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地方にも広がる資産デフレ脱却の動き

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みなさんは地価の動きについてどのようなイメージを持っていますか。「東京などでは上昇し始めたが、地方はまだ下落し続けている」――このような認識が一般的ではないかと思います。
確かにその通りですが、そのような見方だけをしていると地価の動向を見誤る恐れがあることを指摘したいと思います。どういうことか、説明しましょう。

国土交通省が3月に発表した2014年の公示地価は3大都市圏(東京、名古屋、大阪)で前年比0.7%の上昇となり、2008年以来6年ぶりにプラスに転換しました。しかし全国平均では0.6%下落とマイナスがまだ続いており、この数字から、上記のような認識となっているわけです。

しかし公示地価調査の結果をもう少し詳しく見ると、その底流では重要な変化が進行していることに気づきます。

3大都市圏を除く地方圏では、1.7%の下落でした。マイナスが全国平均よりさらに大きいため、見過ごされがちなのですが、この下落率は実は1998年以来、16年ぶりの小ささなのです。

公示地価の推移を振り返ると、バブル崩壊後の1992年から2006年まで下落が続いた後、2007、2008の2年間は3大都市圏では3.8%、5.3%のプラスとなり、全国平均でも0.4%、1.7%のプラスとなりました。その後、2009年から地価は再び下落に転じていたものが、今年は3大都市圏がプラスに転じたわけですが、今年の上昇率は2007、2008年の上昇率をまだ下回っています。

これに対して、地方圏は2007、2008年もプラスにはなっていませんでした。そして今年の下落率は2007、2008年の下落率より小さくなり、16年ぶりの小幅な下落率となったのです。つまり地方圏の地価の動きは意外としっかりしていると見ることができます。

この変化の背景にあるのは、アベノミクスによる景気回復と金融緩和の効果で不動産市場が活況になっていることです。東京の商業地ではオフィス需要が旺盛でオフィスの空室率が低下していることはよく報道されていますが、地方都市でもその傾向が強まっています。
 
オフィス仲介大手、三鬼商事の調査によると札幌市のビジネス地区のオフィスビル空室率は今年4月は8.36%で、2008年6月以来の低水準となりました。
2010年6月をピークに低下傾向となっていましたが、特に昨年後半から低下が顕著になっています。オフィス需要の活発化を背景に賃料も昨年12月を底に上昇し始めています。同じような傾向は福岡、広島など、他の地方中核都市でも見られます。

もう一つ、最近の特徴は不動産投資マネーが地方に向かっていることです。日本経済新聞の報道によると、REIT(不動産投資信託)が取得した不動産は、3大都市圏以外の地方物件の比率が2013年度末で34%を占めました。これは過去最高の水準です。前年度比の伸び率でも3大都市圏の12%増に対して、地方圏は28%増と大きく伸びています。

この背景は、東京都心部など大都市の地価が上昇して割高感が出てきたことのほかに、ネット通販の普及があります。ネット販売会社や物流会社は翌日配達というニーズにこたえて大量の商品を迅速に配達できる体制を作るため、地方で大規模物流施設の建設・整備を急速に進めており、それらをREITが取得するケースが増えています。REIT法人が2013年度中に取得した物件は三重県桑名市、福岡市、北海道など各地に広がっています。REITとネット通販という要素は過去の地価上昇期にはなかった現象で、今後も増えそうな見通しです。  

こうしてさまざまな動きをみると、明らかに資産デフレ脱却の動きが地方に広がりつつあると言えるでしょう。

ただこれに対して「資産デフレ脱却はまだ本物ではない」「地価が全体的に上昇に転じたと判断するのは早計」などの指摘が出ています。確かに地方ではまだまだ地価の下落が大きい地域もあり、地方の中でも二極化の現象があるのも事実です。

それでも、資産デフレ脱却に向けた動きは着実に広がるとみています。中期的にも、2020年の東京五輪開催とそれに向けた住宅建設や都市再開発、防災対策などの動きは、東京都内だけでなく、全国的にインフラ再整備に対する再認識を高め、それが資産デフレ脱却を後押しする可能性があります。

もちろんこれが一筋縄で進むわけではないでしょうし、乗り越えなければならない課題が多いのは事実です。それだけに政策が重要です。アベノミクスの本当の真価が問われるのは、むしろこれからといえるでしょう。

岡田 晃(おかだ あきら)プロフィール
過去コラム一覧

1971年日本経済新聞に入社。松山支局、東京地方部、産業部などを経て、編集委員。

1991年にテレビ東京に異動、経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など多くの経済番組のキャスター、コメンテーター、プロデューサーを担当した。

2006年にテレビ東京を退職。大阪経済大学客員教授(大学院経済学研究科および経済学部)に就任し、現在に至る。

現在、東京MXテレビ「東京マーケットワイド」(インターネットテレビ「ストックボイスTV」でも視聴可能)に毎週1回レギュラー出演中。

新著『やさしい「経済ニュース」の読み方』(三笠書房)
公式ウェブサイト http://okada-akira.jp/

 

掲載日:2014年5月28日

 
 
    

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