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多様性を打ち出せる社会への変革に女性パワーは不可欠

ジェンダー・バイアス

「私作る人、僕食べる人」というインスタントラーメンのCMが放映されたのは1975年。自宅を訪ねてきた男性に女性がラーメンを作ってあげると設定だが、食品会社に対し女性団体から「男女の性別役割分業」を定着させるとの抗議があり、CM開始から2カ月後に中止された。1960年代、アメリカのウーマン・リブ(女性解放運動)が全世界的に広がりを見せ、当時、日本でも「男は仕事、女は家庭」という意識に対する抵抗感を持つ女性たちが声を上げたはじめた。1995年、女性の、「健康」「教育」「人権」をテーマに開催された北京女性会議以降、「ジェンダー」という言葉が日本でもかなり使われるようになった。生まれつき決定されている生物としての「性別」とは異なり、後天的に社会や文化により生み出される性差を「ジェンダー」と呼ぶ。さらに社会的・文化的な性的偏見を「ジェンダー・バイアス」と称している。このCM中止から40年、果たして私たちの社会におけるジェンダー・バイアスは減少したのだろうか。

報道現場やCM製作者の無意識の罪

STAP細胞で話題になった小保方晴子さん、一時は「リケジョ(理系の女子)の星」と持てはやされ、現在は「落ちた犬を叩く」が如く非難めいた報道が集中している。年齢的にも若い研究者であり、彼女の説明責任と研究の再スタートを期待したい。この小保方さんの取り上げられ方が「あまりにもひどい」という印象を持ったのは私だけではない。「研究におばあちゃんの割烹着を着用」、「つけている指輪のブランドは」など、研究の本質とは全く関係ない情報が垂れ流された。もしこれが男性の研究者であったなら、こうした報道がなされるだろうか。また、ある消臭剤のCMでは玄関で家族を迎える主婦が、夫と部活動を終えた息子を「何か、臭う」と迎え、スーツやソファーに除菌・消臭効果のあるスプレーを振りかけるシーンがある。つねに男性は外から汚れて帰宅し、女性はそれを待ち受け綺麗にするといったステレオタイプのストーリーで、心理的に男女の役割分業がメディアを通して刷り込まれていく。CM決定の会議で違和感を持たれなかったのが不思議である。

レッテルや「タイプ(型)」が大好きな社会

最近流行の「草食男子、肉食女子」なども同様である。一般的に草食男子は「心が優しく、恋愛にガツガツせず、男らしさに縛られない」、また肉食女子は「受け身ではなく、恋愛、セックスに積極的なタイプ」と理解されている。一見、新種の生物に見えるが、実は従来の「男らしさ」「女らしさ」の裏返しで、多様な個性を持つ人間という生き物を「図鑑」のように分類し、ひとつの型に当てはめているように見える。型にはめ、一定の枠に収まることで安心感があるのだろうか。その中にこうしたステレオタイプやレッテルに息苦しさを感じ、生きにくさをどう排除するか、さらに多様性を認めることが成熟化社会への課題ではないだろうか。

意思決定のポジションに多様な女性が増えることが大事

1999年に「男女共同参画社会基本法が制定」された。これには「男女が個人として尊厳が重んじられ性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が対等に政治や経済など社会のあらゆる分野における活動に参画する機会を確保する」ことなどが盛り込まれている。政府・自治体も、社会制度又は慣行における配慮や、政策立案への共同参画をめざし、審議会等委員にも女性を登用してきた。政府が「2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度に」という目標を掲げたのは2003年であるが、11年経た現在でも目標にはほど遠く、日本における女性管理職の登用は進んでいない。安倍総理も「全上場企業において、まずは女性役員を1人は登用して」と掛け声をかけている。しかし、『男女共同参画白書』[内閣府2013年版]によると、日本の女性管理職の比率は11.1%で、米国43%、フランス38.7%、ノルウェーの34.4%の後塵を拝している。

先に述べたような社会のジェンダーバイアスを排し、個人の多様な生き方を認めていくには、単に一定割合女性が登用されるだけでなく、男性に比べて柔軟な働き方を志向する女性が発言し、考え方や制度を変えるために行動することが重要である。今年、新入社員となった女性がひとりでも多く組織の意思決定のポジションというゴールをめざして走り続けてくれることを願いたい。

白石 真澄(しらいし ますみ)プロフィール
過去コラム一覧


関西大学教授

1987年 関西大学大学院修士課程 工学研究科 建築計画学専攻 修了
(株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所 主任研究員を経て、2002年4月より東洋大学経済学部 社会経済システム学科教授
専門テーマは「バリアフリー」、「少子・高齢化と地域システム」


掲載日:2014年4月7日

 
    

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