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前途多難の日中関係と今後の展望

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日中両首脳はようやく握手し会談した。しかし、笑顔のない握手だった。それについて米国務省副長官だったリチャード・アミテージ氏は「靴下の匂いを嗅いだような顔だった」と皮肉った。実にぎこちない握手だった。凡人の考えでは、そこまでいやならば握手しなければいいのではないかと思われる。

安倍首相は記者会見で「日中は関係改善の第一歩を踏み出した」と評価。おそらく日中首脳会談の最大な成果は危機回避メカニズムの構築に向けた対話がこれから始まることであろう。しかし、危機回避メカニズムの構築は日中関係再構築のボトムラインである。それによって衝突が回避されるかもしれないが、良好な関係にはほど遠い。

専門家の間にはさまざまな意見がある。一つの考えは中国経済が減速しており、ここで中国に進出している日本企業が中国を離れると、中国にとり大きなダメージとなる。だから習近平国家主席は安倍首相との首脳会談に応じた、ということである。要するに、本来ならば、習近平国家主席は安倍首相との会談をしたくなかったが、自国経済のことを心配していやいやながら安倍首相と握手した。もしそうであれば、今回の握手は日本の経済界にとりまったくプラスのメッセージではなかった。

企業投資の基本は利益とリスクをみて決断される。日中関係の悪化はいうまでもなく日本企業にとり大きなリスクとなるが、「政冷経熱」といわれるように、政治関係が冷たくても経済関係は決して悪くない。多くの日本企業にとりここで中国を離れる選択肢はない。この点は習近平国家主席もよく知っているはずである。

そもそもどうして日中関係はここまで悪化しているのだろうか。

巷の常識では、靖国神社を巡る歴史認識の対立と尖閣諸島の領有権の争いは両国関係悪化の背景であるといわれている。見方としては間違っていないが、日中両国がそれによって被っている不利益からどうして対立を避けることができないのだろうか。実は、日中は互いの位置づけをともに間違っている。これこそほんとうの問題である。

まず、日本は中国がここまで成長するとは予想していなかった。世界二番目の経済になった中国は速くも戦略的に拡張してきた。その一連の動きはあまりにも速すぎて日本はそれに対応する戦略を考える暇もなかった。日本が中国に対抗する唯一の戦略といえば、日米同盟を強化することぐらいである。まったく他力本願の考えである。

一方、中国の指導者も自らの国力がここまで強くなるとは考えもしなかった。おそらく習近平国家主席は今、アジアの王になった気分であろう。だから北京のAPECで習近平国家主席は演説のなかで「アジアのことはアジアの人によって解決される」と述べ米国のアジア回帰にくぎを刺した。中国の眼には日本などなかった。

そこで第二期安倍政権が誕生し、アベノミクスによって経済を成長路線に乗せ、政治的には集団的自衛権の行使容認に動き出した。中国とは力対力の構図が少しずつ鮮明になってきた。むろん、ここで日中がすぐさま開戦するとは双方とも考えていない。双方はその抑止力をもって相手を抑止しようとしている。

安倍首相の言葉を援用すれば、「日中は互いが互いを必要としている」。まったく正しい見解である。すなわち、日中の指導者は相手国を正しく位置づけする必要がある。習近平国家主席は中国の経済発展には安定したアジアが必要であると指摘している。これも正しい考えである。中国の経済成長は誰も止めることができない。ただし、日中はよい関係を構築しないと、平和なアジアは到来しない。日中両首脳は大局に立つべきである。

柯 隆(か りゅう)プロフィール
過去コラム一覧

富士通総研経済研究所 主席研究員

中国南京市生まれ
1988年1月来日
同年 愛知大学法経学部入学
1992年3月愛知大学法経学部卒業
1992年4月名古屋大学大学院経済学研究科入学
1994年3月名古屋大学大学院経済学研究科修士取得
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年10月 富士通総研経済研究所主任研究員
2006年7月より現職

著書
中国が普通の大国になる日」(日本実業出版社、2012年) 
チャイナクライシスへの警鐘」(日本実業出版社、2010年)
中国の不良債権問題」(日本経済新聞出版社、2007年)

「日中『歴史の変わり目』を展望する」(勁草書房、2013年、共著)
"Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia", World Scientific Publishing Company, 2012 (共著)
「中国の統治能力」(慶応義塾大学出版会、2006年、共著 ) など

掲載日:2014年12月1日

 
 
    

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