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公的年金は本当は株式を保有しない方がいい

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株式市場では、GPIF(年金積立金管理運用特別行政法人)が運用計画を改定して、株式や外貨建て資産への投資を拡大するのではないかとの関心が高まっている。
知り合いのある株式ストラテジストは、これまで「(我々はファンドアメンタルズを重視するから)需給の話などしに来るストラテジストには会わない」と高飛車なことを言っていた外資系の大手運用会社が、先日、GPIFの運用に関する情報と見解を求めてきた、と言って笑っていた。

GPIFが保有する国債を売り、これを日銀が買い取り、GPIFは国債を売った代金を株式投資に振り向けると、実質的に、日銀が株式を買い増しするのと同様の金融緩和効果があるはずだ、というのが、市場で噂されるGPIFの株式買いを支持する意見の根拠だろう。

GPIFの運用計画見直しは、数兆円単位の株式買いにつながるので、一時的には株価に対して効果があるだろうし、景気に対する効果も理屈上全く無いとはいえない。但し、株価が現在、本来の価値よりも割安だというのでなければ、需給による株価上昇は一時的なものに終わる。1990年代に何度も行われた「公的資金の買い」がまさにそうだった。GPIFによる買いも、こうした公的株価操作の一種だが、目端の利く投資家の、利食い売りに利用されて終わりということになりかねない。

政策の効果、そして株価操作を政策に用いること自体の是非の問題に加えて、公的年金が株式、特に国内上場企業の株式を保有することの弊害についても考えておきたい。

 米国では、公的年金の積立金は全額非市場性国債で運用されているが、クリントン政権時代にこれを株式運用に振り向けることが検討されたが、「民間企業の株式を政府が保有することは、民間企業の経営への政府の介入になるので、不適当だ」と当時のFRB議長だったグリーンスパンが反対して、実行されなかったことは有名なエピソードだ。

例えば、公的年金を所管する官庁は厚労省だが、厚労省は同時に医薬品の許認可権限を持っている。GPIFが薬品株を保有した場合、厚労省の関連組織であるGPIF及び厚労省は、薬品株株価が上がることが望ましい株主の立場と、医療政策として製薬会社を監視しなければならない立場、の両方に立つ。また、彼らの立場は投資家としては、高度に重要な情報を握ったインサイダーでもある。

公的年金の株式保有にあっては、個々の企業の議決権行使を運用会社に任せて、GPIF等の年金基金は、議決権行使に直接は関与していないという建前が保持されている。
しかし、他方で、公的年金は議決権行使を通じて企業に対して効率的な経営を行うよう圧力を掛けることが望ましいとされてもいて、GPIFのような組織では、保有株の議決権行使にあたっての方針を運用会社に提示すると共に、運用会社から個々の議決権行使について報告を受け、これをチェックすることになっている。

「政府は個々の民間企業の経営には介入しない」と言いつつ、しかし「議決権行使に不熱心な無責任な株主ではない」とも言っているわけだが、率直に言って、両者は矛盾している。

株主の企業への関与の責任に関しては、先般「日本版スチュワードシップ・コード」が策定されて、GPIFはこれに賛成を表明している。同コードは7つの「原則」から成るが、議決権行使について5番目の原則は、以下のように述べる。
「5. 機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。」

形式的な判断基準だけでなく、具体的な個々の投資先企業の持続的成長に資するように関与することが望ましいと述べているわけで、ここでは、機関投資家が企業経営に積極的に関与することが宣言されている。

結局、公的年金が民間企業の株式を保有すると、個々の企業の経営に関与するなら利益相反となるし、そうでないなら、企業統治上は議決権行使の空洞化が起こり、年金加入者に対しては受託者責任の不徹底が起こる。この矛盾は、どこまで行っても避けられない。
加えて、民間の株主よりも公的年金の方が企業統治上「いい株主」だと言える根拠はない。一連の制度の設計者達はこの点について、勘違いしているのではないか。

公的年金が民間上場企業の大株主になるような仕組みは、制度としての建て付けが悪いと言わざるを得ない。

 

山崎 元(やまさき はじめ)プロフィール
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楽天証券経済研究所客員研究員

獨協大学 経済学部特任教授
株式会社マイベンチマーク代表取締役

1981年東京大学卒業後、三菱商事、野村投信を筆頭に、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一証券、明治生命、UFJ総研など、計12回の転職を経て現職に至る。

ファンドマネジャー、コンサルタント等の経験を踏まえ、資産運用分野が専門。
雑誌やウェブサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。

掲載日:2014年9月22日

 
 
    

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