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中国の金輸入急増、もうひとつの事情

2013年の金需要が1,065トンと前年比32%も伸びインドを抜いて初めてトップに立った中国。その中国の輸入急増の背景に金を使った資金運用があったと見られる。

1月の当欄で中国では「理財商品」や「信託商品」と呼ばれる投資家から資金を集め、公共施設の建設や民間企業への融資や投資をすることで運用される商品があり、多くが高利回りをうたっているにもかかわらず、その焦げ付きが問題になっていることを取りあげた。通常の銀行を使った資金調達とは異なることから「影の銀行(シャドーバンキング)」と呼ばれるが、最近ではメディアでよく取り上げられているのでご存じの読者も多いだろう。大手の銀行や保険会社が窓口になって販売したものも多く、それらの焦げ付き(債務不履行)が増えたことで警戒感が高まり、金の購入が安心ということで2014年の中国の金需要の増加の背景のひとつと見られるとした。

国際的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が4月15日に「中国の金市場(China's gold market)」と題したレポートを公表したのだが、その中に興味深い分析があった。資金運用のための金輸入の存在が指摘されていたのだ。実は以前から関係者の間では、金を介在させた利ザヤ稼ぎが指摘されてきたが、初めてレポートの中でも取りあげられることになった。

中国の金の輸入はここに来て急増中で、2013年は前年の830トンから1,490トンにもなった。ここから輸出分を引くと1,160トンの純輸入となる。2013年の中国の金需要はWGCによると1,065トンとなっている。生産面では2007年に南アフリカを抜いて以降、トップを続けており430トン程生産している。つまり需要の規模から見て余った分がどこに行くのかということが、中国の金に関しては憶測を呼んできた。筆者は、中央銀行である中国人民銀行が密かに買い集めていると見てきた。

そしてもうひとつの行先が、今回の販売目的や(宝飾品などの)加工目的ではなく、単に利ザヤ稼ぎのために金の輸入をするというもの。その仕組みの代表的なものは次のようなものだ。

例えば中国本土にある会社が香港にある支社から金を輸入することにし、銀行に保証してもらった手形の一種の「信用状(L/C、Letter of Credit)」を送付する。受け取った香港支社は信用状を担保に銀行からドル建て融資を受ける。本社は同額の人民元に交換し預金したり、投資したりする。ここまでの金融環境では香港側で支払う金利の方が安いので利ザヤが稼げるというわけだ。輸入した金は、その間は在庫として留め置かれ中国国内で販売されることもない。金融取引として利用されたに過ぎない。

こうした取引は、銅で一般的とされるのだが、場所をとらず錆びたり変化しない金が選ばれることが増えているようなのだ。いずれにしても実態以上に中国の金輸入が水増しされている背景にこうした取引が存在しているようなのだ。その投資運用の対象として「影の銀行」関連の商品もあると見られている。関連商品といっても償還期限が2年や3年というものばかりではなく、35日や3カ月という短期のものもあり、国債だけで運用され元利が堅い商品もあることから、こうした金を使った利ザヤ稼ぎが成立することになる。

亀井 幸一郎(かめい こういちろう)プロフィール
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生活設計塾クルー取締役

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役
金融・貴金属アナリスト

中央大学法学部卒業。
山一証券に8年間勤務後、日本初のFP会社で投資顧問会社マネー・マネジメント・インスティチュート(MMI)入社。
1992年世界的な金の広報・調査機関ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。
企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。1998年独立し分析、評論活動に入る。
2002年マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。

「史観と俯瞰」をモットーに金融市場から商品市場、国際情勢まで幅広くウォッチしている。
日経CNBCテレビ「デリバティブ・ワールド」、ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」など数々のメディアでの市場分析のほか、住友金属鉱山サイトでは金市場を軸にした金融経済分析と市況解説を、投資情報誌ネット・マネーにて「亀井幸一郎の金市場の風」、日本証券新聞コラムなど定期寄稿中。

ブログ 『亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」』

 
掲載日:2014年5月16日

 
    

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