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ROEなど眼中にない!

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コーポレート・ガバナンス

昨年の9月9日付の本コラムで「コーポレート・ガバナンス」と題して日本の企業の収益力は(株主から見て)大問題で、コーポレート・ガバナンスに問題ありと言わざるを得ないと書き、その対策として「監査役とのコミュニケーションに株主がもっと注目する」ことについて「次回」書きます、としたのですが、実際には、次の回(10月8日)は「さてこれからの相場は?」の題名で、コーポレート・ガバナンスと監査役については、「監査役が取締役らに対してどういった監査を行ってくれているのか、その基本方針は何なのか?そういうことを質問する株主の姿を(多くの会社の株主総会の場で)私は見たいと思っています」程度の短い記述しかしませんでした。

コーポレート・ガバナンスに関しては「書きたいこと」が山ほどあるのですが、本当に論じるのが難しいといつも感じますね。

日本の企業経営者たちが、株主無視の「経営哲学」に染まりきっていて、コーポレート・ガバナンスの強化が株主の利益を増やすために「非常に有効な策だ」というのであれば、コーポレート・ガバナンスについて「より強化する」ということを「素直に」言えば良いのでしょうが、ことはさほど簡単ではない、という思いもするのです。

前回のコラムでも書いたのですが、日本の現状を考えれば日本を代表するような優良大企業に対してはROEの極大化を求めるべきでないのではないか、という考えに自信を持って反対する気になれないでいるのです。

市場メカニズムを活用したい、と本当に思うのか?

私は市場メカニズムの活用を前提とする「資本主義」という制度は「洗練された奴隷制度」だと思っています。(詳しくこの点について書くとなるとまた長くなりますので、今回は割愛します。)

「奴隷制度」は認められるような制度ではありませんが、「洗練された」というところがミソで、資本主義を受け入れるべきであるのは、まさにこの「洗練された」点にある、というのが私の感覚なのです。

洗練されたものとなっているのだから、(いろいろ問題はあっても)受け入れてその効用に期待しよう、という立場です。(洗練されているとはいえ、資本主義をやって行けば格差などの問題は出て来るわけですが、その点は「政府の調整能力」に任せよう、ということも同時に思います。例えば、累進課税の制度によって所得格差をある程度是正する、といった具合です。工夫の余地は十分にあって、弊害は十分取り除けるはずでしょうから。)

ひょっとすると・・・・

日本を代表する精密機械メーカーの経営トップが、社外取締役制度導入をついに受け入れたのだけれど、導入の理由がほとんど噴飯ものだった、とか、わが社の事業を理解しくれる社外取締役人材がいない、といった珍妙な発言をする経営者が多いとか、現象だけ見れば「日本はコーポレート・ガバナンス後進国」と言われても仕方がないという気になりますね。

しかしながら、実績ある優れた日本の経営トップたちが皆が皆コーポレート・ガバナンスの本質について理解していない、とはなかなか考えにくいところです。(その疑いはありますし、日本企業の経営トップが持つ独裁的な権力に口を挟まれたくない、という姿勢は問題でしょうが・・)

ひょっとすると、日本の経営トップの多く(か一部か分かりませんが)は、市場メカニズムの活用を完全には肯定しない、という考えを持っていて、「その方が日本にとって望ましいはずだ」と思っているのかもしれませんね。(これはわが国の談合体質とも通じるところがあると思いますね。)

(もう昔のことですが)三菱重工のトップが「ROEなど眼中にない、従業員を食わせるだけの仕事があれば十分」などと発言して、さすがに大批判にさらされたことがありました。 (ちなみに、三菱重工は今ではROE10%クラスの会社に変貌しています。ROEが眼中に入るようになったのかどうなのか?面白い変化ではあります。)

批判を受けてそのトップは発言を撤回したと記憶しているのですが、本当は「もっと詳しく存念を説明してほしい」と世間は言うべきだったのかもしれませんね。(冷徹な現状認識と深淵な経営哲学から出た発言だったのかもしれませんよね。)

優良大企業と新興企業

何度も書くのですが、私は諸般の事情を考慮すれば、日本の優良大企業については、そこそこのROEを目指すという戦略も容認されるべきかもしれない、という気がすることがあります。その方が全体として日本国民を豊かにするのであれば、その考えを受け入れるべきかもしれませんので。

しかし優良大企業はともかくとしまして、これも前回少し触れたのですが、ROEが高くても低くてもリスキーな新興企業に対してこそ高いROEという課題を強く要求すべきなのだろう、そういうプレッシャーを市場関係者は優先すべきであろう、という気が強くします。持続可能成長率(サステナブル・グロース・レート)はビジネスモデルを変えないとすればおおむねROEと同率で、高い成長のためには高いROEが必要だ、ということを新興企業の経営者にもっと強く認識して欲しいところですので。

少しリスクをとってもいいぞ、という資金が株式市場に向かう時に、高いROEを実現して成長するという経営スタンスを持った新興企業銘柄が株式市場に数多くあれば、株式投資の目からすればずいぶん楽しい話だろうな、とそんな風に思いますね。(そういう会社が一時的に苦戦してROEと株価が低迷する時があれば、それはまさに「買い時」ですからね。)

松下 律(まつした りつ)プロフィール
過去コラム一覧

証券アナリスト、社団法人日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

1976年慶應義塾大学工学部大学院修士課程修了
大学院修了後国内証券会社入社、証券アナリスト。その後国内投信委託会社、外資系信託銀行、外資系投信投資顧問会社で長年にわたりファンドマネジャー。
2000年以降は独立証券アナリストとして活動。インターネットを通じて個人投資家向けの情報発信している。

掲載日:2014年6月17日

 
 
    

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