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尾河眞樹氏 円安はいつまで続く? - インタビュー - FX・CFD

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FX・CFD [インタビュー]

【第13回】尾河眞樹氏

円安はいつまで続く?

2月に入ってから、円は米ドル、ユーロなど、主要通貨に対して下げ足を速めています。欧州債務危機が一服したことに加え、日銀が量的金融緩和に踏み切ったこと、米国の経済指標が好転したことなどがその理由です。この動きは今後も続くのでしょうか。シティバンク銀行為替アナリストの尾河眞樹氏に、今後の為替動向を伺いました。


欧州の債務問題は一段落したと見て良いのでしょうか。


シティバンク銀行シニアFXマーケット
アナリスト尾河眞樹氏

尾河氏:

これまで先送りが繰り返されてきたギリシャの二次支援問題について、一応の決着を見たということで、マーケットではリスクオンのムードが強まっています。結果、ユーロは2月中を通じて米ドル、円に対して上昇してきました。

ただ、ギリシャの二次支援が決まり、無秩序なデフォルトに陥るリスクが目先、回避されたといっても、まだ安心はできません。欧州債務問題は、結局のところ国の財政赤字を減らしていかない限り、根本的な解決とは言えないのですが、現状、ギリシャの債務削減は、当初のプラン通りに進んでいませんし、ポルトガルの債務残高も、対GDP比で見ると、増加傾向をたどっています。そのため、マーケットでは再びポルトガル国債に不安定な動きが出てきました。

確かに、ギリシャの二次支援決定は、欧州債務問題について大事な第一歩なのですが、恐らくこれですべてが解決へと向かうことはないでしょう。ポルトガルについても追加支援が必要だということになれば、欧州債務問題の先行きに、再び暗雲が広まることになりそうです。

となると、今のリスクオンの状態も長続きはしないということですか?

尾河氏:

2月を通じて、株価が上昇し、高金利通貨が買われ、さらにユーロの買い意欲が高まったのは、まさにリスクオンのムードが強まったからに他ならないのですが、それはまさに欧州中央銀行(ECB)のお陰といっても良いでしょう。

ECBは昨年12月に、3年物の資金供給オペを実施しました。この時の金額は、米国のQE II(量的金融緩和第2弾)に匹敵する規模でしたが、QE IIが半年かけて資金供給を行ったのに対し、ECBの資金供給オペはわずか1日で行われました。これだけ短期間のうちに多額の資金供給を行えば、当然、銀行の資金繰りは改善しますし、金融不安も大幅に後退します。しかも、2月29日には第二弾の資金供給オペが実施されましたから、さらにリスクオンのムードが強まってきました。

この資金供給オペは、ECBが欧州の銀行に対して資金を供給することにより、欧州の銀行がユーロ圏の国債を買い入れやすくすることに目的があります。これは、ECBがユーロ圏の重債務国の債務を間接的に支えていることに他なりません。1月に入ってから、ユーロ加盟国の国債入札は比較的堅調ですが、これもすべてECBの資金供給の賜物です。

ただ問題は、こうした資金供給がいつまで続くのか、ということでしょう。ECBの資金供給には自ずと限界がありますし、そもそもECBはドイツの出資比率が高いので、かつてのブンデスバンクの流れを汲んで、インフレファイター的な政策を強く打ち出してくる傾向が見られます。つまり、インフレの原因となり得るような、野放図な資金供給を続けるようなことはしないと思われます。

したがって、今のマーケットに漂っているリスクオンのムードは、非常に足腰の弱いものと考えるのが妥当です。

ユーロの債務問題はまだ予断を許さないということですか?

尾河氏:

今、ユーロ加盟国がするべきことは、ECBの資金供給によって時間稼ぎをしている間に、債務国は自国の財政赤字をきちっと削減していくこと、銀行はいざという場合に備えて資本の増強を行うこと、そしてEFSFの流れを引き継ぐESMというセーフティネットの詳細をきちっと詰めることだと思います。それが出来て初めて、欧州債務問題に解決の糸口が見えてきます。

このうち欧州通貨制度(ESM)については、今後の話し合いで決めていくことですから、出来るだけ有効なスキームを作ってもらいたいとしか、現状では言いようがありません。

銀行の資本増強については、マーケットからの調達が困難な場合は国が支援し、それでもダメな場合はEFSFが支援するという二段構えのセーフティが構築されているので、何とかなると思います。

問題は、やはり債務削減でしょう。しかもユーロ経済圏の景気が冷え込んでいるので、税収減によって、なかなか債務削減がスムーズに進まない恐れがあります。この部分の懸念が強いので、恐らく今年中にも、この問題がマーケットでクローズアップされ、ひやっとする場面もあるでしょう。

実際、ポルトガルなどは、昨年5月の資金援助の際に提出した債務削減プランの進捗状況が、いささか遅れ気味ということもあり、下手をするとギリシャ化する恐れがあります。国債利回りも13%に乗せてきていますし、このままポルトガルの債務問題が深刻化すれば、次にスペイン、そしてイタリアというように、懸念が再び広まっていくことにもなりかねません。

2月中のユーロ高は、一時的な動きですか?

尾河氏:

今のリスクオンが、本当のリスクオンではないとするならば、早晩、ユーロは下げに転じる可能性があります。

それに、米国のQE I(量的金融緩和第1弾)、QE IIを通じて大量の米ドルを市場に放出した後、どういうことが起こったのかを考えれば、ユーロの先行きも何となく見えてくると思います。昨年12月、そしてこの2月という2回にわたって行われた資金供給オペによって、米ドルと同様、大量のユーロがマーケットに放出されていますから、長い目で見れば、ユーロ安要因です。

つまり、ユーロの債務問題が再燃すれば、リスクオフの動きになってユーロが売られますし、仮にユーロ債務問題が一段落したとしても、その頃には大量のユーロがマーケットに溢れていますから、構造的にもユーロは下げやすい環境にあるのです。


対円で見ると、ユーロとともに米ドルも上昇しています。米ドル高の理由は?

尾河氏:

想像した以上に米ドル高のスピードが速いというのが、正直な印象です。これには2つの理由が考えられます。

第一に、米国の経済指標が改善してきたこと。第二に、日銀の金融緩和がサプライズと受け止められたことです。

特に日銀の金融緩和政策については、まさにサプライズでした。国債の買い入れ額を10兆円分増額することもそうですが、物価上昇率について1%を「目標」とするのではなく、「目途」としたのが大きかったと思います。1%を目途とすることによって、マーケット関係者は「物価上昇率が1%になるまで金融緩和を継続する」という意味として受け止めたのです。言うなれば、インフレターゲット的な政策を打ち出してきたということです。

実際、この日銀の発表を受けて、IMMポジションはそれまで円の買い越しが大きく膨らんでいましたが、それが半分くらいまで減少し、それにともなってドルを買い戻す動きが広がりました。


ドル高は今後も続きますか?

尾河氏:

ドルが本格的な上昇トレンドに向かうためには、やはり日米の金利差が必要になります。米国の金利が上昇傾向をたどることによって、日米の金利差が拡大すれば、ドル高もしっかりしたものになるでしょうが、両国とも金融緩和を続けているなかでは、一時的なポジション調整で終わってしまう可能性もあります。

実際、米国は「2014年後半まで金融緩和を継続する」という見方を公表しました。つまり米国の経済成長がよほど加速しない限り、当分の間利上げに踏み切ることはないということですので、ドル高を支える根拠として米国の金利上昇に期待することはできません。となると、日銀の金融緩和がどこまで本気なのか、ということにかかってきます。国債の買い入れ額を増額したことで、マネタリーベースを増やすことができれば、円安を通じたもう一段のドル高にも期待できます。

再び円高が加速することはありませんか?

尾河氏:

もちろん、ここから一方向にドル高が進むことはないでしょう。かといって、円が最高値を更新するような円高にもならないと見ています。

もし、ドルが売られるとしたら、今年の6月前後と見ています。今は米国の景気が回復基調にあり、内需も強い状態にありますが、ひとつ懸念される材料として、原油価格の高騰が挙げられます。原油価格の高騰がガソリン価格に反映されるのは、まだ先ですが、恐らく4~6月期のGDPで、ガソリン価格の上昇が個人消費の頭を抑え、景気減速につながるサインが見えてくると思います。ツイストオペも6月末に終わりますので、この時点で景気減速懸念が強まっていたら、QE III(量的金融緩和第3弾)の可能性も浮上してきます。当然、QEIII実施ということになれば、再びドルは売られるでしょう。

とはいえ、今の米国経済はほぼデフレ懸念から脱してきているので、QE IIIが現実化する可能性は、かなり低いと見ています。いずれにしても、長期的なビューとしては、やはりドル高でしょう。日本の貿易収支も赤字額が増えているので、円売り圧力が強まる可能性があります。

また、米、日、欧という主要国・地域が積極的な金融緩和を行った結果、ジャブジャブになったお金がどこに向かうのかということも、今後の注目点です。恐らく、この手のお金は高金利通貨へと向かうのでしょう。なかでも豪ドルなどは、国のファンダメンタルズが堅調ということもあり、買われる可能性が高いと見ています。


Fanet MoneyLife(掲載日:2012年03月26日)


尾河眞樹(おがわ まき)

経歴

シティバンク銀行 個人金融部門個人金融商品統括本部投資調査部バイスプレジデントシニアFXマーケットアナリスト
米系銀行や国内輸出企業財務部での為替関連業務を経て、現在はシティバンク銀行で個人金融部門のアナリストとして活躍。

 
   
    

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