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「外れ馬券裁判にみる法律と通達」

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2014年5月9日、注目されている「外れ馬券裁判」が大阪高等裁判所判決が出され、これに対し5月23日、検察は最高裁へと上告しました。
高裁判決では、所得税無申告は有罪、脱税額について、検察側主張の約5億7千万円を地裁判決通り約5,200万円とし、懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡しました。
被告である元会社員は、2007年から2009年までに27億7千万円の馬券を購入し、30億1千万円の払戻金を得て、1億4千万円の利益となっていたものです。
これがそもそも所得税無申告だったことが問題だったのですが、裁判の争点は、その所得の判断にありました。

■所得区分で変わる税金計算

検察側は、馬券の払戻金は一時所得に該当し、外れ馬券分は必要経費とならず、当たり馬券収入に対する必要経費は、当たり馬券の購入金額1億8千万円だけだとして、利益を29億円と計算しました。これは現行の国税庁の取扱い通りです。
所得税法基本通達34-1では、「次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。(2)競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等」として、懸賞金や福引当選金品等、生命保険金、遺失物報労金等とともに、一時所得に分類しています。

一時所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう(所得税法34条第1項)、とされています。
そして、一時所得で収入から差し引く必要経費を、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。」としているため、今回のように、必要経費は当たり馬券の購入費だけだ、というのが国税サイドの主張になるのです。

■判決は一時所得ではなく雑所得と認定

これに対し判決では、「営利を目的として馬券を継続的、恒常的に買い続けた場合、外れ馬券の購入費も必要経費になる」と判断。被告の馬券購入について、FX(外国為替証拠金取引)や先物取引との共通点をあげて「雑所得」であり、「娯楽性はなく、資産運用の一種である」と認定したのです。
雑所得とは、一時所得を含め、各種所得のいずれにも該当しないものをいい、その計算は、その年中の総収入金額から必要経費を控除した金額とされています。
今回の事件については、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として、まさに一時所得ではないとの認定を受けたのです。

■一般の競馬払戻金は一時所得のまま

ただし、一般的な馬券購入については「楽しみ、消費の性質があり、払戻金は一時所得」としました。一般の競馬ファンが手にする払戻金に関しては、通達通り一時所得として扱い、外れ馬券は経費として認められないのです。

■担税力議論も

この事件では、1億4千万円の手取り利益に対して税額5億7千万円という、負担能力(担税力)を越えた課税であることも問題です。
過去には、個人の株式の譲渡課税において、当時は原則非課税のところ、回数多、売買株式数大の株式譲渡を「事業類似」として事業所得や雑所得とする制度がありました。
最高裁の結果如何では、そのような見直しが今後行われていくのかもしれません。
 
■通達には法律拘束力はない

同様の裁判が多数提起されている現在、検察も国税も、簡単には引き下がれないところでしょう。
日本の法律は、国会成立による法律、内閣決定で関連事項を定める施行令(政令)、主務大臣が細目を定める施行規則(省令)で構成されています。
しかし法律以外の取扱方法や解釈については、通達や情報、審理事例、Q&Aという様々な形で主務官庁が発令しますが、法律と異なり、下部機関の法律執行の拘束とはなっても、国民に対しての法的な拘束力はないのです。

■モメないと改善されない?

お役人は職務上、通達などに従わざるをえないにせよ、激変する経済や技術環境にあって、従前の取扱いでは不適切となる局面は今後も多々起きるでしょう。
裁判で国が負けて初めて制度が見直されるというシステムを、より機動的に改善する仕組みができないものでしょうか。

飯塚 美幸(いいづか みゆき)プロフィール
過去コラム一覧


税理士・中小企業診断士

静岡大学人文学部卒業
平成7年 飯塚美幸税理士事務所開業
平成25年 松木飯塚税理士法人設立、現職
事業承継協議会会員、千代田区議会政務調査諮問委員
不動産コンサルティング登録技能士試験委員

著書: 
「各年度版よくわかる税制改正と実務の徹底対策」(日本法令)、「財産を殖やす相続対策プログラム」(日本法令)、「税制改正と資産税の実務Q&A」(清文社)、「最新相続税の物納実務取扱事例Q&A」(日本法令)、「新版『資本の部』の実務」(新日本法規出版)、「小規模宅地特例-実務で迷いがちな複雑・難解事例の適用判断」(清文社)

資産税の税理士ノートhttp://expresstax.exblog.jp/


掲載日:2014年5月30日

 
 
    

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