現物しかやらないから増担保とか関係ない!のかな?
個人投資家の中には、リスクの観点から現物取引しか行わないというスタンスの方もいるでしょう。しかし、現物取引のみの場合でも、信用関連の情報についてはきちんと見ておく必要があります。株価の大きな変動要因となるからです。今回は、信用取引規制のひとつである増担保規制や解除による株価の変化の特徴や、投資の対象としてどう捉えていくかについて解説します。
過熱した取引を規制する増担保規制とは
増担保規制は、相場への過熱を抑えるために行われる信用取引規制のひとつで、信用取引の残高が大きくなりすぎた場合に行われます。
信用取引を行う場合、通常30%の委託証拠金が必要です。増担保規制では、この割合が50~70%に引き上げられる、もしくは委託証拠金の中の現金の割合に20~40%が求められます。このことによって、投資家の証拠金負担が大きくなるため、過剰な信用取引を抑えることができるのです。規制は証券取引所が発するだけでなく、証券会社が独自に行う場合もあります。
増担保規制は、現物の取引そのものについて規制されるわけではありません。しかし、規制された場合には信用取引の減少に、解除された場合には増加に繋がるため、株価の大きな変動をもたらすことがあります。そのため、信用取引の有無にかかわらず信用情報も見ておかなければなりません。増担保規制の前段階として日々公表銘柄への指定がありますので、所有している場合には注意しておきましょう。
増担保規制による株価の影響
増担保規制が行われると、証拠金に必要な資金が増えることから、規制以降の信用取引による取引量が減少するのが一般的です。信用取引量が抑制されず増加するようであれば、さらに貸借禁止などの措置が行われます。増担保規制が発せられた時、株価がどう動くかは銘柄によって差がありますが、一般的には信用による買い圧力が弱まるために、下落を招きます。特に短期的に上げた銘柄ではその傾向が強くなります。しかし、株価が適正な銘柄では、増担保規制が行われても株価に大きな変動がない場合もあります。必ずしも規制=下落=売却、と考える必要はありませんが、値動きには注意が必要です。
逆に、増担保規制が行われても株価が上昇を続けるケースもあります。しかし、この場合は空売りの解消による上昇や、仕手筋の投機的な動きが続いているに過ぎない場合もあり、ある日突然反落する可能性も高いです。規制中の上昇時の新たな投資については慎重にすべきでしょう。
増担保銘柄は投資に値するか
増担保規制は、取引の過熱が落ち着き、一定の条件を連続して満たした場合には解除され、再び通常の条件で信用取引ができるようになります。
増担保規制が行われた場合に下落した銘柄は、解除後に株価が上昇することがあります。中にはストップ高をつける銘柄もあり、その高騰を狙うという投資法もあるほどです。しかし、解除されたからといって株価が必ずしも戻るというわけではなく、上昇は安定して人気の高い銘柄に限られるでしょう。また、値動きの大きな新興市場銘柄においては、規制と解除を繰り返すものもあります。これらの銘柄は増担保規制を受けることでかえって注目されることになったとも考えられます。
仮に業績等問題のない銘柄が、増担保規制が要因で株価が下落した場合には、現物での取引は後に値上がりチャンスとなり得るかもしれません。増担保規制は現物で取引をしている人にとって直接の制限はありませんが、このような影響があらわれるため、見逃してはいけないのです。
株価の変動要因には決算内容など会社の経営状況や数値状況に関するものもありますが、短期的には信用取引規制も大きく存在します。増担保規制の前段階である日々公表銘柄指定の段階から株価の動きには注視しておきましょう。