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曲がり角に差し掛かっている中国経済

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中国経済は減速している。1年半前に、拙速な金融緩和を実施せず、構造転換を推進していくとする李克強首相は自らが提唱するリコノミクスをここに来て転換しはじめている。具体的に農業関連の融資や中小企業への融資は今年の第2四半期に入ってから次第に拡大している。景気減速を食い止めるために、こうしたselectiveな金融緩和政策は必要であると思われるが、問題は肝心な構造転換が遅々として進んでいないことにある。中国経済は内需に依存するモデルに切り替わる必要があるが、依然として投資と輸出に依存するものである。

しかし、部分的に金融緩和を実施しても、景気が大きく浮上する可能性が低い。まず、景気が減速する局面において個人消費は拡大しない。そして、民間企業の投資は後退し、結局のところ、政府が主導する高速鉄道の整備などのインフラ投資は主役になる。輸出については、欧米諸国への輸出が拡大していない。なによりも、人民元高と人件費の上昇は輸出の拡大を妨げている。

経済担当の汪洋副首相は広東省共産党書記の時代、省内の経済構造転換について「騰籠換鳥」の戦略を打ち出した。「騰籠換鳥」とは、鳥籠を変えず、そのなかの鳥を取り換えることの喩えである。すなわち、「改革・開放」以降、受け入れた低付加価値の製造業に代わり、ハイテクや近代的なサービス産業企業を受け入れるとのことである。この戦略の問題意識はまったく正しいものだが、近年、香港などの華人系企業の一部は広東省を離れたが、新しい鳥としてハイテクや近代的なサービス産業の企業は進出していない。これは広東省に限る現象ではなく、全国的に広がる可能性のあるムーヴメントである。

玩具や100円ライターのような低付加価値の製造業は主に安い人件費と割安の人民元を目当てに中国に進出したが、ここに来てその投資環境は大きく変化している。それに対して、ハイテクと近代的なサービス産業にとり豊富な人材と知的財産権を保護する法による統治が求められている。広東省に限らず、中国全土では、経済構造の転換が大きく遅れているのは、こうしたソフトな投資環境の整備が遅れているからである。

中国経済は政府の役割と市場の役割という古い命題に直面している。胡錦濤政権(2003-2012年)以降、政府は市場への干渉を強めてきた。習近平政権(2013年~)になってから市場メカニズムの強化が提唱されているが、実際は逆方向へ突き進んでいる。なぜ市場メカニズムが十分に機能しないのだろうか。その答えは簡単である。国有企業は市場を独占しているからである。政府は国有企業を通じて市場を牛耳ている。中国では、国有企業はすでに共産党幹部の既得権益になっている。

習近平政権になってから、共産党腐敗幹部の粛清に取り組んでいる。最近は、共産党中央前常務委員の周永康氏およびその家族と元部下ら300人以上が拘束されているといわれている。本件は共産党内の暗黙のルールである「刑不上常委」、すなわち、常務委員の罪は法的に問わないとのことである、が破られた。腐敗撲滅キャンペーンは国民の支持を得て、習近平国家主席の権威が強化されると考えられる。しかし、共産党幹部が腐敗する土壌を取り除かなければ、腐敗を根絶することはできない。

結論的にいえば、2014年の中国経済は下期の金融緩和により政府が掲げる7.5%の成長目標が達成できると思われるが、構造転換の遅れにより、これからも力強い成長が期待できない。中国経済は力強い成長を実現し、市場メカニズムを確立するには、国有銀行と国有企業の完全民営化を段階的に実現する必要がある。

柯 隆(か りゅう)プロフィール
過去コラム一覧

富士通総研経済研究所 主席研究員

中国南京市生まれ
1988年1月来日
同年 愛知大学法経学部入学
1992年3月愛知大学法経学部卒業
1992年4月名古屋大学大学院経済学研究科入学
1994年3月名古屋大学大学院経済学研究科修士取得
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年10月 富士通総研経済研究所主任研究員
2006年7月より現職

著書
中国が普通の大国になる日」(日本実業出版社、2012年) 
チャイナクライシスへの警鐘」(日本実業出版社、2010年)
中国の不良債権問題」(日本経済新聞出版社、2007年)

「日中『歴史の変わり目』を展望する」(勁草書房、2013年、共著)
"Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia", World Scientific Publishing Company, 2012 (共著)
「中国の統治能力」(慶応義塾大学出版会、2006年、共著 ) など

掲載日:2014年8月18日

 
 
    

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