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株価が上がる条件

前回も書いたのですが、日本株相場は今年ここまでのところは(買い方から見れば)期待外れですね。

現時点のPER、PBRなどの数値を見ますと、主要な株価指数でだいたいPER15倍くらい、PBRは1.4倍ほどです。したがいましてROEはおおむね10%弱、といったところです。(PBR=ROE×PER、と計算して。)

高くもなく安くもない、といった水準でしょう。(金利水準からしますと、PERはもう少し高くなっても良いのかもしれない、そしてそれはいっそうの金融緩和で達成できることかもしれない、という「感じ」は持ちますが。)

一昨年秋からのアベノミクス(期待)相場で株価水準が上がったことは確かなので、さてその間の株価上昇は、ROEが上がったことで起きたのか?あるいはPERが上がったことで起きたのか?と考えてみますと、上昇の初期の段階では「アベノミクスへの期待」からPERが上がって株価が上昇したが、その後(企業収益の回復で)ROEが上がり、その反面PERが下がってしまって、結局今の株価水準に落ち着いた、といったところです。

PERは端的に「将来のROE上昇への期待」で上がる、と見ることもできますので、アベノミクス相場の初期にPERが上がったのは分かりやすい話です。少し前までは日本企業のROE(収益力)向上に対する大きな期待があった、ということでしょう。

今時点で見ますと、確かにROEは上がったものの、今後さらに上がるかどうか分からないので、PERの方は上がらず、むしろ低下気味、となっていると見ることができます。

今後の相場を考えてみますと、短期的な変動は置くとしまして、本質的には日本企業のROE水準が今より上がらないと(需給で言えば、市場において主導的な役割を果たす参加者がそう思って株を買って来ないと)株価上昇はなかなか難しい、という結論になると考えて良さそうです。

日本企業のROEは今後もっと上がることができるのかどうか?多分、いずれはもう少し上がるのでしょう、くらいのことは言えるのでしょうが、「確かに」上がるかどうか?はなかなか想定することが難しいように思います。

30年くらい前までの日本であれば、経済全体に大きな成長余地がありましたから、経済の動きには波があるにせよやがては経済が成長してその恩恵を受けて企業の収益力は向上する、と想定することもできたのでしょうが、デフレ経済から脱しつつあるとはいえ、経済に成長余力が乏しい今の時代であってみればことはそう簡単ではありません。

つまり、国の経済成長→経済規模の拡大→企業の売上増加→利益増→ROE向上→株価上昇、というシナリオが描きにくい時代に、さてどうやって企業がROEを向上させ得るか?という難しさを考えざるを得ないのです。

だからこそ「成長戦略だ」と言うのかもしれませんが、多少の成長分野を見つけたところで日本経済の規模を飛躍的に大きくすることはできませんし、グローバル市場で圧倒的な競争力を維持する、なども簡単ではありません。(経済規模を円ベースで名目的に膨らます=インフレにする、ことは可能でしょうがね。)

株主の立場からすれば、いろいろ難しくても経営者の力量でROEを上げてくれと要求することになるわけですが、大問題はそもそもわが国の経営者たちにROEを十分高い水準に引き上げることが経営トップの重要な仕事だ、という意識がないかもしれない、ということにありそうに思えるのです。

ROEを上げて株主への配当金を増やしたところで、その多くは外国人株主と日本の高齢者の懐に入る(年金の給付なども通じて)だけで、本当にわが国の国民全体のためになるとは思えない、と(信念を持って)考えているとしか思えない経営者が多いように見えるのです。

ここのところがまさに難しいところで、ROEの水準を引き上げるということは(もちろん株主は期待するのですが)日本国のためになることかどうか分からないぞ、と言われると明確に反論できないのです。(日本企業は「日本国のため」を最重要目標として活動しなければならない、という訳でもないにも関わらず、です。)

個人的には、アベノミクスの成長戦略具体化→経済活性化→企業の収益力向上→ROE上昇→株価大幅上昇、というシナリオは相当に現実味が薄い、という感覚を持ちます。

相場は循環しますから、どこかで大きく下げるような局面が到来すれば、その後に大きく反発する局面を期待することができるでしょうが、アベノミクス上昇相場が順調に長期間にわたって継続する、と楽観することはなかなかできないでしょうね。(そうなって欲しいのはやまやまですが。)

多分、日本を代表する大企業に対しては、ROE向上のあくなき追求といったことを求めるべきでないのかもしれませんね。グローバルな競争において支障を来さないようにそこそこのROE(収益力)を維持してくれればそれでいい、ということなのかもしれません。(そこそこのROE水準=10%くらい、ですかねぇ。)

日本を代表する優良大企業が(平均)REO20%に向かって力強く進む、などということを期待するより、株式市場としてはもっと多くの「ニューフェース(新規上場株)」登場を期待する方が良いのかもしれませんね。外人持ち株比率が低く、年金も保有しておらず(つまり高齢者が保有していない)といったベンチャー企業の株式がもっと多く市場にデビューすることで、個人の市場参加者の市場におけるプレゼンスを高める、といった工夫をすることの方がはるかにが効果的なのかもしれません。(そうした新興企業の中から次代の優良大企業が出て来るでしょうし。)

そうなれば、株価が上がる、ということとはちょっと違いますが、株式市場の時価総額が大きくなる(=個人の金融資産が増加する)ことを通じてわが国が豊かになる、ということも期待できますよね。(IPO市場について、まだまだ工夫の余地が多くある、と主張する人たちに私は大賛成です。)

松下 律(まつした りつ)プロフィール
過去コラム一覧

証券アナリスト、社団法人日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

1976年慶應義塾大学工学部大学院修士課程修了
大学院修了後国内証券会社入社、証券アナリスト。その後国内投信委託会社、外資系信託銀行、外資系投信投資顧問会社で長年にわたりファンドマネジャー。
2000年以降は独立証券アナリストとして活動。インターネットを通じて個人投資家向けの情報発信している。

掲載日:2014年5月7日

 
    

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