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櫨浩一氏 2012年の日本経済はどうなる? - インタビュー - FX・CFD

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FX・CFD [インタビュー]

【第9回】櫨浩一氏

2012年の日本経済はどうなる?

3.11の大震災、1ドル=75円台前半まで進んだ超円高、相変わらず続くデフレ経済など、2011年の日本経済は、非常に厳しい局面に追い込まれました。また外部環境では、ユーロ危機の影響を受けて、日本の輸出が伸び悩むという問題も浮上。果たして、2012年の日本経済はどうなるのでしょうか。ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの櫨浩一氏に、来年の日本経済の行方を伺いました。


2012年の世界経済を見るうえで、注目すべき点はどこにありますか?


ニッセイ基礎研究所
チーフエコノミスト 櫨浩一氏

櫨氏:

まず米国ですが、リーマンショック後に思い切った金融政策を行いましたが、景気はなかなか回復軌道に乗りません。何しろ失業率が高止まりしています。雇用問題による先行き不安は、しばらく続くでしょう。

欧州については、やはりユーロ危機がどう終息に向かうのかということです。ギリシャだけに問題が留まらずに、ポルトガルやスペイン、あるいはイタリアにまで広がるのかどうか。当然、広がれば世界経済はパニックに陥るでしょう。

新興国については、インフレ懸念があります。ユーロ危機でリスク回避の動きが強まり、それまで新興国に流れていた先進国のマネーが、引き揚げる動きを見せています。この動きが加速すると、新興国の通貨は大幅に下落し、更なるインフレ懸念につながる恐れが生じてきます。

こうしたなかで、相対的に経済が良い方向に好転しそうなのが、実は日本です。というのも、2012年から本格的に、3.11の復興需要が出てくるからです。長期的には20数兆円の資金が出てくるはずなので、2012年の日本経済は、他の国に比べて相対的に堅調な推移が期待できそうです。

以上が、国・地域別に見た注目点ですが、共通する問題としては「政治問題」が挙げられます。日本でも与野党の間で政治的軋轢が高まっていますが、米国も同様です。ティーパーティという過激な政治思想を持った集団が、政策の行方を握っていることに加え、2012年は大統領選挙の年ですから、民主党、共和党ともに政策面では一歩たりとも譲れない状況が続くでしょう。

欧州もギリシャ問題という大きな問題を抱えていますが、どうしても各国の利害対立が生じるため、物事が上手く進みません。

先進国については特に、こうした政治問題がどのような形で解決に向かっていくのかということに注目するべきでしょう。

10月31日のオーストラリア市場で、円の対ドルレートは、1ドル=75円32銭という戦後最高値を更新しました。今後、どうなるでしょうか。

櫨氏:

結局、円が買われているのは、日本に対する相対的な安心感があるからです。米国経済はしばらく立ち直る気配が見られず、失業率は高止まりしていますし、欧州経済はギリシャ問題を抱えて、いつ金融不安が再燃するか分からない状況です。

この点、日本経済はデフレによって停滞していますが、目先、経済が危機的な状態に陥るような悪材料がないため、逃避通貨のひとつとして買われています。

日本経済の何が相対的な安心感につながっているのかということですが、それは経常収支の巨額な黒字です。経常収支は、モノの輸出入などの収支尻を示す貿易サービス収支と、海外への投融資による収支尻を示す所得収支に分かれていますが、このうち貿易サービス収支については、月間ベースで赤字になる月が出てきました。

一方、所得収支は、大幅な黒字を計上しています。これは、250兆円とも言われる対外純資産があるからです。つまり、海外にある資産から入ってくる配当金、利子などが巨額に上るため、所得収支が大幅な黒字になり、結果的に経常収支の黒字が維持されているのです。

海外経済の状況が悪化した結果、円に対する買い安心感が相対的に高まり、1ドル=75円32銭という対ドルでの戦後最高値を更新したわけです。このように円が買われる状況がいつまでも続くという保証はありませんが、日本発の財政危機、通貨危機が起こらずに、何とかここまで来ているのは、この巨額な経常黒字と、それを支える250兆円の対外純資産があるからです。

したがって、経常収支の黒字がある限り、円高圧力は拭えないということになりますが、一方で日本は財政赤字の問題も抱えているので、そのリスクをしっかり認識する必要があります。

日本の財政問題は危険水域に達しているのでしょうか。

櫨氏:

いつまでも今の財政運営を続けていると、必ずどこかで問題が噴出します。

日本国債の安全性を主張する人のなかには、「日本国債は海外投資家の保有比率が低いので安心」という方もいますが、本当でしょうか。

確かに、個人金融資産が非常に分厚い今の状況ならば、それも頷けますが、将来2050年頃になって人口の40%が高齢者という時代が来たら、高齢者の金融資産の取り崩しが一段と進み、国内だけでは国債のファイナンスが出来なくなる可能性が高くなります。そうなった時には、海外投資家の資金を当てにしなければならなくなります。今の巨額の財政赤字を抱えている限り、いずれ海外投資家の力を借りる時が来るということを、しっかり理解するべきです。

また、国債を大量に購入している銀行は今、企業への融資をそれほど積極的に行っていないため、金余りの状態にあります。結果、余った資金の運用先として日本国債を購入しているわけですが、この状態がいつまでも続くとは思えません。今、どんどん日本国債を買い続けている投資家が、近い将来、国債不安が高まった時、それでも日本国債を買い続けてくれる保証は、どこにもないのです。

日本の財政事情は、非常に不安定な状態にあるのは事実です。果たして、いつこの時限爆弾が爆発するのかという点については、正直、よく分かりません。対GDP比で財政赤字の比率を見たり、個人金融資産の額を上回るかどうかで財政赤字のファイナンス可能性を判断したりすることはできますが、国債発行に関する明確な限界がないので、どうしても歯止めが効かなくなる恐れがあります。ある日、誰かが「危ない」と思って保有している日本国債を売り始めた時、日本の財政危機が顕在化するのです。

日本のデフレ経済はどうなるのでしょうか。

櫨氏:

長い目で見れば、日本はデフレが続いてくれて良かったと思う時が来るでしょう。今の日本の財政赤字を見ると、デフレによって低金利が続いているからこそ、何とかなっていると考えることができます。

逆に、デフレから脱却したらどうなるでしょうか。デフレから脱却するということは、物価が上昇することを意味します。すると、金利は当然、物価上昇に合わせて上昇傾向をたどります。国債の利回りも上昇するでしょう。

政府は国債の購入者に対して、利息を支払います。長期金利が上昇するということは、利払いが増えることを意味しますから、金利水準が上昇すれば、利払いのためにより多額の借入れが必要となり国の負債はどんどん膨らんでいきます。

「デフレから脱却するためにはインフレにすれば良い」といった話が出てきますが、それほど単純な話しではないでしょう。大事なのは、デフレにも利点があり、インフレにも欠点があるということを認識することです。


2012年の日本経済はどうなるでしょうか。

櫨氏:

2011年は震災の影響もあって、非常に厳しい1年でした。国内要因だけを考えれば、2012年はより高い成長率が期待できそうです。

気になるのは海外要因です。ギリシャ問題が深刻化し、その他の国々にも悪影響が波及するようなことになれば、2012年の成長率は押し下げられてしまうでしょう。

ただ、前述したように震災復興需要がありますから、欧米諸国に比べれば、まだ日本はマシと言えるかもしれません。その相対的な優位性から、さらに対ドルでは円が買われる可能性もあります。しかし今後は、対ドルだけで円レートを見るのではなく、対人民元や対韓国ウォンなどで、円レートを見ることも大事になってきます。というのも、これからの日本経済にとっては、対米貿易よりも、対中国貿易、対韓国貿易など新興国との貿易や競争の方が、重要になってくる可能性が高いからです。

日本経済が今後、新たな成長ステージに立つためには、成長戦略が求められます。この成長戦略について、政府はTPPへの参加や、構造改革、あるいは新興国への輸出促進などによる活性化を目指していますが、私は別の形の成長戦略もあるのではないかと考えています。

それは、国内需要の掘り起こしです。医療や介護、教育、子育てなどの分野は、確実に需要があります。ただ、これまではいずれも政府が税金を使って国民に提供してきたサービスばかりなので、細かいニーズを汲み切れていません。そこで、民間のサービスをもっと積極的に活用することで、新たな需要を掘り起こしていけばよいのです。

今後、さらに円高が進めば、日本の輸出企業はもう一段、グローバル化を進めざるを得なくなります。つまり、日本国内にある生産拠点を、海外に移転させていくことになるわけですが、このような状態が続けば、日本国内の雇用はどんどん失われていきます。その問題を解決するためにも、国内需要を掘り起こすことに重点を置いた、新たな成長戦略を策定する必要があるのです。


Fanet MoneyLife(掲載日:2011年12月13日)


櫨浩一(はじ こういち)

経歴

・ 1981年:経済企画庁(現在の内閣府)入庁
・ 1992年:ニッセイ基礎研究所入社
・ 2007年から現職
主な著書
『 貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる―』(執筆)日経ビジネス人文庫 2011年
『 日本経済が何をやってもダメな本当の理由 』(執筆) 日本経済新聞出版社 2011年
『 変貌する投資環境と年金資産運用 』(部分執筆) (財)年金シニアプラン総合研究機構 2010年
『 日本経済の構造変化と景気回復 』(部分執筆) 日本評論社 2009年
『 図解 20年後の日本 -暮らしはどうなる?社会はどうなる?-』(一部執筆) 日本経済新聞出版社 2009年
『 プロ人材になる 5つの仕事力 』 (部分執筆) プレジデント社 2007年
『 貯蓄率ゼロ経済-円安・インフレ・高金利時代がやってくる- 』 日本経済新聞社 2006年

 
   
    

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