株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

人口減少に立ち向かう試される政治力

疫病、経済破綻、失政、戦争など、国家が衰退する原因はいくつもある。人口減少もそのひとつだろう。安倍政権は、50年後(2060年代)も人口1億人程度を維持することを国家目標にすることが決めた。政府が人口維持を目標とするのは初めて。つまり長年語られてきた危機がようやくここにきて認識されるようになったわけだ。ただ目標を掲げるのは簡単だが実現するのは難しい。これまでの財政再建策や温暖化ガス削減目標など見れば明らかだ。額面通り期待しない方がいいだろう。

日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減り続けている。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2048年には一億人を割り込み、2060年には8,674万人まで減少する。今のペースで行けば2080年代には5,000万人を切り、その百年後には1千万人以下に落ち込む。そして3200年頃にはついに日本人は世界から消える計算になる。それだけではない。全体の人口が減るだけでなく、少子高齢化によって65歳以上が人口に占める割合が2060年には40%まで上昇する。その一方で働き手である生産年齢人口(15歳~64歳)の人口は今と比べて半減して四千四百万人程度になってしまう。いくらアベノミクスというお題目を唱えても、そんな国家の衰退を止めるのは困難だ。

ではどうすればいいか。不況とはいえ圧倒的多数の人たちが安定した生活を送れるようになった今、戦時中のように「産めよ増やせよ」と旗を振っても誰も見向きしない。出生率が日本よりも低い(1.20)シンガポールでは2005年には少子化対策として「性の博覧会・SEXPO」まで開催された。それでも目に見える結果は出ていない。

残る方法は、以前このコラムでも触れたように、移民政策しかない。ところが積極的な移民政策は労働人口の増加に繋がり経済成長を加速させると頭では分かっていても、移民受け入れには抵抗が強いのが日本人の国民性。一筋縄ではいくまい。移民を多く受け入れてきた欧米諸国では自国の若者の職が移民に奪われ、失業問題が治安の悪化を引き起こしているという現実もある。移民よりも高齢者や女性の両動力を生かす工夫をすべきだという議論もある。だがその程度では問題の解決にはなるまい。日本は他の先進国に先駆けて「若者が増えない社会」に突入している。その一方で2050年には認知症患者の数が現在の230万人程度から450万人に膨れ上がると推定されている。実質GDPも現在の4割程度に落ち込むだろう。思いきった政策転換や意識改革をしなければ日本社会が機能不全をきたす日も近いのだ。

今回の安倍政権の目標の柱は(1)高齢者に手厚い予算配分を是正する、(2)子育てと就労の両立促進、(3)雇用・医療などの規制緩和、(4)外国人の積極活用、の4つだ。どれも方向性は正しいがいかにも生ぬるい。政治は決断し実行して「なんぼ」の世界だ。国民も無い物ねだりを政府にするだけでなく痛みを分かち合う覚悟が求められる。

 

蟹瀬 誠一(かにせ せいいち)プロフィール
過去コラム一覧


ジャーナリスト・キャスター、明治大学国際日本学教授

(株)アバージェンス取締役、(株)ケイ・アソシエイツ取締役副社長

掲載日:2014年5月20日

 
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »