャスター、コメンテーター、プロデューサーを担当した。

2006年にテレビ東京を退職。大阪経済大学客員教授(大学院経済学研究科および経済学部)に就任し、現在に至る。

現在、東京MXテレビ「東京マーケットワイド」(インターネットテレビ「ストックボイスTV」でも視聴可能)に毎週1回レギュラー出演中。

新著『やさしい「経済ニュース」の読み方』(三笠書房)
公式ウェブサイト http://okada-akira.jp/

 

掲載日:2014年4月23日

 
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »