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天安門事件の負の遺産

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来たる6月4日は天安門事件の25周年にあたる。天安門事件とは1989年に民主化を求めて北京の天安門広場に集まった学生や市民の抗議活動が武力で鎮圧された流血事件である。中国政府・共産党は天安門事件について「少数の者が政府を転覆する目的で故意に企てた反革命的な『動乱』」と定義している。しかし、学生の抗議活動は終始平和裏に行われ、政府機関への投石すら行われなかった。それよりも、政府は国を守るべき人民解放軍を投入し、非武装の学生と市民に向かって発砲させた。

政府・共産党は軍による武力鎮圧を正当化しているが、当時の責任者の誰一人も武力鎮圧の責任を取ろうとしない。今でも、誰が軍の発砲を許したのかは闇のままである。当時、強固派だった李鵬元首相はのちに「李鵬日記」を出版し、軍の発砲について自分に責任がないと弁明した。政府・共産党が正しいことをしたにもかかわらず、なぜ誰もその功績を手に入れようとしないのだろうか。

実は、共産党の歴史を振り返ると、傷だらけの歴史だったことが分かる。そのいずれの傷も共産党にとり致命傷になりうるため、中国国内ではタブーとされている。インターネットの検索エンジンを使って「6・4天安門事件」を入力して検索すると、まったく関係のない結果が表示されるか、さもなければ、「法律に違反するキーワードが含まれているため、検索結果が表示できない」とメッセージが出てくる。

歴史に直面しない者には明日はないとよくいわれる。中国共産党はその統治体制をすこしでも安定したものにするために、天安門事件のような都合の悪い歴史的事件にも直面し真摯に反省すべきである。

チャイナリスクを検証する研究者の間で、その最大のリスクは共産党への求心力が急低下していることとの指摘がコンセンサスになっている。野党が不在の中国社会では、このまま共産党が求心力の低下によって倒れた場合、中国社会は間違いなく大混乱に陥ってしまう。中国社会の混乱は中国国民にとって当然悲劇になるが、同時に、グローバル社会にも大きなインパクトを与える。

では、どのようにすれば、中国社会は安定するようになるのだろうか。

中国外交部のスポークスマンは大きな事件があるたびにいつも繰り返す言葉がある。中国政府は社会を安定させる自信と能力があるとのことである。一党支配の政治体制では、政府が社会を統制する力を持っているというのは否定できない。しかし、力で社会を統制しても、必ずしも人心を掌握できるとは限らない。天安門事件のような出来事を力で抑えても、社会は安定しない。

グローバルコミュニティは中国社会の安定と経済の発展を心から望んでいるはずである。しかし、中国社会の細部を考察すれば、さまざまな不安定要因を目にする。政府・共産党は社会の安定維持について自信を示すが、具体的な改革、たとえば、民主主義の政治改革について依然としてタブーにされている。

端的にいえば、リスクとはその社会の矛盾である。政府・共産党は社会の矛盾を認めようとせず、社会が安定しているように装う。しかし、経済のバロメーターの株式市場の動向をみれば、07年以降、低迷したままである。ここに来て経済成長率も減速し、主要都市では、不動産価格も下落している。中国経済のファンダメンタルズはそれほど悪化していないはずだが、景況感がここまで悪化したのは、投資家は自信を失った証拠といえる。

柯 隆(か りゅう)プロフィール
過去コラム一覧

富士通総研経済研究所 主席研究員

中国南京市生まれ
1988年1月来日
同年 愛知大学法経学部入学
1992年3月愛知大学法経学部卒業
1992年4月名古屋大学大学院経済学研究科入学
1994年3月名古屋大学大学院経済学研究科修士取得
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年10月 富士通総研経済研究所主任研究員
2006年7月より現職

著書
中国が普通の大国になる日」(日本実業出版社、2012年) 
チャイナクライシスへの警鐘」(日本実業出版社、2010年)
中国の不良債権問題」(日本経済新聞出版社、2007年)

「日中『歴史の変わり目』を展望する」(勁草書房、2013年、共著)
"Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia", World Scientific Publishing Company, 2012 (共著)
「中国の統治能力」(慶応義塾大学出版会、2006年、共著 ) など

掲載日:2014年6月4日

 
 
    

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