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吉田恒氏 2012年の米ドル、ユーロの行方 - インタビュー - FX・CFD

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FX・CFD [インタビュー]

【第10回】吉田恒氏氏

2012年の米ドル、ユーロの行方

2011年は、秋口からのユーロ危機に翻弄される相場展開が続きました。ユーロ債務危機が高まると、外国為替市場ではリスクオフの円買いになり、米ドル/円は一時、1ドル=76円を割り込む水準まで円高が進みました。
 この間、日本国内では急激に進んだ円高の影響を受けて、デフレと景気低迷が深刻化しました。輸出企業を中心とした経済構造を持つ日本にとって、円高は企業業績に大きく響きます。果たして、2012年の外国為替相場はどうなるのか。M2J FXアカデミア学長の吉田恒さんに話を伺いました。


2012年、円高ドル安に歯止めはかかるのでしょうか。


M2J FXアカデミア学長
吉田恒氏

吉田氏:

私は、米ドル高が進むと見ています。というのも、円高が進んでから相当の時間が経過しているため、日柄的にもそろそろ円安ドル高に転じてもおかしくないところに来ていると考えているからです。

過去20年間で見ると、円高ドル安局面は今回も含めて4回ありました。

1回目は1990年4月から1995年4月までの5年にわたって続いた円高局面で、この時は1ドル=160円から80円まで、実にドルは対円で50%も下落しました。

2回目は1998年8月から1999年11月までの1年3カ月にわたる円高局面。この時は1ドル=147円から101円まで、31%のドル安になりました。

3回目は2002年1月から2005年1月までの3年にわたる円高局面で、1ドル=135円から101円まで、25%のドル安になりました。

では今回はどうかというと、円高局面は2007年6月の1ドル=124円からスタートし、仮に2011年10月につけた1ドル=75円がドルのボトムだとすると、4年4カ月にもわたっています。今回は除いた過去3回の円高局面では、平均で3年1カ月、円高が続き、この間に米ドルは対円で35%下落しています。今回は39%のドル安ですから、過去の平均値と比べると、持続期間、下落率ともに過去の平均値を大きく上回っています。

したがって、この円高はいつ終わってもおかしくありませんし、仮に過去最大の円高ドル安記録に並んだとしても、2012年の半ばには終わると見てもおかしくないのです。

しかし、米国はまだしばらくゼロ金利政策を続ける可能性がありますし、そうなるとなかなか米ドルが積極的に買われるという環境にはならないのではないでしょうか。

吉田氏:

確かに、米ドル/円のこれまでの推移を見ると、FRBの利上げは必要不可欠といっても良いでしょう。実際、過去の日米政策金利の差と円ポジションの動きを比べると、米国の政策金利が日本のそれを大きく上回っている状況の下で、継続的な円売り・米ドル買いが生じています。

つまり、現在のように日米の政策金利差がほとんどない状況のもとでは、継続的に円安ドル高が進む余地はほとんどないのです。

では、FRBは当面の金融政策をどのように考えているのでしょうか。バーナンキFRB議長は、2013年の半ばまで、現行の超低金利政策を続けると言っています。それは、米国の景気が非常に悪く、日本と同様にデフレ経済に陥るリスクを完全に否定できないということから出た、バーナンキ議長の発言だったわけですが、私は正直この状態が2013年半ばまで続くとは思っていません。  

前述したように、2012年が円安ドル高に転じる年だとするならば、その時までにはバーナンキ議長が豹変して、現行の超低金利政策が間違いであることを認め、金融引締め政策に転じる必要があります。

その可能性はあるのでしょうか。

実は現在、すでに利上げ前夜のような状況になってきた要素が見られます。米国の失業率と、米国の政策金利であるFFレートを重ねてみると、面白いことが分かります。ちなみに失業率は、失業率の名目値から過去10年間の平均を引いて計算した「修正失業率」ですが、両者は非常に似たような動きをします。つまり、修正失業率が低下すると、それにともなってFFレートの上昇余地が高まるというものです。ちなみに現在はゼロ金利政策が取られていますから、FFレートの推移は横ばい続きなのですが、2011年12月に発表された同年11月の失業率が8.6%まで一気に低下したことから、FFレートには上昇余地が生まれてきました。

とはいえ、FOMCの失業率見通しでは当面、失業率が8.6%から急速に低下することはないという見方が中心的です。失業率が改善されない以上、利上げは難しいのではないでしょうか。

吉田氏:

米国の政策金利はFOMCと呼ばれる会合で決められているのですが、2011年11月に公表したFOMCメンバーによる失業率見通しによると、米国の失業率は2012年末になっても、そう大きくは改善しないということになっています。数値的に言うと、2012年末で8.5~8.7%、2013年末でも7.8~8.2%程度までしか下がらないということです。

つまり、失業率の低下に期待できないから当面は利上げをすることができないということなのですが、注目していただきたいのは、果たしてFOMCの失業率予想が、どこまで的確なのかということです。

というのも、FOMCは2011年6月末時点まで、2012年末には失業率が、利上げ可能とされる8%前後まで低下するという予想が中心だったのです。それを修正した結果、2012年末で8.5~8.7%という失業率予想が出てきたわけですが、これは失業率の見通しがはずれたFOMCが、その見通しを修正したからといって、必ず当たるとは限らないということになります。

したがって、バーナンキ議長が2012年中に景気の先行きについて悲観的な見方から楽観的な見方に切り替えていく可能性が全くないとは、誰も言えないでしょう。恐らく、2012年中にバーナンキFRB議長は、「2013年半ばまで利上げはしない」という前言を撤回して、利上げに踏み切る可能性を示唆してくる可能性は高いと思われます。

米国内では「ジャパナイゼーション」の懸念が示唆されていましたが、そのリスクは無くなったと見て良いのでしょうか。

吉田氏:

一時は、米国経済のジャパナイゼーションが懸念されていました。ジャパナイゼーションというのは、利下げを行っても一向に景気が上向かず、デフレスパイラルに陥ってしまった今の日本経済と同じことが、米国経済にも生じることを指しているのですが、このような状態にはならないと見ています。

たとえば、日本でバブル経済が崩壊した1990年からのインフレ率の推移を見ると、ただひたすら低下傾向をたどっていきました。デフレ経済に陥ったのですから当然です。

これに対して米国のITバブル崩壊後の物価動向を見ると、確かにバブルが崩壊して4年目くらいまでは、日本の場合と同様、インフレ率は低下の一途をたどったのですが、4年が経過したところからインフレ率の低下は底を打ち、上昇へと転じていきました。

そして、2007年にサブプライムショックが起こって以降の米国の物価動向を見ると、やはりITバブル崩壊時と同じように、ほぼ4年間で底を打ち、上昇する兆しを見せています。つまり、米国経済のジャパナイゼーションはないと見るのが妥当なのです。


どうして、4年目くらいから物価動向に大きな違いが生じるのでしょうか。

吉田氏:

大きな違いは、やはり為替相場の動向でしょう。1990年からの円の対ドル相場を見ると、バブルが崩壊した後、株価が大きく下落していくなかで、円は対ドルで上昇トレンドをたどっていきました。バブル崩壊から5年ほどが経過した1995年には、1ドル=79円75銭という当時の過去最高値を更新した結果、日本経済は超円高の影響を受けて、デフレ経済に陥ったのです。

これに対して、米ドルの対円レートはどうなったのかを考えてみましょう。米国でITバブルが崩壊した2000年以降の値動きをたどっていくと、確かにITバブルが崩壊してからしばらくはドル高が続きましたが、それは3年程度で収まり、ドル安へと転じていきました。

このように、バブル経済が崩壊した直後にその国の通貨が強くなるのは、リパトリの影響もあると考えられます。国内で経済的なショックが起こった時、多くの国内金融機関は、海外資産を売却して、国内に還流させようとします。その動きが大きな奔流になった時、通貨高が起こります。日米ともに、バブル経済崩壊直後から通貨高になったのは、まさにその影響を受けてのことと考えられます。

ただし、3年程度してから異なる動きになったのは通貨・金融当局のかじ取りの違いがあったからでしょう。日本の場合、通貨供給を一向に増やそうとせず現在に至っていますが、米国は積極的な金融緩和政策を取っており、それにより通貨安が進みました。結果、インフレ率が大幅に落ち込んでデフレ経済になるリスクを避けることができたと考えられます。

ただ、こうしたドル安局面も、徐々に米国の景気拡大と金融引締め政策への転換によって、ドル高へと転じてくるでしょう。2012年の米ドル/円は、1ドル=75~90円のレンジを想定しています。

ユーロはどうなりますか?

吉田氏:

ユーロ債務問題の解決に向けての動きは、まあまあしっかりやっているのではないかと評価しています。実際、イタリア国債が7%の利回りまで売り込まれたのは、単に市場がパニックに陥っただけのことで、実際にはそこまで深刻な状態ではないと見ています。

ただ、ユーロ自体はしばらく売られる状態が続くでしょう。というのも、ECBは当面、利下げを行うと同時に、超低金利政策を長期化させていくと思われるからです。購買力ベースで見たユーロの割高感は、これによって修正されるのではないでしょうか。

ユーロ/円については、過去、1ユーロ=90円割れという水準がありますが、今後、売り圧力が強まったとしても、そこまで売り込まれるようなことにはならないと見ています。ユーロ/米ドルで、1ユーロ=1.1~1.4ドルのレンジで推移するというのが、当面のビューです。いずれにしても、ユーロが大暴落するようなことにはならないと思います。


Fanet MoneyLife(掲載日:2012年02月06日)


吉田 恒(よしだひさし)

経歴

M2J FXアカデミア学長
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長、また、投資情報事業を展開するT&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役などを歴任。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。
国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的におこなっている。
主な著書
「さよなら円高」「YENの悲劇」(ともに廣済堂出版)
「投資に勝つためのニュースの見方、読み方、活かし方」(実業之日本社)
「FX7つの成功法則」(ダイヤモンド社) その他多数

 
   
    

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