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ピンハネ金融時代の終焉(3)

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成長戦略たる投信改革
 アベノミクスの第三の矢たる成長戦略の重点項目として、金融制度改革が俎上に乗りました。GPIFを筆頭とする年金資金と共に、預貯金をこの国の「成長マネー」にシフトさせようとの取り組みは、前政権が気付くことさえなかったことで、まことに当を得た適切な政策判断だと言えるでしょう。
 政権の意図を反映して、金融庁も本気でこの実現へと舵を切り出しています。とりわけ個人が持つ874兆円もの預貯金から成長資金、即ち本物の長期投資マネーへ誘う手段として、最も重要な役割を担うべきが投資信託であり、その主旨とはあまりにもかけ離れた我が国の投資信託の現状の在り方に、初めてと言っていい本気のメスが入り始めたようです。
 まずそのメスが入った先が販売金融機関です。日本の投信の実態が成長マネーとの供給機能と程遠く、その根本原因は個人投資家の接点たる販売会社の姿勢、つまりはビジネスモデル自体に在るとの問題提起です。今回の改革の成否は、日本で前世期から数十年間続く既存金融機関のヒエラルキーを瓦解させ得る、岩盤崩しのラストチャンスなのかもしれません。

既存投信の実状
 まずは日本で販売されている、投資信託残高ランキングを見てみると、上位10本には日本株ファンドがひとつもなく、19位にようやく1本顔を出します。そして上位20本のうち、この日本株ファンドを除くすべてのファンドが毎月分配型です。
 現在日本最大の投信は、何と米ハイイールド債のファンドです。これは表現を変えれば米国ジャンク(屑)ボンドファンドであり、当該ファンドの良し悪しの論点ではなく、こうしたハイリスクの資産クラスの商品が最大ファンドという状況は尋常ではありません。
 その他20本のうち6本がREITファンド、その他も日本株ファンドを除いては毎月高分配型が占めていて、日本株と例外的1ファンドを除く18ファンドの平均基準価額は5千円台と、多頻度多分配な故に成長マネーとは真反対で、長期資産形成と程遠い、言ってみれば短期志向利益先食い型ファンドのオンパレードになっています。
 これら上位ファンドはほとんどが販売手数料3%超で、販売金融機関が販売手数料重視で販売商品を選別していることを窺い(うかがい)知れます。そして販売手数料を得るために、投資信託の乗換え推奨が常態化した結果、日本の投資信託の平均保有期間は2年を割るほど短期化してしまったわけです。
 ちなみに金融庁が7月に発表したレポートの中にも、日本の銀行の投信窓販の過去5年間のモニタリング結果が示されていて、この間銀行の投信預かり残高は22兆円程度と横ばいの一方で、販売収益は倍増して右肩上がりで成長していることから、販売手数料獲得偏重による回転売買の類推と、平均保有期間短期化の因果関係を指摘しています。
 こうした販売会社の事業構造こそ、投資信託が長期投資マネーとしての機能を阻害する抜本的要因であることは、もはや疑う余地のない事実として詳らかになって来ています。

販売は変われるか?
 では既存金融機関の販売姿勢は、果たして金融庁が改善を求めているような「残高重視」スタイルに変わることが可能でありましょうか。
 過去10年間に販売会社では、販売手数料の高いファンドの販売額が増え続けて来ました。その結果、2013年度の販売会社の投信収入の4分の3を販売手数料が占める構造に偏ってしまっています。
 現状の構造から客観的データに鑑みると、投信の預かり残高が平残1,000億円の販売会社の年間収入は、平均保有期間2年を前提とすると20億円程度と想定され、この収入を残高から得られる信託報酬の販社分(代行報酬といいます)で賄うには、単純に預かり残高を4倍に増やさなければなりません。現実的には不可能でしょう。
 即ち既存金融機関の高コスト構造を維持させるために、もっと平たく言えば、そこに働く職員の高給を払うために、投資信託がその手段として利用されて来た既存業界のモデルは、最早継続的ではあり得ないと考えられます。

金融業界のニューパラダイム
 21世紀に入り、インターネット革命とその普及によって、あらゆる産業の流通システムに劇的な構造転換が進んでいます。つまり需要サイドと供給サイドがネットでダイレクトにつながることによって、伝統的な流通上の仲介機能が役割を失いつつあるのです。
 多くの産業界で、仲介業者は抜本的な事業モデルの転換と存在意義の再構築に奔走し、別次元の付加価値提供へとイノベーションを必死で追求しています。
 そして金融業界だけが、決して聖地で在り続けるはずもありません。圧倒的な情報の非対称性を拠り所としたピンハネビジネスの崩壊は、金融の世界においても歴史の必然なのです。
 金融マンが高禄を食む時代は間もなく終焉するでしょう。既にネット証券会社は証券業界の次のモデルを提示して、その立ち位置を確立しつつあります。保険業界にもダイレクト保険の旋風が起きています。投資信託においてもそれは必定、ネット経由と直販が日本でも一般化する時代がようやく到来するはずです。その証左は米英の投信業界にあって、既に実現し定着しているのです。
 そして何と言っても、こうしたダイレクトに繋がる仕事に携わる金融マンは、ごくノーマルな報酬でちゃんと働いています。カネ儲けにしか興味がない優秀なる金融マンは淘汰される時代が、グローバル金融のニューパラダイムであり、日本もやっと大転換期に入ったのです!

中野 晴啓(なかの はるひろ)プロフィール
過去コラム一覧

セゾン投信株式会社 代表取締役社長http://www.saison-am.co.jp/

1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒。同年、株式会社クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現させ、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。

公益財団法人 セゾン文化財団理事
NPO法人 元気な日本をつくる会理事

著書
『運用のプロが教える草食系投資』(共著)日本経済新聞出版社
『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』中経出版
『投資信託は、この8本から選びなさい。』ダイヤモンド社
『定年までにいくらあれば生きていけるか』アスキー新書
『20代のうちにこそ始めたいお金のこと』すばる舎
『30歳からはじめるお金の育て方入門』(共著)同文館出版
『年収500万円からはじめる投資信託入門』ビジネス社
『投資信託は、この9本から選びなさい。』ダイヤモンド社  等

ブログ「積立王子のブログ」 http://ameblo.jp/saisonam/
HP「社長対談"今"を変えるチカラ」 http://www.saison-am.co.jp/taidan/index.html
Facebookアカウント https://www.facebook.com/haruhiro.nakano.3
twitterアカウント@halu04

掲載日:2014年8月25日

 
 
    

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