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嶌峰義清氏 世界の株価はこれからどうなる? - インタビュー - FX・CFD

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FX・CFD [インタビュー]

【第7回】嶌峰義清氏

世界の株価はこれからどうなる?

8月に入り、米国では株価が大幅続落となりました。背景にあるのは米国の金融不安とユーロ加盟国のソブリンリスク問題。ギリシャ問題はイタリアやアイルランド、ポルトガルにも波及し、ユーロは急落。再び1ドル=80円割れの円高が進んでいるものの、日本は震災後の政策が不透明で、景気の先行きには不透明感が漂っています。日本、米国、欧州、そしてアジアの株価動向はどうなるのでしょうか。第一生命経済研究所の首席エコノミスト、嶌峰義清氏に伺いました。


世界の株式市場について整理していきたいと思います。まず米国ですが、7月半ばにかけて大幅続落状態になりました。米国の景気は現状、どうなのでしょうか。


第一生命経済研究所
首席エコノミスト 嶌峰義清氏

嶌峰氏:

基本的に株価の動きというものは、その国の景気動向に左右されます。したがって、今後の株価動向を見ていくうえでは、現時点において、投資しようと思っている国の景気がどの位置にあるのかということを、とりもなおさず把握しておく必要があります。

そこで、まずは米国の景気動向ですが、米国では住宅バブルが崩壊した後、家計バランスシート調整が続いてきました。2007年6月末から2011年3月末までの間に、実に8兆ドルも家計が持つ資産残高が目減りしたのですが、一方で家計の負債残高は8,000億ドルしか減っていません。そのため、住宅市場は低迷し、住宅価格の下落が続いています。この状態にある限り、米国の景気は通常モードの回復には至らないわけです。

これを打開するため、FED(連邦準備理事会)がった政策がQE IIでした。流動性を供給して、そのお金がマーケットを通じて株価を押し上げれば、家計が保有している資産の価値が上昇するため、資産効果で消費を刺激できるだろうと目論んだわけです。

そして、確かにその効果はありました。が、一方で弊害も生じてきました。余ったお金が株式市場だけでなく、コモディティ市場にも向かってしまったのです。結果、ガソリン価格が上昇してインフレ懸念が浮上し、それが消費を抑える形になってしまいました。結局、米国の景気は回復の行方を見極め切れないまま、QE IIが終わってしまったというわけです。

欧州経済はどうでしょうか。

嶌峰氏:

ドイツはバブルが来なかったが故に、負債を抱えていませんでした。そのため、リーマンショック後のユーロ安の恩恵を受けて、輸出ドライブがかかりました。それによって景気は良くなったのですが、それ以外の不動産バブルに沸いた国は、バブル崩壊のあおりを受け、結果的に財政状況が著しく悪化して、現状、揺れに揺れているという状況にあります。

ただECBはドイツ中心に物事を考えるため、利上げに踏み切りました。すると、財政悪化に苦しんでいる国は、緊縮財政の上に金融政策まで引き締められてしまうわけですから、ますます景気は失速してしまいます。景気が失速すれば税収が増えません。結果、たとえばギリシャの今年1~5月までの財政赤字は、昨年1~5月までの財政赤字を上回っています。緊縮財政を採っているのに、財政はむしろ悪化しているのです。

結果、その問題がイタリアにも飛び火して、さらにドイツでも株価が下落してしまったというわけです。欧州の株価は完全に財政問題に振り回されているという状況です。

日本を含むアジアの情勢はいかがですか?

嶌峰氏:

アジアは中国を筆頭にして、インフレへの対応で利上げを行っており、それが景気の減速圧力になっています。中国に限らず、新興国全般に言えることですね。

新興国の場合、全体的にエンゲル係数が高いため、コモディティ価格のなかでも食糧品価格が上昇すると、内需に大きな影響を及ぼします。食べ物を確保するのにより多くのお金を使うことになるため、その他の消費にまでお金が回らなくなってしまうのです。結果、新興国の株価もさえない動きになっているのです。

そして日本ですが、震災の影響によって各国の動きから離脱する形で株価が大きく下げ、それが買い戻されて現在に至っていいます。年後半には復興需要やサプライチェーンの復活によって、日本の景気は良くなると考えられていますが、問題は政策の先行きが見えないこと。そして、各国の景気がどうも怪しい状況になっていることから、やはり株価が上値を狙えない状態にある、というのが現状です。

そうなると、各国の今後の株価を見るうえでは、何に注目すれば良いのでしょうか。

嶌峰氏:

一番大事なのは各国の政策対応です。米国の場合、流動性供給を止めた後に株高が維持されなければ、資産効果が剥落して消費が落ちてしまいます。消費が落ちれば景気が後退するというのが米国経済ですから、そこでFEDが追加の対応が採れるかどうかがカギを握ってきます。ただし、インフレへの対応は必要ですから、コモディティ市場にお金が流れない仕組みを考えなければなりません。欧州はひたすらギリシャなどをいかに救済できるかという問題ですし、新興国はさらに利上げができるかどうかがポイントになります。

特に新興国については、実質金利が極めて低水準です。各国の政策金利から各国のインフレ率を差し引いた実質政策金利は、半分くらいの国でマイナスです。つまり、インフレ率が非常に高いのです。この状態だと景気は過熱したままですし、インフレは落ち着きません。

これをそれぞれ解決できるかどうかで、景気がどうなるか決まってくるので、それにともなって株価の動向も見えてくる、ということになります。


各国ともそれぞれ難しい問題を抱えているように見えるのですが、それぞれの政策の実現可能性という点はいかがですか?

嶌峰氏:

一番信頼性の高いのは、やはり米国でしょう。というのも、バーナンキFRB議長は、今の米国景気が不完全な状態にあるということを認識していますから、追加の政策に踏み切る可能性は高いと思われます。

ただ、先ほども申し上げたように、問題はコモディティ市場にお金が流れないような仕組みを作れるかどうかということですが、これについても、すでにいくつかの方法が試されています。

たとえば、ゴールデンウィーク明けに銀価格が暴落しましたが、これは銀の先物取引の証拠金率を引き上げたからです。つまり投機的な動きを封じ込めようとしたわけです。その効果は絶大でしたが、銀が暴落したことで、他のリスク資産からも手を引く動きが生じ、結果的に株価の下落を招くことが分かりました。

また、原油価格を抑えるためにOPECに増産要請をしたら断られ、IEAを通じて各国の備蓄を放出しようということになりましたが、これは数日しか効果がないということが分かりました。

このように、さまざまな試みを通じて、今、何が最も効果的なのかということを探っている段階にありますから、いずれそこで上手い方法が見つかれば、QE?に踏み切ることになると思います。

問題は欧州です。問題国が財政赤字を削減しようとしてはいるのですが、金融政策と通貨政策に自由度が全くないため、状況が改善しないわけです。しかも緊縮財政を行おうとしても、その効果が見られないということは、ギリシャの例を見ても、分かったと思うのです。すると、あとどうするかといえば、方法は2つに1つしかありません。つまり、救済するか、それともユーロから離脱するか、ということです。

救済するには借金棒引き、つまり国債の償還に必要な資金を手当てするということですが、これを実行すると格付けが下がります。あるいは、民間金融機関の借金を棒引きすることになれば、その金融機関の格付けも大きく下がり、リーマンショックのような金融不安を高める恐れがあります。したがって残された方法は、公的資金の投入しかありません。各国が世論の反発を抑えて、各国の税金でギリシャなどの救済が出来るかどうか。ここが大きなポイントになります。

結局、ユーロ経済圏の財政を統合しろ、という話になるのですが、これまた非常に難しい問題で、過去の歴史などから考えても、財政まで統合するのは不可能でしょう。つまり、欧州経済は当分の間、大いに揺れ動くことになります。

当然、為替レートにも大きな影響を及ぼすことになる?

嶌峰氏:

そうですね。2000年以降、米国が低金利政策を余儀なくされるなかで、米ドルの信認が後退し、一部の資金がユーロに流れました。ところが、今度はユーロの信認が揺らいでいますから、その後はどこにお金が流れるのかという問題が浮上してきます。

スイスフランは安定していますが、外貨準備などの多額の資金を運用するには、あまりにも器が小さい。それなら人民元などの第三勢力は、ということになりますが、人民元などの新興国通貨は、通貨の自由化が行われていないため、やはり運用先として望ましくない。

結果的に、円に流れてくる可能性はあるでしょう。日本経済自体、本格回復というには、ほど遠い状況ではありますが、他の国との比較感でいえば、相対的に安心感があるということだと思います。

景気が過熱状態にある新興国経済の問題点は?

嶌峰氏:

やはりインフレリスクが高いということでしょう。来年は中国で政権交代が行われるため、しばらく政治的にはゴタゴタしそうですし、金融政策が後手に回るようなことになれば、さらにインフレが加速して、それが景気に大きなマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。

したがって、来年は新興国を中心として、その政策対応がどうなるのかというのが、改めて注目されることになるでしょう。

ただ、長い目で見れば、やはり新興国は今後、世界の需要の中心になるのは、間違いないと思います。これまで世界中からさまざまなモノを購入してくれた米国は、かつてのように借金をしてまで消費しなくなりますから、新しいお客さんを探さなければなりません。そうなった時、人口が非常に多い新興国は魅力的なマーケットになります。その一方で、新興国における需要の爆発は、資源・エネルギー問題を深刻化させることになりますが、ここに省エネ・環境関連で世界をリードしている日本の強みがあります。

とはいえ、日本の場合、それを企業の力だけで行っているところに限界があります。この分野で日本がリードを保つためには、やはり政策の後押しが必要なのですが、今の民主党政権は、その絵を描くことができません。このままだと、気が付いたら日本のリードが失われ、他の国に主導権を握られるということになりかねません。

世界の株式市場に投資する場合、どのような視点で投資判断を下せば良いのでしょうか。

嶌峰氏:

短期、中期、長期で注目すべき材料が変わってきます。短期なら目先の政策の動きが注目点になります。たとえば、欧州の財政政策は限界があるので、それが株価に悪影響を及ぼすという観点から、欧州株を売ってみる。2~3年の中期なら、新興国のインフレリスク問題があるので、むしろ政策面で信頼感のある米国に投資してみる。そして10年以上の長期なら、やはりグローバルな成長モデルが注目されるので、中国などは有力な投資対象になるでしょう。また、中国にモノを売って利益を上げている国ということを考えると、韓国や台湾、タイなども候補に挙げられます。

今後、グローバルな投資を行うのであれば、このように、期間を分けて政策面に注目し、どのマーケットを狙うのかを考える必要があります。


Fanet MoneyLife(掲載日:2011年08月12日)


嶌峰 義清(しまみね よしきよ)

経歴

第一生命経済研究所 首席エコノミスト
青山学院大学経済学部卒
90年岡三証券入社。岡三経済研究所を経て、92年日本総合研究所入社。この間、エコノミストとして各国経済を担当。
93年より日本経済研究センターへ1年間出向。
94年以降、日本総合研究所へ戻った後は、米国経済・金融市場動向を担当。
1998年5月より現職。米国経済担当、日本経済担当等を経て、現在は金融市場全般担当のエグゼクティブチーフ・エコノミスト。
日本ファイナンス学会会員

 
   
    

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