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「100マイナス年齢方式」アセット・アロケーション

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米国発と推測しているが、古くから伝わる個人のアセット・アロケーションの決め方として、「100から年齢を引き算したパーセンテージに株式比率を決める」方法がある。本人が30歳なら、金融資産の70%を株式で持ち、60歳なら40%を株式にする。

「この方法は適切であるか否か?適否の理由と共に答えよ」と大学生向けの試験問題に出してみたい。あるいは、FP(ファイナンシャル・プランナー)に訊いてみたい。

問題の前半に対する模範解答を考えるなら、「大まかな方向性として一理あるが、個々人の家計の状態には大きな差があるので、この方法を個々のケースに当てはめるのは不適切だ」というものだろう。

年齢が同じで、さらに運用可能な資金額まで同じであっても、勤め先も違えば、健康状態、家族構成も異なる個人どうしであれば、リスクを取ることが出来る金額は異なっている公算が大きい。まして、運用資金額がちがう個人の資産配分を年齢だけで決めるのは乱暴だ。

筆者は、個人のアセット・アロケーション方法として、「100マイナス年齢方式」をまともに採り上げている本及び著者を信用しないことにしている。マネー本やFPを選ぶ際の「足切り」に使えるポイントの一つだ。

それでは、「大まかな方向性として一理ある」と思うのは何故か。

ここは出題としては引っ掛けどころで、学生向けの試験なら点差が付くところだ。

「年齢が若いと運用期間が長くなり、運用期間が長いとリスクが縮小するから」と答える人がいそうだが、これは間違いなのだ。

運用期間が長期化すると、運用資産額が取り得る上下の値は拡大する。リスクは小さくならず、拡大している(長期間のリスクを「年率」の標準偏差で見るのは間違いだ)。一方、期待リターンも拡大するから、運用期間の長短は、リスクの適正水準に対して大まかには中立だ。

では、年齢が若い人の方が大きな割合でリスク資産に投資していい理由は何だろうか。二つの要因が作用する。

一つは、年齢の若い人が、傾向としてより大きな「人的資本」を持っていることだ。人的資本とは、個人の将来の収入をリスクを考慮した現在価値に割り引いて合計した値で、個人の株価のような概念だ。若い人は、これから稼ぐことができる期間が長いので、大きな人的資本を持っている。金融資産の運用で同じだけの損失を吸収するとしても、大きな人的資本を持っている人の方が余裕がある。

他方、どんなに収入の大きな人でも、年齢が上昇すると人的資本は縮小に転じるし、死ぬ前にはゼロ(あるいは生命保険や遺族年金の現在価値)になる。

加えて、傾向として、若い人の方が高齢者よりも、金融資産の保有額が小さい。つまり、若い人の場合、傾向として、大きな人的資本と小さな金融資産を持っており、小さな金融資産の中で、高い比率でリスク資産に投資しても、そのリスクが与える総合的なインパクトが小さい。一方、高齢者は、傾向として大きな額の金融資産を持っており、余裕として機能する人的資本は小さいので、金融資産の大きな割合をリスク資産の投じた場合の総合的影響が大きい。

何れにしても「傾向として」という前提条件付きの話だが、金融資産の中でリスク資産にいくら投資するのが適切かについて、若い人は比率を大きく、高齢者は比率を小さく、という考え方が正当化できる。

但し、お金持ちの高齢者に言いたい。株式でも、投資信託でも、お金の必要があったり、リスクを感じたりする場合、いつでも売って短期間で換金出来る。借金さえせずに運用しているなら、大きな割合でリスク資産に投資しても、現実的な問題は少ないはずだ。「ポートフォリオまで老け込ませる必要はないよ!」と申し上げる。まあ、お金持ちなのだから、好きにすればいいが。

山崎 元(やまさき はじめ)プロフィール
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楽天証券経済研究所客員研究員

獨協大学 経済学部特任教授
株式会社マイベンチマーク代表取締役

1981年東京大学卒業後、三菱商事、野村投信を筆頭に、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一証券、明治生命、UFJ総研など、計12回の転職を経て現職に至る。

ファンドマネジャー、コンサルタント等の経験を踏まえ、資産運用分野が専門。
雑誌やウェブサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。

掲載日:2014年5月8日

 
 
    

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