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イエレン時代の日米の金融環境を読む

大方の市場参加者が嫌う対立候補だったサマーズ氏が指名されなかったことへの安堵も手伝って、まずまず好感を持たれてFRB(米連邦準備制度理事会)議長に就任した、ジャネット・イエレン氏のFRB運営は、「思ったよりもハト派ではない」やや意外な印象を与えている。

それにしても、イエレン新議長の選任からスタートの環境整備に対して、前任者のバーナンキ議長は、随分気を遣ったのではないか。後任の落とし所をイエレン氏に誘導すると共に、市場にショックを与えてFRB議長の権威が失墜しか無いリスクのある金融緩和規模の縮小(いわゆる「テーパリング」)路線をバーナンキ議長の時代に開始して、バトンを渡した。

少なからぬ市場参加者は、イエレン氏は雇用を重視するので、バーナンキ路線よりもテーパリングのスピードを落とすのではないかと期待していたが、彼女は就任以来、既存の予定通りにテキパキとテーパリングを進めており、さらに、テーパリング終了後、半年くらいで金利を上げ始めるかも知れない、と発言し、市場に驚きを与えた。

イエレン氏は、「タカ派」というほどのことはないが、同じ肉食鳥の、フクロウくらいには、攻撃的なセントラルバンカーなのかも知れない。筆者は、彼女の丸い顔が、ハトよりもフクロウに見えて来た。

FRBが責任を負っているのは、物価と雇用の二つであり、雇用が完全雇用に近づくと物価は上昇するので、雇用の改善と物価上昇率が低すぎないことの二つを前提に、異例の量的緩和を縮小し、更に金利の調整を含めた通常の金融政策に移行することに不思議はない。

バーナンキ氏は、先例として2000年代のゼロ金利政策下の日本の金融政策を参考にしていたものと思われるが、もちろん、量的にも質的にも、彼の金融緩和はその先を行くインパクトのあるものになった。テーパリングから通常の金融政策までの移行を見極めないと満点は出せないのかも知れないが、バーナンキ氏の金融緩和政策は成功だったと見ていいだろう。

一方、日本の金融政策は、陸上競技でいうなら「一周回遅れ」のような感じで、バーナンキ路線を追った。

ここまでの所、大規模なバランスシートの拡大を行っても直ぐにはインフレにならないことや、長期債を買い入れると、当初は長期金利が上昇するものの、これが徐々に落ち着いて低下することなど、米国の金融政策の先例は、日本の金融環境を理解する上で大いに参考となって来た。量的緩和の「出口」に関してもイエレンFRBの今後は参考になるところだろうから、注目したい。

日本の場合、順調に推移すると、来年の半ば以降に消費者物価上昇率である「2%」が達成された後に、バーナンキ&イエレン式に、先ず長期債の買い入れを減らし、次にベースマネーを回収し、最終的には政策金利調節を伴う通常の金融政策への復帰を目指すことになるだろう。福井俊彦元日銀総裁時代の経験を参考にすると、ベースマネーの縮小は案外スピードが速いかも知れないが、どんなに早くても、金融緩和政策が終点に辿り着くのは再来年くらいのことだろう。

但し、今後二段階の消費増税を控えているので、景気を改善して物価を上げながら、そこまで辿り着くことが出来るかが、先ずは問題だ。仮に辿り着くとした場合には、その前段階で起こる長期金利の上昇にどう対処するかが、投資家にとっても、金融機関の経営者にとっても、大きな課題になるはずだ。

一方、イエレン氏が「フクロウ派」でいられるのは、米国の経済がそれだけ好調だからだろう。当面の課題は、米国経済と米国以外の国の経済と両方に大きな影響を与えているFRBの舵取りを、どのようなバランスで行うかだ。今のところイエレン氏は「米国優先が正しい」と決めているように見えるが、新興国への影響については未知の要素がある。

尚、米国にあっても、日本にあっても、全てが上手く行って金融政策が正常化した場合、金融引き締めから金利が上昇する局面がやって来る。経験則的には、利上げ三、四度目くらいが危ないポイントであり、「引き締め即暴落」ではないが、金融引き締めに勝ち続けた相場はない。今から心配する必要はないが、これは、忘れていてはいけないことだ。

山崎 元(やまさき はじめ)プロフィール
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楽天証券経済研究所客員研究員

獨協大学 経済学部特任教授
株式会社マイベンチマーク代表取締役

1981年東京大学卒業後、三菱商事、野村投信を筆頭に、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一証券、明治生命、UFJ総研など、計12回の転職を経て現職に至る。

ファンドマネジャー、コンサルタント等の経験を踏まえ、資産運用分野が専門。
雑誌やウェブサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。

掲載日:2014年4月3日

 
    

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