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予想以上に順調な物価上昇

消費税率が引き上げられたことで、多くの価格が3%上昇した。消費者物価統計によれば、4月の東京都区部の消費者物価上昇率は前月対比+2.0%上昇した。消費増税による押し上げ分が1.7%程度であるため(物価統計が扱う品目のうち、消費増税の対象になる部分がすべて3%価格を引き上げた場合)、実質的な物価上昇率は+0.3%となる。

実際には、すべての消費税対象店舗で販売価格に増税分が転嫁されたわけではないだろう。競争が激しい分野や競争力に欠ける店舗では、販売価格を引き上げなかったところもあると言われている。つまり、実際には消費増税による価格押し上げ効果は1.7%も無かったはずで、そうであれば実質的な物価上昇率は+0.3%以上であった可能性が大きい。

筆者も感じたが、飲食店などを中心に4月1日から3%以上価格が引き上げられたものも目立つ。いわゆる"便乗値上げ"と言うよりは、これまでコストの上昇分の価格転嫁を抑えてきたものが、このタイミングで上乗せされたことによる影響が大きいと考えられる。

それにしても、増税前には「価格転嫁は難しく、企業が被るしか無い」といった報道も目立っていたように覚えているが、結果は随分と異なった。背景には、価格転嫁を促す"価格Gメン"の活躍があったかもしれないが、実際には企業や店舗がかなり強気に行動したことが大きいだろう。

そのような強気な行動をもたらしたのは、この1年間の実績に他ならない。消費者物価上昇率は、昨年から上昇基調に転じている。主因は円安による各種資源価格の上昇に加え、原発停止もあった電気代の上昇である。しかし、エネルギーや生鮮食料品を除いたベースの物価も前年対比で+0.7%上昇(3月分)と、デフレ入り後もっとも高い上昇率を記録している。これは、電気代も含めたコストの上昇を、企業が価格転嫁してきたからに他ならない。当たり前のことのように感じられるかもしれないが、デフレに陥って以降はこれさえもできなかったのである。

"価格転嫁できた"ことはデフレ圧力が相当程度緩和していることを示唆するが、それに加えて少なくとも過去1年間は価格転嫁しても消費は崩れなかった。この経験が、今回の企業の強気な価格設定に表れていると言えよう。

さて、価格転嫁ができたということは、企業の収益性にとってはプラス要因である。あとは、増税前の駆け込み需要からの消費の反動減が落ち着いた後、消費が速やかに回復するかどうかで、今期の企業業績が決まってくる。メディア報道などによれば、増税後のスーパーの売り上げは予想ほどには落ち込んでおらず、飲食や娯楽などのサービス業でも思いのほか客足は順調とのことである。このGWでの行楽施設などの売り上げ状況が順調であれば、消費の腰折れリスクは予想以上に小さいと言うこともできよう。

であれば、企業業績の拡大余地も意外に大きいということになる。今期の業績を勘案すれば日本株は割安な水準とされているが、その割安感はもっと大きいと言うこともできよう。


嶌峰 義清(しまみね よしきよ)プロフィール
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株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

1990年青山学院大学経済学部卒。同年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所を経て、1998年第一生命経済研究所入社。2011年より現職。日本経済、米国経済など各国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。


掲載日:2014年5月9日

 
    

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