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『残す言葉をさがす』

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人は、晩年、またはそれに近い歳になると人生の本質を語るのではないでしょうか。秀でた人の「最後に残す言葉」をさがしてみました。

「死もまた愉し」。良い書名ですね。著者は結城昌治、昭和2年、1927年生まれ。本書は亡くなる前年に延べ十時間にわたって語り下ろされたものと生涯を時系列におった2つの句集が収録されています。文庫版で130数ページを遺書として読むことができます。同年に生まれた作家には藤沢周平、城山三郎がいます。城山三郎は、同年生まれということで、両氏との対談を望んでいたようですが、藤沢周平との対談はできましたが、結城昌治とはできずのままだったようです。本書を読んでみると、確かに、一度はお会いしたいと思える方です。もうお会いできないですが。

私は旅行が好きなので旅行記を多く読みます。旅行記で信頼して読めるのが梅棹忠夫です。平成22年、90歳で亡くなられたのですが、著作集全23巻に納められている旅行記は、いつの時代になっても読めます。旅行記というよりも探検記が多いのですが、中高年以降の旅行の記録は著作集第20巻の世界体験に書き起こしもふくめてまとめられています。第20巻は意外と読まれていないのかもしれません。

梅棹忠夫の「残す書」は著作集です。66歳のときに失明し活動が制約されるなか「残す書」と意識して精力的にまとめあげたのが著作集全23巻です。残念なのは、量が膨大すぎることです。
しかし、知恵のあるお弟子がいらっしゃいます。亡くなる前に「梅棹忠夫 語る」(2010年)として対談したものを本にまとめられています。
この「梅棹忠夫 語る」と「死もまた愉し」(1995年)に同じ考え方がふたつあります。実際はもっとあるのでしょうが、ここではひとつだけ触れます。
梅棹忠夫は「人生に目的なんかあるわけがない。目的があると信じて遮二無二がんばるのはバカげている」。

結城昌治「よく、何のために生きるかといわれますが、私は、何のためもヘチマもないと思っています。人間、だれでも親を選ぶことができません。いやおうなしに生まれてくるわけです。この世に顔を出したからといって、とたんに、目的が生まれるわけもないんです。目的なんぞ持つ必要はないんですよ。
・・(中略)・・人それぞれの生き方があるわけですから、目的をもって生きることがわるいと決めつけるつもりはありませんが、目的がないからといって、悩む必要もないと思います。」
人生、最後に語る言葉には、耳を傾けるものがあります。

もう一点。
「梅棹忠夫 語る」のなかで、
聞き手「梅棹さんはよくあたる予言者ですね。しかしそれを「こうせい」とは言っていないというところが、みんな不満なんですよ。」と述べ、
梅棹忠夫は「なるほど、わたしはある意味で、マルクスやらと共感するところがある。しかし、一番ちがうところは、マルクスには「べき」がある。わたしには「べき」がない。」と述べています。
しかし、この言葉の例外があるようです。それは、中国に関することと西太平洋同経度国家連合の提言です。
梅棹忠夫は、戦中の1944年から戦後1946年まで、中国に2年間居住しています。その間、本格的に北京語を習っています。また中国在留中の同僚に京大東洋学の本流である藤枝晃がいて、日々中国を中心とする東洋学を話題にしたといわれます。京大東洋学の源流は内藤湖南です。その後、中国の開放政策により1980年から中国探訪が再開され86年まで毎年中国を訪れます。その間、中国30州すべてを自分の足で歩いたそうです。そのうえでの発言です。

梅棹「向こう(中国)で生活してわかったんやけど、中国というところは日本とはぜんぜんちがう。「なんというウソの社会だ」ということや。いまでもその考えは変わらない。最近の経済事情でもそうでしょう。食品も見事にウソ。ウソというと聞こえが悪いけれど、要するに「表面の繕い」です。まことしやかに話をこしらえるけれども、それは本当ではない。」
聞き手「梅棹さんは「中国を信用したらアカン」と言ってましたね。」
梅棹「いまでも(2009年か?)そう思う。しかし、ある意味で人間の深い心の奥にさわってる。人間の心の奥に、おそろしい巨大な悪があるんやな。中国にはそれがある。それでも中国は道徳的世界やから、表面を繕ってきて、でっちあげたりする。コテコテ文化やな。ヒンドゥーはこの道徳的世界とはまったくちがいます。ヒンドゥーはむき出し。人間性の一番いやなところ、おそろしいところが目の前にある。」と。

もうひとつの西太平洋同経度国家連合は、著作集を読むかぎり沖縄国際海洋博覧会があった1975年ごろからを古典的大陸国家より太平洋に向かうべきと述べています。1977年経済企画庁(当時)での講話で「同経度国家連合」という言葉を使っています。

そして、自ら編集した「文明の生態史観はいま」(2001年)で、西太平洋同経度国家連合を提案しています。第5章「海と日本文明」と題された講演(1999年)の最後の部分で、「日本はいままで、西のほう、大陸にばかり関心を持とうとしました。しかし、その結果はまことに無惨なことでした。」と、白村江の戦い、秀吉の朝鮮出兵、日清、日露戦、日中戦争の3つによって「何ひとつ得ることができなかった.日本は大陸に深くかかわって、ロクなことはないのです。(略)深入りしないほうがよいのです。大陸というのは、あるいはアジアというのは、そんなになまやさしいものと違います。アジアの大陸的古典国家は、人間のあらゆる悪―悪ということばは悪いですが―どろどろした人間の業がいっぱいつまっているところなのです。日本人のようなおぼこい民族が手をだしてうまくいくものと違うのです。(略)

大陸ではなく、海に関心をもちましょう。海は日本のもともとのふるさとです。海にもどりましょう。海というのはどこのことでしょうか。南を向きなさい。太平洋にはたくさんの島があります。その島じまと日本との連帯を考えるのです。大陸へ行くには西に向かって同緯度をたどってゆくわけですが、こんどはそうではなく、南北の同経度連合を考えようというのです。(略)太平洋の諸島を結びあわせた太平洋国家連合というゆきかたがあるのではないでしょうか。日本、インドネシア、ミクロネシア連邦、フィリピン、パプア・ニューギニア、オーストラリア、さらにニュージーランド、これらとの島嶼国家連合を本気になって考えないといけません。」
40年近くたって、時代はその方向に向かおうとしているのでしょうか。

井戸 美枝(いど みえ)プロフィール
過去コラム一覧

CFP®、社会保険労務士。
社会保障審議会 企業年金部会委員

生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とし、経済エッセイストとして活動。人生の神髄はシンプルライフにあると信じる。

著書
世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)『お金が貯まる人と、なぜか貯まらない人の習慣』(明日香出版社)など多数。

近著『人気セミナー講師・いどみえ先生の 社会保険がやさしくわかる本』(日本実業出版社)

井戸 美枝ホームページ


掲載日:2014年8月4日

 
 
    

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