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東京金融取引所 岡田貴司氏に聞く「急激な相場変動で有効に機能したロスカットのメリット」 - CFD

 

FX・CFD [東京金融取引所 くりっく株365インタビュー]

東京金融取引所 岡田貴司氏に聞く

急激な相場変動で有効に機能したロスカットのメリット

3月11日、東北地方を中心に未曾有の被害を出した東北地方太平洋沖地震。その影響は、震災による直接被害に加え、福島での原発事故を招きましたが、同時に、金融市場でも急激な相場変動が生じ、一部の投資家は大きな損失を抱えました。
 特に先物・オプション取引をはじめとする「証券デリバティブ取引」では、損をした投資家が追証を払うことができず、証券会社が損失負担をせざるを得ないという状況も生じました。
 ところが、同じ証券デリバティブ取引のなかでも、東京金融取引所が扱っている「くりっく株365」は厳格なロスカット・ルールが設けられていたため、損失が大きく拡大するのを未然に防ぐことができました。
 今回は、東京金融取引所営業部リテール営業株価指数グループ長の岡田貴司氏に、くりっく株365のリスク管理を中心に、お話を伺いました。


震災直後の日経平均株価の値動きを見ると、週明け14日が前週末比で634円安。さらに15日には、前日比で1,015円という大幅安になりました。この間、特に証券デリバティブ取引を行っていた個人投資家のなかには、かなりの損失を抱えた方もいらっしゃったようですね。


東京金融取引所営業部
リテール営業株価指数グループ
長岡田貴司氏

岡田氏:

すでにネット証券会社のなかには、本来、投資家が負担すべき追証を払い込むことができずに、決算で損失計上するところが複数出てきています。

特に、少額の証拠金で大きな取引ができる証券デリバティブ取引では、多額の損失が発生しました。従前、証券デリバティブ取引にはロスカットという概念がないため、急激に株価が下落する局面において、顧客が取引を行うために証券会社に預けてある証拠金以上の損失が発生してしまったわけです。

ロスカット・ルールがあれば、そこまで損失が拡大するリスクを回避できるわけですか?

岡田氏:

ロスカット・ルールというのは、要は顧客が預けてある証拠金を上回る損失を被らずに済むために設けられている制度です。損失がどこまで膨らんだ時にロスカットが発動されるかは、取扱会社によって異なりますが、たとえば「有効比率が100%」になったところがロスカットの基準だとしましょう。

有効比率というのは、次の式で求められます。

有効比率=有効証拠金額÷必要証拠金額×100

たとえば、証拠金として9万円を預け、そのうち4万5,000円を使って、日経225証拠金取引を1枚買ったとします。1枚の取引金額は株価×100ですから、日経平均株価が9,500円の時だと、95万円相当を買っていることになります。

ところが、買った後に値下がりし、日経平均株価が9,050円になったとしましょう。ということは、評価額が95万円から90万5,000円になったことを意味します。つまり4万5,000円の評価損が発生しています。

有効証拠金額は、実際に預けた証拠金額から評価損益を加減しますから、この時点の有効証拠金額は、

9万円-4万5,000円=4万5,000円

になります。この状態で有効比率を求めると、

4万5,000円÷4万5,000円×100=100(%)

ということになりますから、この時点でロスカットが発動されます。

ロスカットが発動されると、速やかにポジションが清算されます。上記の場合でも、当初預けた証拠金は9万円ですから、その全額を失う前に、強制的にポジションが清算されるのです。

預けた証拠金額を超える損失は生じないということですね。

岡田氏:

その通りです。株価指数先物取引の場合、強制的にロスカットしてくれる機能がないため、今回のように大きな相場変動に見舞われると、想定を大きく上回った損失を被ることになります。株価指数先物取引の場合、一定水準以上に損失が拡大した時には、追証(おいしょう)といって、証拠金の担保余力を強化するため、追加で証拠金を納める必要があります。

もちろん、そこまで損失が拡大する前に、自分で損切りを行うのが望ましいのですが、今回のように急激な相場変動が生じると、たまたまその時間帯はマーケット動向をウォッチできなかったといった場合には、損失の拡大を甘受しなければなりません。その損失額も、自分の資産の範囲内で補える額であれば問題ありませんが、3月15日にかけて大きく株価が下落した局面では、それこそ自分がこれから働き続けて返済するにしても、とても追いつかないくらいの損失を被った投資家もいたと聞いています。考えてみれば、とても怖い話です。

現在、くりっく株365を扱っている取引業者の数は7社ですが、いずれも、ロスカット・ルールは設けているのですか?

岡田氏:

はい。ロスカット・ルールを設けるというのは、くりっく株365の取引業者に加わっていただく際に、取引業者には皆、義務づけられています。

ロスカット・ルールというのは、個人投資家が預けた証拠金を超えるような損失を被らないようにするために作られた制度ですが、実は投資家保護とともに業者保護を行うためのものでもあるのです。

ロスカット・ルールがない状態で、マーケットが一方向に大きく動いた場合、なかには大きな損失を被る投資家が出てきます。しかも、レバレッジを極大化していた状態で、株価指数先物取引などのような証券デリバティブ取引のポジションを持っていると、あっと言う間に損失額が膨らんでいきます。

もちろん、その損失分をきちっと穴埋めできるなら問題はありませんが、今回の相場急変でも見られたように、あまりにも損失額が大きく膨らんでしまったがために、自分の損失をカバーできなくなった人が出てくると、その損失は最終的に、証券会社などが背負うことになります。それは、業者の信用リスクの高まりにもつながってしまいます。

ですから、ロスカット・ルールというのは、決して投資家保護だけに重点を置いたものではなく、業者の信用リスクを高めてしまうことを、未然に防ぐという狙いもあるのです。


くりっく株365では、ほぼ24時間取引を実現しています。これもリスク管理という点では、非常に有効だったのではありませんか?

岡田氏:

そうですね。やはり24時間取引が可能になれば、相場の連続性を維持できますから、取引機会を失わずに済みます。

昨年11月22日から今年3月末までの90日取引日ベースで見ると、前日の終値と当日の始値を比べて、100円以上の価格差が生じた日数が17日でした。日経平均株価などは、ニューヨーク・ダウの値動きに連動するケースがありますから、日本時間の深夜に取引されている米国の株価が強気だと、翌日の日本の日経平均株価が、前日の終値に比べて高いところで寄り付くケースが多いのです。

しかし、基本的に前日の終値と当日の始値の間には、これまで具体的に取引を行う手段がありませんでした。この1%程度の値動きを収益につなげるチャンスが無かったのです。

もちろん、株価指数先物取引などは、大証のイブニングセッションが23時30分まで行われているので、ある程度、ニューヨーク市場の動向を反映させることができますが、それでも、世界で最も注目されている米国株式市場の動向をすべて反映できるわけではありません。日本のイブニングセッションが終わってから、米国株式市場が終わるまでの時間帯は空白になります。

でも、くりっく株365であれば、米国株式市場の取引時間帯をすべてカバーしています。従って、前日終値から当日始値の間にギャップが生じ、それによって損益が大きく左右されるというような、あまり望ましくない状態は回避できます。これは現状、くりっく株365ならではともいうべき、ほぼ24時間取引が出来ることの最大のメリットだと思います。

震災直後、日経平均先物取引については、より多くの証拠金を預けないと取引できなくなりました。でも、同じ証拠金取引でも、くりっく株365の日経225証拠金取引の証拠金は、それほど大幅な増額にはなりませんでしたが、これはなぜですか?

岡田氏:

これも24時間取引ができることのメリットを反映したものと考えています。

日経平均先物取引も、くりっく株365も、必要証拠金を算出する際には、「プライス・スキャンレンジ方式」を採っています。プライス・スキャンレンジ方式とは、過去4週間の変動率1位と、過去24週間の変動率2位のうち、いずれか大きい方を採用し、それを日経平均株価の基準日(毎週最終営業日)の終値にかけて求められますが、くりっく株365の場合は、変動率ではなく変動幅を用いて計算します。

また、日経平均先物取引の場合、変動率を求める場合は、午前9時から午後3時までの日経平均株価の変動率が採用されますが、くりっく株365の場合は、当日の午前8時半から翌日の午前6時まで取引される日経225証拠金取引の変動幅を採用します。

この違いが、証拠金の額に大きな差を生むことになりました。つまり、3月11日(金)時点の日経平均株価は、前日比179円95銭の下落でしたが、くりっく株365の日経225証拠金取引は、震災の影響を織り込み、その夜の取引でも売り込まれて、前日比307円安になりました。結果、21日から適用される基準額に差が生じてきたのです。

具体的には、日経平均先物の場合、21日の基準額には震災発生後の株価下落が織り込まれず、ミニで2万7,000円のままでしたが、くりっく株365の場合は、307円安を反映して3万3,000円に引き上げられました。

そして、両者に大きな差がついたのが次の局面です。

前述したように、15日の日経平均株価は、前日比で1,015円34銭という大幅安になりましたが、大引けを迎えた後は徐々に冷静さを取り戻し、くりっく株365の終値、つまり翌日の午前6時段階では、前日比612円安まで戻してきたのです。

その結果、28日から適用される基準額は、日経平均先物が2万7,000円から9万9,000円へと大幅増になったのに対し、くりっく株365はその後の戻しも織り込んだため、3万3,000円が6万3,000円になっただけで済みました。

ただ、くりっく株365も証拠金基準額は上がったわけですが、それに対する投資家の反応はどうでしたか?

岡田氏:

一部からは、なぜ上がったのだという疑問はあったようですが、相場変動が激しくなっていた時期だけに、投資家の方を保護するためにも必要だということで、納得していただけました。

確かに、3月28日以降に適用された基準額は、日経平均先物取引と同じように、くりっく株365も上昇していますが、注目していただきたいのは、くりっく株365の場合、24時間取引を反映した基準額の設定になっているという点です。

今や日経平均先物はシカゴ市場でも活発に取引されており、海外市場の動向は無視できない状況にあります。海外市場の値動きも反映して基準額が設定されるという意味では、より合理的なリスク管理が行える仕組みだと考えています。


Fanet MoneyLife(掲載日:2011年04月27日)


   
    

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