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NISA初年度の総括

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10人にひとりが作ったが、、、

NISA(少額投資非課税制度)が今年から始まって、もうすぐ1年が経とうとしています。政府・行政挙げて普及への強い意志を持ってスタートしたNISAですが、これまでの処の成果は、データの表面と中身を峻別して捉える必要があります。

金融庁の調査によると、6月末時点でのNISA口座数は727万件で、これは日本の成人の1割近くの人が口座開設したことになり、驚くべき数字です。

これだけ見れば、NISAは初年度で既に一般化したと言えそうですが、この中身を深堀りすると、政府・当局の政策意図に程遠い現実が見えて来ます。

まず口座開設者の4分の3が50代以上、とりわけ60代以上が6割近くを占めるという高齢層への超偏在の事実。

おまけに口座開設はしたものの、実際には使われていない空っぽ未稼働口座の割合が、9月末時点でも約65%もあり(日経新聞調査)、残念ながら表面データは張り子の虎なのです。

NISA資金が向かった先は?

では6月末時点で1兆5千6百万円がNISAから金融商品の買付に回ったとデータにありますが、販売金融機関でのNISAの売れ筋商品はどんな塩梅なのでしょうか。

全体金額のおよそ3分の2が投資信託に向かっています。ちなみに関東某大手地銀の7~9月における設定ベスト3は、①グローバルリートファンド②米リートファンド③米ハイイールドファンド、といずれも高配当で人気の毎月分配型ファンドが並んでいます。

また関西の某大手地銀のランキングは、①米ハイイールドファンド②欧州ハイイールドファンド③アジアハイイールドファンド、とハイイールド債ものがフルラインナップで、とりわけ②と③は通貨選択型の毎月200円超のスーパー高分配ファンドです。

そして某証券では、日本株のブルベア型ファンドという一発狙いのルーレットのようなファンドまでしっかりランキングしていて、金融庁が示している販売会社へのNISA向け監督指針は完全に無視されている格好です。

あるメガバンク窓口でも、NISAでの運用相談に対してはっきりと毎月高分配ファンドを勧められた、との個人ブログがありました。

確かにNISAは分配金に対しても非課税ではありますが、毎月高分配ファンドの多くは基準価額が上がりにくく、元本返戻金(旧称・特別分配金)を含め高分配ゆえに、もし基準価額の目減りを伴ってNISAがこのままの制度で期限を迎えたならば、税務上の取得価額が時価に引き下げられてしまう、といった不幸が続出しかねません。

これが意図的でないとするなら、NISA制度への抜本的理解が顧客側だけでなく、販売側にも不足していると言わざるを得ないことです。

再びNISAキャンペーン
 
1年前の今頃、NISA制度開始に伴って各金融機関が自社のプライドを賭して、決して他社に渡すまじと既存顧客の囲い込みに躍起となったNISA口座獲得キャンペーンが真っ最中でした。

大手証券が現金を配るNISA開設キャンペーンを始めたことがきっかけになって、自主規制機関から現金プレゼントは上限2千円というお達しまで出されました。

そしてまた、今度は今年分のNISA枠が年末で切れるのを前に、証券・銀行こぞって駆け込み投資の促進活動が盛んになっており、現金やプレゼントを贈るキャンペーン競争が再び過熱しています。

メガバンクでは、リゾート宿泊プレゼントや8万円のグルメギフト券を贈るキャンペーンが実施され、証券会社でも10人に1人が現金1万円をゲット出来るプレゼントキャンペーンを打ち出しています。

そもそも口座稼働率が35%にとどまっているのは、既存顧客にお願い営業でお金を渡してまで、口座獲得に血道を上げたからであり、再びお願い営業してとにかくNISA枠で買付してもらっているからでしょう。

資産形成を促すことに、旅行やグルメはどんな関連性があるのでしょうか。大金を渡して現ナマをニンジンにしたような投資行動が、果たしてNISA制度に叶うことなのでしょうか。既存金融業界全体が、NISA制度の趣旨に対しての不見識を問われても仕方ない現状でしょう。

正しいNISAへの提言

既存金融機関はNISA口座を獲得するにあたって、「税金分がお得です」という観点でしか制度を捉えていないのでしょう。

NISA制度の普及に向けて、行政当局が今回ほどその目的趣旨と目標を明確に示した例はないと言えるくらい、「貯蓄から長期投資へ」のメッセージを発信しています。さらに投信販売会社向けの監督指針にも、政策意図を明らかに示しています。

それでも既存業界が従来の営業姿勢を改めることが出来ない以上は、制度の仕組み自体に厳格な制約を課すべきでありましょう。

現制度における最大の欠陥と言われる10年の時限や5年の期限を撤廃することは無論です。同時に一般生活者とりわけ預金しか知らない人たちの長期資産形成をあまねく広めるには、NISAをツミタテ投資に限定する、或いはツミタテ投資に対して更に一定の所得控除を認めるなど、少額投資を制度で後押しし、同時に毎月分配型ファンドを思い切って排除するなど、投資対象を長期資産形成目的に絞り込むのです。更には短期売買には10%程度の課税をするなどペナルティさえあっても良いのではないでしょうか。

既存金融業界がNISA制度の本来主旨を顧客に伝えないということは、金融という産業を営む者の矜持を失ってしまったも同然です。

真っ当に成長マネーとしての意思を自覚したお金がここから創出されなければ、非課税の恩典を与える意味はありません。政府・当局側にもより一層の政策意図の発信強化と共に、正しいアプローチで地道な努力と成果を挙げている事業者への更なるサポートを求めて行くつもりです。

それはNISAの正しい定着が、日本の生活者に長期投資を一般化させるための端緒となるに違いないと思うからであります。

中野 晴啓(なかの はるひろ)プロフィール
過去コラム一覧

セゾン投信株式会社 代表取締役社長http://www.saison-am.co.jp/

1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒。同年、株式会社クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現させ、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。

公益財団法人 セゾン文化財団理事
NPO法人 元気な日本をつくる会理事

著書
『運用のプロが教える草食系投資』(共著)日本経済新聞出版社
『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』中経出版
『投資信託は、この8本から選びなさい。』ダイヤモンド社
『定年までにいくらあれば生きていけるか』アスキー新書
『20代のうちにこそ始めたいお金のこと』すばる舎
『30歳からはじめるお金の育て方入門』(共著)同文館出版
『年収500万円からはじめる投資信託入門』ビジネス社
『投資信託は、この9本から選びなさい。』ダイヤモンド社  等

ブログ「積立王子のブログ」 http://ameblo.jp/saisonam/
HP「社長対談"今"を変えるチカラ」 http://www.saison-am.co.jp/taidan/index.html
Facebookアカウント https://www.facebook.com/haruhiro.nakano.3
twitterアカウント@halu04

掲載日:2014年11月25日

 
 
    

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