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70代投資家

日本証券業協会が高齢者の投資勧誘に関するガイドラインを作り、3月から全金融機関で施行に移されています。75歳以上の投資家に「勧誘留意商品」を勧誘する際には、役席者による事前承認が必要になり、その上、80歳以上の投資家の注文執行は、受注日の翌日にすると決められました。

そこで実際の高齢投資家ってどんな人たちなのか、アンケート結果から探ってみたいと思います。2013年9月にフィデリティ退職・投資教育研究所では、3,297人から回答をいただいた投資家アンケートを実施しました。そのなかの545人が70代の投資家で、そのデータを抽出し、全体の傾向と比較することで、ちょっと気になることがわかりました。

平均2,000万円以上の資産を持つ70代投資家

アンケートでは、我々が想像している通りの「退職後に年金生活を続けながらも保有している資産で投資を継続している」という70代の投資家の姿が浮かび上がりました。男性70代の平均年収は399万円で、女性70代は238万円ですが、資産は70代男性で2,250万円、70代女性で2,837万円といずれも2,000万円を大きく上回っています。

アンケート実施時点で「投資で儲かっていたかどうか」を聞いたところ、それまでの株価上昇や円安があったにもかかわらず、過半数が「評価損を抱えている」(男性70代で57.4%、女性70代で55.4%)とのこと。高齢者ほど投資経験は長く、その分、バブル崩壊の過程も経験しているようで、投資成果はそれほど良くなかったようです。

ただ、アンケート全般からいえば、70代投資家は「年齢を感じさせない投資家」と呼んでもいいくらいに積極的に投資をしている姿が窺われます。もちろん、このアンケートがインターネットで実施されていることが影響している可能性は否定できませんが、何も70代だからということで投資をあきらめる必要はないと思っています。

投資を副次的な効用で考える男性70代

とはいえ、少し深読みしておかなければならないところがあったのも事実です。平均的に言えることと、他の年代と比べて相対的に多くなっている特徴は読み分ける必要があると思います。そこで敢えて70代の投資家の投資に関する特徴を挙げてみることにます。

投資の目的に気になる違いが出ています。70代になっても老後の資産形成という目的が一番大きな比率を占めているのには少々驚きますが、70代の男性では「投資を通じて世間や経済を理解する」という目的が相対的に大きくなっています。回答者の33.1%が選択しており、全体の平均よりも10ポイントほど高くなっています。そうした考えを否定するつもりはありませんが、「経済を理解するための授業料だから」といって、損をしてもあきらめる理屈にはして欲しくないですね。

70代女性投資家は他人に勧められるままに

女性70代の投資家の特徴はさらに気になるものです。投資目的の第一は47.8%が選んだ「老後のための資産形成」、その次は35.5%が選んだ「年金以外の生活費が必要になっているため」で、この2つが女性70代では中心になっています。

しかし、70代の女性で特に比率が高かったのが、「第3者に勧められるままに投資を行っている」と回答した人の比率です。投資家3,297名の全体では5.9%だったのですが、70代女性のなかでは12.4%と2倍以上に高くなっています。他人に勧められて投資をしてうまくいけばいいのですが、「他人に勧められて損をした」という経験になってしまうのではないでしょうか。

高齢女性は毎月分配型投信がお好き

保有している投資商品における70代女性の特徴は、やはり毎月分配型の投資信託の保有率の高さです。43.5%が毎月分配型投資信託を保有しており、平均よりも13ポイントも高くなっています。そのほか外国債券も平均よりも9ポイントほど高く、20.4%となっています。また、投資に対する考え方でも、70代女性は「配当、分配金、株主優待」を求める姿勢が、相対的に強く結果に出ています。このアンケート結果の通り、70代女性の投資家が、他人に勧められるままに、こうした投資商品へ資金をつぎ込んでいるのであれば、気を付けなければなりません。

最近の毎月分配型投信は海外の金融資産への投資を通じて高めの収益を狙っているものが多く、外国債券の保有と合わせて総じて為替リスクを無意識のうちに多く取っているのではないかと心配にもなります。この点も振り返ってみる必要があります。

野尻 哲史(のじり さとし)プロフィール
過去コラム一覧


フィデリティ投信 フィデリティ退職・投資教育研究所所長

一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て、2006年からフィデリティ投信株式会社 フィデリティ退職・投資教育研究所所長。大規模なアンケート調査をもとに投資家への提言をするなど、投資教育に従事。

退職金は何もしないと消えていく」(2008年) 、「老後難民 50代夫婦の生き残り策」(2010年)、「40代のサイフ」(宝島社、2012年)、「50歳から始めるお金の話」(2013年2月、小学館文庫)など著書も多数。

現在、日本アナリスト協会検定会員、日本FP学会、日本証券経済学会、行動経済学会などの会員。

 

掲載日:2014年4月10日

 
    

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