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起業の必要性

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今回のコラムは、起業について考えてみます。
 少子高齢化が進んでいる日本経済を元気にするには、若い人が新しいビジネスを起こしてくれる必要があります。
 そのため私も大学の講義で、21世紀の経済のトレンドをまとめた「しかえしいの経済」と、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、ロボットやVR(仮想現実)などの最新のイノベーションがこれからの経済社会に与える影響などを教えています。
 この「しかえしいの経済」とは、
 「し=食糧不足を解決する、食糧・飼料・バイオなどの産業」、
 「か=環境問題の悪化を解決する、環境・水・空気を清浄にする産業」、
 「え=エネルギー消費の増加に対応する、地下資源や代替エネルギーの産業」、
 「し=新興市場の経済成長に対応した、貿易・商社・旅行等の産業」、
 「い=医療・健康技術の進化に対応した、医薬・医療機器・健康関係の産業」
 の世界経済のメガトレンドを表現したものです。

 日本経済再生本部(本部長 安倍首相)による「ベンチャー・チャレンジ 2020」の中でも、『IoT・BD(ビッグデータ)・AI(人工知能)時代の到来により、ビジネスや社会の在り方そのものを根底から揺るがす第四次産業革命が急速に進展している。・・・我が国は、少子高齢化による社会保障費の増大、人口減少に伴う労働力不足、環境・エネルギー制約等、課題先進国である。・・・新たな産業と雇用を生み出し、「我が国の経済成長の起爆剤」となる。「世界共通の社会課題の解決に貢献」する。今こそ、イノベーション、今こそ、ベンチャーなのである』と、イノベーションとベンチャーによって、少子高齢化の進む日本経済の立て直しを図ろうとしています。

起業に対する若年層の不安

 そのようなとき、2016年10月24日付けのブルームバーグに「高齢化進み存在感増すシニア層の起業家-若年層は失敗恐れ守りの姿勢」という、ちょっと気になる記事を見つけました。
 この記事によると、「2016年度 新入社員 春の意識調査」(日本生産性本部)の設問「社内で出世するより自分で起業して独立したい」と答えた新入社員の割合は10.8%となり、同設問を開始した03年以来、過去最低となった」と報告しています。
 その理由として、「日本では諸外国と比べて起業家の社会的位置付けが低く、独立心旺盛な子供を育てたり、起業家精神を身につけたりする学校教育が不十分だとみる。また、人材の流動性が低いため、起業に失敗した時に、会社勤めに戻れるのかといった不安感が若年層ほど強いのではないか」と言う有識者の意見を引用しています。
 中小企業庁の2014年版の「中小企業白書」でも、「起業・創業は、新たな地域経済の担い手を創出すると共に、産業の新陳代謝を促す。しかしながら、我が国の起業希望者は激減しており、開業率は欧米諸国の半分又はそれ以下となっている。・・・、我が国の起業・創業を活発化させるためには、「起業意識」、「起業後の生活・収入の安定化」、「起業に伴うコストや手続きの低減」という三つの課題への対応が必要である」と述べています。

起業家に対する学生アンケート調査では

 そこで学生さんに、「起業家」についてアンケート調査を2回行いました。
 最初の調査では、
 1.起業家についてのイメージを教えてください。
 2.起業家になるなら若い方が良いと思いますか?
 3.あなたはいつか起業家になりたいですか?
 と言う質問を聞いてみました。

図1.起業家アンケート1

図1.起業家アンケート1
(第1回目のサンプル数は、1回生13人、2回生以上31人。実施時期は2016年11月)

 ほとんどの学生さんは、起業家に対して良いイメージを持っていることがわかります。また起業家になるなら、若い時のほうが良いとも回答しています。
 ところが、それでは起業家になりたいですか?と聞くと、多くの学生さんは「なりたくない」と回答しています。
特に興味深いのは、高校を卒業したばかりの1回生は、質問の1と2は2回生以上の学生さんとほとんど同じ回答をしていますが、質問3に対しては圧倒的に「起業家にはなりたくない」と答えています。
 たぶんこの理由は、高校までの勉強が経済や経営の知識とは関係のない内容であり、日本経済再生本部が期待するような「起業家精神」は教えられていないからだと思います。
 そこで、2回生以上に次のようなアンケート調査を行いました。

図2. 起業家アンケート2

図2. 起業家アンケート2
(第2回目のサンプル数は、2回生以上34人。実施時期は2016年12月)

 まず、「日本の社会が若い人の起業を支援しているか」と言う質問に対して、そうは思わないと感じる学生さんは半数以上の59%もいます。
 実は私の授業では、若い人の起業やベンチャー支援に関する話も多いので「はい」が41%になりますが、一般的にはもっと「はい」の割合が低くなると思います。
 次に「起業リスク」については、学生さんはサラリーマンの人生よりリスクが高いと認識しています。
 また学生さんは、起業に関する情報や教育が不足していると強く感じています。大学の経済学部や経営学部では、地域連携もしながら起業家と学生さんの交流なども進めているのですが、しっかりとした「起業家教育」のカリキュラムは実現していません。
 さて最後に一番気になる質問が「自分には起業家になるための知識や経験、能力が不足しているので、起業家になるのは無理だと思う。」です。
 嬉しいことに、半数近くの学生さんが「いいえ」と回答してくれています。
 アンケート1の回答と合わせると、2回生以上の学生さんの半数近くが「起業家になりたい」、「起業家になるのは可能だ」と考えていることがわかります。

起業に関する各国比較

 ただしこのような結果は、残念ながら非常に例外的なもののようです。
 上述したブルームバーグの記事や中小企業白書からも分かるとおり、日本の若年層の起業や起業意欲は非常に低いことが指摘されています。
 それを確認するために、「起業家精神に関する調査(GEM調査)」を使って、アメリカ・中国・韓国と比較してみます。
 まず図3は、起業の実態を把握するため、18 歳から 64 歳までを対象として、起業の初期段階(3年前後)の人口割合をグラフにしたものです。
 図から分かるように日本人の起業率は4%にも満たず、中国やアメリカとの格差は広がるばかりです。

図3.初期の起業家比率

図3.初期の起業家比率

 それでは何故、日本人の起業率が低いかと言うと、次の図4より、起業して失敗することを心配する日本人の割合が高いからです。特に最近は、その傾向が強くなっています。それに比べてアメリカ人は、失敗を恐れない人が多いと言うことが見てとれます。

図4.起業の失敗を恐れる割合

図4.起業の失敗を恐れる割合

 次に、私の授業で行ったアンケート調査2にも関係しますが、起業に関する知識・情報や教育についての国別比較が図5です。

図5.起業に関する知識

図5.起業に関する知識

 日本人は起業の仕方がよくわからないと感じています。その一方、中国人の場合は、人間関係を使った情報共有と拡散が行われていることが分かります。
 さてアメリカ人の割合が低くなっていますが、その理由は、アメリカ人が起業する場合はその準備のために大学院に通ったり、企業や政府が提供する教育や訓練を充分に積んで起業するからだと思います。
 そのため次の図6より分かるとおり、アメリカ人の起業家は自分の能力に対して強い自信を持っています。

図6.自己能力評価

図6.自己能力評価

 ところが日本人の場合は、残念ながら自分に対する自信の無さが目につきます。これは日本の謙遜の文化が影響しているかもしれませんが、もっと日本人の能力の高さを信じてもらいたいと考えます。
 いずれにしても、少子高齢化の日本を元気で豊かな社会にするために、若い人の起業を応援するような教育を続けたいと考えています。

中嶋 航一(なかじま こういち)プロフィール
過去コラム一覧


現職:帝塚山大学経済学部 教授
学歴:UCLA経済学部B.A.・ Vanderbilt University大学院経済学研究科Ph.D.  
専門:ITを活用した教育、アニメ経済学、「お金持ち」の経済学
『千と千尋の経済学』シリーズ
YouTube:中嶋航一
千と千尋の経済学のblog
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