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不透明な外部環境と市場への影響

年度も改まり、新年度の相場に関心が集まる。しかし、年明け後3カ月間のマーケットがいい環境であったとは言い難い。北米の寒波・大雪による米国景気へのマイナスの影響、アルゼンチンペソの急落をきっかけとした新興国からの資金流出の再燃、そしてウクライナ問題に中国初の社債デフォルトと、多くの市場関係者が想定していなかったような材料が、市場を揺さぶり続けている。このなかでも、とくにウクライナ情勢と中国動向は、展開次第では大きな影響を企業業績、そして株式市場に及ぼしかねない。

ウクライナを巡る欧米諸国とロシアとの対立は、本格的な軍事衝突に至らなければ大きな影響はないとみられるものの、ウクライナがクリミア半島の独立を正式に承認するはずもなく、一触即発のにらみ合いは暫く続きそうだ。偶発的なきっかけでも軍事衝突といった事態となれば、為替市場ではリスク回避の円高進展が見込まれ、輸出企業の業績に影響を及ぼす。無論、世界経済にもマイナス要因となることで、株などのリスク性資産にはマイナス材料だ。

中国の動向も気がかりだ。これまで中国では、銀行の不良債権や償還が不可能となった社債や理財商品などについて、政府(地方政府を含む)が実質的に肩代わりするような形で、負のスパイラルが強まることを抑えてきた。しかし、一部企業が発行する社債のデフォルト(債務不履行)をこの3月に回避しなかったことで、当局の姿勢に変化が生じているのではないかという懸念が高まっている。社債や理財商品の償還が行われず、デフォルトに陥れば、当然のことながら投資家に損失が及ぶ。これは市場センチメントの悪化要因になるだけでなく、中国経済にも悪影響を及ぼすリスクが高くなる。ここのところ停滞気味である中国経済だが、2014年度は底堅く推移すると見込まれていただけに、予想以上の減速となれば中国経済と関係の深い日本企業の業績見通しにも影響を及ぼす。

ただし、ウクライナ情勢も中国動向も展開が全く読めないところが泣き所だ。ウクライナ情勢でいえば、欧米もロシアも「コト」を大きくしたくはないだろう。中国についても、治安問題に悩まされている中で国内経済を悪化させることのリスクを勘案すれば、デフォルトを頻発させるとは考えにくい。したがって、あくまでも事態がこれ以上悪化しないのが「メイン」シナリオで、悪化するのが「リスク」シナリオだ。

ところで、これら海外の動向は、増税後の日本の個人消費をも大きく左右しうる点には要注意だ。4月から消費税率が3%引き上げられ、しばらくは増税前の駆け込み需要の反動によって個人消費の低迷が続こう。もっとも、この春闘では消費税率引き上げに伴う負担増を相当程度カバーするだけの賃上げが行われ、勤労者世帯では税負担の増加は限定的なものにとどまる。これにより、消費水準の落ち込みは駆け込みの反動減にとどまり、景気は基本的に拡大基調を維持し、日本経済全体の需給ギャップ(GDPギャップ)の改善によるデフレ圧力の緩和が期待されている。

しかし、実際に財布の紐を左右するのは消費者のセンチメントであり、これが悪化して財布の紐が締まれば消費の低迷が長期化するリスクは否定できない。そして、その消費者センチメントを左右する重要な要素の一つが株価など資産価格の動向だ。海外情勢の悪化によって株価が大きく下落するようなことがあれば、消費者のセンチメントは悪化し、増税で支出(負担)自体は増えていることも相俟って、消費の低迷が予想外に長期化するリスクも高まる。消費増税後も景気が拡大基調を維持するのと、デフレ入りの直接の引き金を引く格好となった97年の増税時のように低迷が長期化するのとでは大きな違いで、アベノミクスそのものの崩壊にも繋がりかねず、デフレ脱却期待も後退しかねない。

このように、事態が悪化しない「メイン」のシナリオでは強気で楽観的な経済・市場見通しが成立するが、外部の展開が悪い方向に動く「リスク」のシナリオでは、アベノミクス自体が一からやり直しという事態に追い込まれ、どちらに転ぶか分からない足元のような状況では、市場の動きも神経質なものとなろう。もっとも、「リスク」の確率が低下すれば、市場の動きは一気に活発化することも期待できるという側面もあるが。

嶌峰 義清(しまみね よしきよ)プロフィール
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株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

1990年青山学院大学経済学部卒。同年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所を経て、1998年第一生命経済研究所入社。2011年より現職。日本経済、米国経済など各国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。


掲載日:2014年4月4日

 
    

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