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株式投資の教育

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今回のコラムは、若い人に必要な株式投資の教育について考えてみます。
 私が担当する講義に、いま大学で流行っているプロジェクト型演習による「経済学と株式投資」があります。
 「プロジェクト型演習」という講義形式は、学生さんが主体的に地域連携や外部のビジネスコンテストなどに参加して実学的な研究や発表を行うものです。
 この「経済学と株式投資」は、学生さんにK-ZONEが主催するバーチャル株投資ゲーム「トレダビ」 や外部の大学対抗株式投資コンテストに参加させ、経済学を基礎にした株式市場の機能や役割、株式投資を活用した人生設計や資産形成の必要性を理解してもらうことを目的にした講義です。

株式投資の教育的メリット

 実は最近まで、株式投資を教えるときは「今日の内容は保護者の方にはナイショですよ。まだまだ多くの保護者の方は、株式投資なんて危ない投機やギャンブルだと思っていますからね。」と言わなくてはならないほど、「株式投資による資産形成」にはネガティブなイメージがつきまとっていました。
 しかし最近のアベノミクスの成果と株高によって、保護者も株式投資をしたり投資信託を買ったりしていると学生さんから聞くようになりました。
 そこで私も安心して、学生さんに、アルバイトしたお金を無駄遣いせずに、少額で良いから株式投資を始めるように勧めることができるようになりました。
 若い人が株式投資を始める長所・メリットはたくさんあります。
 まず学生さんは、自分が一生懸命アルバイトで働いて労働所得を得ていますが、自分のためにお金を働かせて得る「不労所得」の経験がほとんどありません。
 そこで例えば、10万円の株式投資で1年に5%の配当金5000円をもらったら、それは時給1000円で換算したら5時間分になります。つまり自分は5時間分のアルバイトをしなくとも、お金が一生懸命働いてくれて5000円を手に入れることができるのですよ、と教えます。
 次に、アルバイトをして稼いだお金を投資することによって増えることを経験すると、今までのように遊びに行ったりブランド品を買ったりして使ってしまうことがもったいなく感じるようになります。つまり「消費」優先から「投資」志向に脳みそが転換していく良い機会になります。
 そして実際に気に入った会社の株を購入すると、自分の大切なお金をつぎ込んでいるので、学生さんはその会社のファンダメンタルズ分析(財務諸表や業績)や株価のテクニカル分析に真剣に取り組むようになります。
 またその会社を取り巻く業界の研究や関連するニュース、日経平均株価や外国為替の動きにも注意を払います。
 実はこのような主体的な会社や業界の研究は、彼らの就職活動にも役立つものです。
 そのため学生さんには、自分が買った株式の株主総会にも参加して、取締役たちが株主に対してどのように対応しているか自分の目で見てくるように勧めています。そしてもしその会社のリーダーが立派な人で、会社の将来性を気に入ったら、今度はインターンシップや企業説明会に参加すれば良いと伝えています。
 最後に株式投資をして損をすることを気にする学生さんが多いですが、余裕資金を使って少額で始めることと、若い人はいくらでもこれから収入があって失敗を取り戻せるので、過度に心配することはないことも教えます。
 さて具体的に投資を始める場合、20歳以上の学生さんにはまず少額投資の非課税枠を使えるNISAを勧めます。
 NISAとはイギリスのISA(Individual Savings Account)制度を参考に、2014年から始まった非課税制度です。
 NISAの導入は、2013年まで株式の配当・譲渡所得にかかっていた所得税7%、住民税3%、復興所得税0.147%の税率が、2014年からは所得税15%、住民税5%、復興所得税0.315%になったことが直接的な理由です。
 また2016年の1月からは、100万円から120万円に非課税投資枠が増加しました。
 これから2023年まで毎年120万円の非課税枠を利用でき、非課税の期間はそれぞれ最大5年間、非課税枠の投資総額は5年分の合計600万円までになります。  

政府広報オンライン「新しい投資優遇制度「NISA(ニーサ)」がスタート!」
日本証券業協会「みんなにいいさ!NISAがいいさ!!」がわかりやすいですので参考にしてください。

NISAに関する学生アンケート調査

 NISAの普及について、金融庁が「NISA制度の効果検証結果」を2016年10月に公表しています。
 そのレポートによると、同年6月時点のNISA口座数は1030万、累計買付金額は8.4兆円ですが、その伸びは鈍化しています。
 また実際の口座稼働率は2015年12月末で46.5%、残高の約70%が投資信託です。
 また売却率は約20%ですが、株式の売却率が約41%に対して投資信託は9.7%になっています。
 以上のことより、NISAは投資信託の長期的な運用先として利用されており、株式の利益や配当金を目指したものではないことがわかります。
 NISAの口座数の年代別推移を見ると、NISAの普及が進まない理由の一つに、若い人たちの関心が低いことが見てとれます。
 2016年6月末の投資可能な勘定が設定されている口座数の表によると、全口座数1029万のうち、20歳代は約47万口座、30歳代でも約104万口座しかありません。
 その一方、40歳代は154万口座、50歳代は174万口座、60歳代は268万口座、70歳代は197万口座となっています。
 次にそれぞれの年齢層の平均購入額は、20歳代が53万円、30歳代が64万円、40歳代が67万円、50歳代が73万円、60歳代が80万円、70歳代が81万円、80歳以上が80万円です。
 これを見ると、20歳代の投資額は、彼らの所得水準を考えると、意外なほど高いと感じます。つまり若い人たちは株式投資やNISAに対して関心・興味があると考えることができます。
 ただしNISA口座開設者の投資経験のデータによると、若い世代ほど投資の未経験者の割合が高く、20歳代や30歳代では約半数が投資未経験者となっています。
 従って、若い人向けの株式投資の教育の重要性、必要性がはっきりわかる統計データでした。
 そこで私の学生さんにNISAについて、次のようなアンケート調査を行いました。

NISAに関するアンケート調査(サンプル数は34人。実施期間は2016年12月)

 私の講義は金融や株式投資等に関心のある学生さんが取ってくることが多いので、71%がNISAを知っていると回答しています。また半数近くの学生さんが、親もNISAについて知識があると答えています。
 しかしNISAをやっている学生さんは一人もいません。やはり学生の立場でNISAを始めるのはハードルが高いようです。
 その一方、NISAをやってみたいと考える学生さんは74%にものぼり、適切な教育と関係者の支援(例えば学生さん向けのセミナーや勉強会など)があれば若い人を中心にNISAの活用が広がると思います。

NISAの課題

 学生さんにNISAを勧める一方、NISAの問題も指摘しています。
 NISAの最大の問題は、NISA口座の株式同士の損益通算をすることができない点です。もちろん、NISA口座以外の口座の保有株式とも損益通算はできません。これがNISAが投資信託を中心に運用されている理由だと考えます。
 そこでNISA口座で株式を売買する場合は、利益を出している銘柄と損を出している銘柄の損益を合算することができないと言う制約条件を前提にした銘柄の選択を教えることになります。
 例えばNISAは、基本的に長期保有(1年前後から5年)が前提になるので、自分に合ったリスク許容度(どれくらい損益の変動をガマンできるか)を考えて選ぶように指導しています。
 リスク許容度は3つのレベルに分けて、高の場合は利益が出たら1年以内でも売却してしまう銘柄。中の場合は2から3年、低の場合は5年近く保有しても安心できる銘柄を選ばせます。
 講義の中では具体例も示さなければならないので、その場合はアメリカの銘柄を使います。その理由は、実は私は日本株の投資をしていないことと、アメリカを代表する会社を学生さんに知ってもらいたいからです。
 なお、これらの銘柄は日本の証券会社で購入できますが、1回当たりの売買手数料が高いので、頻繁な売買に向かないNISAに適していることも理由の一つになります。
 私の米株式市場の投資については、「千と千尋の経済学のblog」をご覧ください。

具体的な事例:リスク許容度に応じて現時点でNISA用に買っても良いと考えている参考銘柄
高:XOMやNUE
中:GOOGやHON
低:JPMやCOST

 XOMはトランプ大統領が国務長官に選んだレックス・ティラーソン氏がCEOだった石油メジャーのエクソンモービルのティッカーシンボルです。ティラーソン氏は世界中の政財界のリーダーを個人的に知っていると言われるほどの著名な経営者です。なお、配当利回りは約3.5%です。
 NUEはアメリカを代表する鉄鋼メーカーのニューコア。CEOのジョン・フェリオラ氏はどんなに苦しくとも従業員を解雇しない経営者として有名で、中国や韓国の鉄鋼メーカーのダンピング輸出に対して厳しい姿勢を取ってきた人です。そのためトランプ大統領の「アメリカ ファースト」による安価な鉄鋼製品の輸入阻止とインフラ投資の拡大によって、ニューコアの製品需要が高まることが予想されます。配当利回りは約2.5%です。ただし石油や鉄鋼の業界は、アメリカや世界の経済成長率に大きく影響を受けるので、リスクは高に設定します。
 次にGOOGは、グーグル(現在は持ち株会社のアルファベット)で、その圧倒的な技術力と財務の健全性のため安心して購入できる銘柄です。リスク許容度が中なのは、短期間で株価の値動きがかなりあるためです。
 またHONは、100年以上にわたり、航空・宇宙産業から自動車、産業用制御機械、石油関係の機械から住宅の節電・省エネ機器や医療機械等々、圧倒的な存在感を示すハネウェル。世界的な会社の経営者は一様にすばらしい人が多いのですが、最近まで同社を率いていたCEOのデイブ・コーティー氏もアメリカを代表する経営者です。HONのリスク許容度が中なのは、XOMやNUEの資源系と同様、ビジネスサイクルの影響を受けることと、多国籍企業のため、ドル高による為替差損の影響もあるからです。配当利回りは約2.2%です。
 JPMはJP Morgan Chaseと言うアメリカ最強のメガバンクで、金利上昇と金融業界の規制緩和によって大幅な利益の増加が期待されている代表的な「トランプ銘柄」になります。
 CEOはジェームズ・ダイモン氏で、金融業界で最も信頼されているリーダーの一人です。配当利回りは約2.2%。
 COSTはアメリカに500店舗近く展開し、日本にも25店舗あるコストコ・ホールセールで大型の倉庫型小売店です。小売業界としては利益率が高く財務状況も健全です。懸念材料としては、トランプ大統領のメキシコ叩きによってメキシコペソが対ドルで暴落しており、同国に36店舗を展開しているため、その影響が決算に出るかも知れません。配当利回りは約1.1%。
 なお、以上の銘柄の株価は、トランプの大統領選勝利から大きく上昇しているので、購入のタイミングには注意するよう学生さんには伝えています。
 このように、学生さんに株式投資の高いハードルを越えて、実際にNISAを始めさせるためには、教える側の努力と工夫が強く求められることになります(文中の配当利回りは2017年2月3日時点)。



中嶋 航一(なかじま こういち)プロフィール
過去コラム一覧


現職:帝塚山大学経済学部 教授
学歴:UCLA経済学部B.A.・ Vanderbilt University大学院経済学研究科Ph.D.
専門:ITを活用した教育、アニメ経済学、「お金持ち」の経済学
『千と千尋の経済学』シリーズ
YouTube:中嶋航一
千と千尋の経済学のblog
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