株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

富国生命投資顧問 代表取締役社長 櫻井祐記氏 2011年の日本経済に必要なこと。そして株価の行方は? - インタビュー - FX・CFD

 

FX・CFD [インタビュー]

【第2回】富国生命投資顧問 代表取締役社長 櫻井祐記氏

2011年の日本経済に必要なこと。そして株価の行方は?

2011年の国内株式市場は、昨年末から米国の株式市場が活況だったこともあり、上昇ムードのなかでスタートを切りました。このところ、米国の景気回復期待が高まりつつあることから、今年の株価の見通しについては、やや強気の意見も増え始めています。実際、2011年の株価はどうなるのか。株価を左右する日本経済の行方はどうなるのか。今回は、富国生命投資顧問代表取締役社長の櫻井祐記さんにお話を伺いました。


2011年の日本経済、そして日本の株価などについて伺いたいと思いますが、その前に2010年はどういう1年だったのかということを、振り返っていただけますか?


富国生命投資顧問
櫻井祐記代表取締役社長

櫻井氏:

2010年は、まず出口戦略をどうするのか、ということからスタートしました。2008年に起こったリーマンショックは、「100年に1度の危機」と言われますが、まさに金融市場にとっては、大きなイベントだったと思います。それまで大きなマーケットを形成してきた証券化商品に対する不信感が高まり、紙くず同然となった証券化商品に高い格付けを付与していた格付け会社の威信が地に落ち、そのマーケットを構築してきた投資銀行のあり方まで問われました。つまり、リーマンショック前まで金融市場において当たり前とされてきた投資に関するルールや基準、約束事が一気に崩れてしまったのです。

それだけリーマンショックは、金融市場にとって大きなイベントであり、実体経済にも大きな影響を及ぼしたわけですが、米国をはじめとして、各国は景気が底割れするのを防ぐため、大規模な財政出動と金融緩和を行ないました。

結果、2009年を通して株価は回復基調をたどり、景気の先行きにも少しではありますが、光が差し込むようになりました。そこで2010年以降は、こうした緊急対応ともいうべき財政出動と金融緩和を、通常ペースに戻すための出口戦略が検討されるようになったのです。

しかし、蓋を開けてみれば、出口戦略にシフトするどころか、形を変えたリーマンショックが、金融市場を襲うことになりました。リーマンショックは金融機関の問題でしたが、その危機から脱出するために国が積極的な財政出動を行なった結果、今度は国の財政赤字がかさみ、新たにソブリンリスクが浮上してきたのです。特にユーロ圏のなかでも、欧州新興国に属するギリシャ、アイルランド、ポルトガルなどで、国債格付けが引き下げられるという問題が生じてきました。つまり、リーマンショックは、まだ終わっていないと考えることができます。

ただ、そのなかで日本はどうかというと、「失われた20年」と言われるように、どの国よりも先に金融危機を経験しました。ですから、2010年の株価の低迷などは、まさにリーマンショックの煽りを受けただけに過ぎなかったわけです。したがって、日本については、ここから先のネガティブ・サプライズは起こらないと考えても良いでしょう。

ただ、あるとしたら政局から生じる政治発のリスクと、近隣諸国から生じる地政学リスクです。これらは、経済のリスクというよりも、国内外の政治リスクになるわけですが、それは2010年に比べ、2011年の方が高まると見ています。

日本にはネガティブ・サプライズがないということですが、ということは、株価がさらに大きく下がる恐れは、少なくなってきているということですか?

櫻井氏:

そうですね。もう、ここから更に大きく下げる心配はないでしょう。もちろん、それには国内外の政治リスクが高まらないという前提条件はありますが、少なくとも経済リスクに絡んで株価が大きく下げるリスクは、こと日本においては、ほとんどないと思います。

ただ、下がるリスクはないのですが、だからといってどんどん株価が上昇トレンドを描くかということになると、これにはまた前提条件が必要になってきます。今のところ、それほど強気にはなれません。なぜなら、今回の税制改正についてもいえますが、企業が元気になるような政策がほとんど見られません。法人税が軽減されたとしても、他のところで取られてしまい、結局、チャラになってしまうような政策が取られている。

一方、お隣の韓国では、政府と民間企業が一体となって、韓国企業の製品を海外に売り込んでいます。この違いが非常に大きいのです。90年代に問題視された官民癒着の問題から、政府が民間企業を支援すると、何でも癒着と見られてしまう傾向が強まっていると思うのですが、これからの時代は、もはや民間企業だけで、何とかなるものではありません。これから米国経済の力が弱体化していくことになれば、米ドルが現状に比べて大きく上昇するとは思えないでしょう。したがって、どうしても円高の問題が付きまとうわけですが、こうした環境下で日本企業が生き延びていくためには、やはり政策の中身が問われてきます。

それは、日本政府がどの分野に重点を置いて、民間企業とともに世界へ打って出るかということに加え、税金の再分配構造の見直しが出来るかどうかということだと思います。ここにきちっと道筋をつければ、日本の株価は上がります。

具体的に、どのような手を打てば、株価は上がるのでしょうか。

櫻井氏:

かつて小泉政権の下で郵政改革が行なわれた時、株価は大きく上昇しました。冷静に考えれば、郵政改革を行なったところで、それが直接、株価を押し上げる要因にはならないのですが、株式市場に参加している投資家たちは、郵政民営化が実現できるならば、日本経済は何か大きく変わるのではないか、という期待を抱いたわけです。つまり、株価というものは、何かが大きく変わるという期待感やムードが高まれば、自然と上昇していきます。そういう政策が求められています。

たとえば、日本が持つ環境技術は、世界にも冠たるものがあります。海水を真水に変える淡水化技術に関しても、非常に高いノウハウがある。この技術を中東諸国に売り込むに際しては、企業の頑張りだけではなく、どうしても政府の後押しも必要になります。電気自動車の技術もそうです。このように、日本が世界的に見てリードしている産業を、いかに日本政府としてバックアップし、世界のマーケットに売り込んでいけるか。それを政策としてきちっとフォローする流れが出来れば、株価を押し上げる効果にもつながっていくと思います。

また、税の再分配については、なかなか急に変えるというのは難しいのですが、でも、これを実現しない限り、日本経済の豊かな未来は構築できません。具体的には、高齢者に再配分されている税金の一部を、もう少し若年層や女性に向けていく必要があるでしょう。たとえば、オフィス街に保育園を造り、女性が働きやすい環境を整えるといったことに、税金を使っていくということも、これからは大切になっていきます。

今の政治で、それを実現することは出来るでしょうか。

櫻井氏:

そのためには、真の意味でリーダーシップを発揮できる首相が必要になります。したがって、今後の政局の行方は、日本経済の未来を考えると、極めて重要になってきます。

民主党政権になってから、たとえば子供手当てや高速道路の無料化など、非常に耳触りの良い政策が打ち出されてきましたが、それは財政面で困難であることが分かってきましたし、仕分け作業を繰り返しても、思った以上に隠し財産が無いということも分かってきました。

だからこそ、実効性のある政策を、なるべく早い時期に打ち出す必要があります。今年は、そういった現実に目を向けたうえで、政府として何が出来るのかということが、問われてくると思います。

今の日本は、まだ国力があります。個人金融資産も1,400兆円規模であり、世界最大の債権国でもあります。ただ、このまま手をこまぬいたままでいれば、いずれ国力は低下していきます。ですから、実現できるかどうかで迷っている時間は、もうどこにもありません。実現させるためにアクションを起こす時期に来ているのです。それが出来なければ、日本の株価はまだ当分、回復しにくい状況になるでしょう。


今年の株価はどのようになると見ていますか?

櫻井氏:

先ほども申し上げましたように、今年、日本の株価が大きく上昇トレンドに乗れるのか、それともさらに長い低迷期に入ってしまうのかということについては、政策次第です。仮に、政治が何のリーダーシップも発揮することができず、日本経済が変わるという期待を高められるような政策を全く打ち出すことができなければ、日経平均株価は再び1万円を割り込み、その水準が定着してしまうでしょう。

でも、政策の道筋さえしっかりつけることができれば、上昇する可能性は非常に高いと思います。日経平均株価で1万2,000円から1万3,000円の水準は、十分に狙えるのではないでしょうか。


Fanet MoneyLife(掲載日:2011年01月12日)


櫻井 祐記氏(さくらい ゆうき)氏

経歴

成蹊大学 法学部 卒業
昭和51 年 4 月 富国生命保険 入社
昭和59 年 4 月 同社 有価証券部 (債券運用担当)
昭和61 年 4 月 同社 ロンドン駐在員事務所所長
平成 2 年 3 月 同社 有価証券部 国際金融課長
平成 8 年 4 月 同社 有価証券部 債券課長
平成11 年 4 月 同社 有価証券部 副部長
平成13 年 4 月 同社 有価証券部 部長
平成15 年 4 月 同社 財務企画部長
平成19 年 7 月 同社 取締役
平成21 年 4 月 同社 執行役員取締役
平成21 年 6 月 富国生命投資顧問 代表取締役社長

   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »