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ピクテ投信投資顧問 岡崎 義晴 社長 「投資家教育の前に、プロの育成が必要」 - トップインタビュー(第3回) - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第3回】ピクテ投信投資顧問 岡崎義晴 社長「投資家教育の前に、プロの育成が必要」

岡崎社長は運用会社育ちのトップ。投信に対する静かな熱き思いがある。自身も1964年に渡米して海外留学を果たし、81年にCFA(世界55カ国に普及しているCFA協会認定証券アナリスト)資格を取得した。国際的に通用する資格の取得に躊躇(ちゅうちょ)する最近の若者の「縮み志向」に苦言を呈す。このところ資金が急増している「グロ・イン」の成功の背景などを聞きながら、今後の見通しを語ってもらった。

▼ピクテ投信投資顧問(日本での歩み)
  • 1981年
  • ピクテ銀行東京駐在員事務所開設
  • 1987年
  • ピクテジャパン株式会社として投資顧問業務の登録、投資一任業務の免許取得。
  • 1997年
  • ピクテ投信投資顧問株式会社に社名変更、投資信託委託業の免許取得。
  • 2006年
  • 11月末の公募投信純資産残高は1兆9644億円で、外資系運用会社ではトップ。

▼ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)(略称「グロ・イン」)

2005年2月28日設定、当初設定額122.86億円。
今年度上期純資産増加額ナンバー1に輝く(7,069億円)。その後も資金の流入は続き、純資産残高は1兆6349億円(2006年11月末現在、QUICK・QBR調べ)。受益者総数は約40万人と推定される。

高校卒業と同時に留学をされましたが

岡崎 社長:

1964年に米国のニューヨーク大学に進みました。動機は経営学の神様として日本では神格化されていたピーター・ドラッカーの講義を聞くためでした。商社マンなど、国際的なビジネスマンになる夢を持っていました。1ドル=360円の固定相場時代の留学です。彼の授業はドイツ語訛(なま)りの英語で聞き取りにくいという印象でした。しかし、実際ニューヨーク大学はウォール街のど真ん中にあり、証券会社や運用会社の人たちが通っていました。そこでの議論を聞くうち、「ファイナンス」に興味の中心は移っていきました。従って、大学院で、「ファイナンス科」を修了し帰国しました。

帰国後、就職先はいかがでしたか

岡崎 社長:

帰国しても運用業界などは育ってなく、仕事を探すことが大変でした。たまたま、設立したばかりのフィデリティ・ジャパンがアナリストを募集していることを知り、即入社しました。フィデリティには20年ほどいましたが、最初の5年はアナリストでした。当時のフィデリティは日本の企業調査が中心で、ファンドマネジャーであるハリー・セガマンのリサーチ・アナリストとして修行しました。コネチカットから来日するセガマンと日本の企業を訪問したり、京都のお寺巡りをしたりしました。実際の運用や調査のことで彼とたくさんの議論を戦わせることができたことは、とても良い勉強の場となりました。

フィデリティでは日本株の運用もなさっていましたね

岡崎 社長:

そうですね、日本株のファンドマネジャーを15、6年ほどやりました。ロンドンに転勤したときも、向こうで海外の年金のためにグローバル株式運用チームの一員として日本株を運用していました。

運用会社育ちの岡崎さんが社長を引き受けたピクテとはどういう会社ですか

岡崎 社長:

1805年に創立された預金やローンを取り扱っていない資産運用と管理に特化した銀行で、富裕層の資産運用サービスで200年続いています。8人のパートナーによるパートナーシップで経営されていて、経営の継続性が保たれています。信頼は継続で始めて担保されるものです。だから基本の考え方や方針を変えずにやれるのです。パートナーシップは経営の無限責任を指します。何か不祥事を起こせば、自らの財産を差し出すわけです。経営トップが辞めることで被害者は救われないケースが沢山ありますが、パートナーシップの会社はそこが違います。

また、ピクテを支える大きな柱は「資産運用」と「資産管理」(カストディ)です。特に新興国投資には、カストディ能力がものをいいます。

次に、純資産が急増しているグロ・インについてお聞かせ下さい

岡崎 社長:

ここまで、短期間に資金が集まるとは思っていませんでした。急増の背景は金利上昇懸念のなかで外債ファンドに偏っていたポートフォリオのリスクを投資家や販売会社サイドが感じたことが大きかったのではないでしょうか。

国際投信さんの「グロソブ」の研究をされたと伺いましたが

岡崎 社長:

グロソブ(「グローバル・ソブリン・オープン 毎月決算型」)は、基準価額の低下局面でも驚異的な資金流入が続いていたので、大変興味を持ちました。そこには、何らかの個人のニーズがあると感じたわけです。そこで、グロソブの商品性について研究しました。その結果、個人がグロソブのような特性をもった利回りを重視した商品を評価するようなマーケットが少しずつ拡大していると思いました。かつて、米国の70年代に立ち上がったMMF(マネー・マーケット・ファンド)を彷彿(ほうふつ)させる状況と判断しました。

だったら、投資家の持つ資産を分散しながら、われわれの持つノウハウを上手く活用した商品を提供できないかと考えました。

グロソブの持つリスクを分散するようなファンドを考えたわけですね

岡崎 社長:

そうです。グロソブが開拓した日本独特の市場を否定するのではなく、組み合わせることでリスクを分散し、長期的な個人資産形成の一助になる商品の開発を検討したわけです。幸い、当社のジュネーブにはユーティリティ(公益事業株)のチームがあり、既にワールドウォーターファンドというユニークなファンドを立ち上げていました。このチームの運用能力を使ってインカムグロースというコンセプトのファンドを東京のアイデアで組成させたのです。電力やガス、水道などの公益事業の株式を配当利回り重視で選択したファンドです。

外資系の運用会社で往々にして間違うのは、母国で成功したファンドを日本でもうまく行くと考えて押し売りし失敗することです。我々も失敗という経験をしたことで、日本流にアレンジすることを学びました。その結果が「グロ・イン」を生んだわけです。

グロ・インもグロソブも毎月決算型です

岡崎 社長:

そうです。金融商品としての投信の機能を考えると使い勝手、つまり利便性を考えることが必要だと思います。経験の浅い投資家だけでなく、投信を販売する行員にとっても、保有ファンド、販売したファンドをいつ売却するか判断することは、なかなか難しいことです。毎月決算型は、分配金の払い出しで言わば利益の確定をする機能があります。この辺が評価されて伸びていると考えています。米国のMMFも小切手の決済機能が付加されたことで爆発的に伸びました。

ところで投資家教育が叫ばれて久しいですが

岡崎 社長:

投資家教育以前に問題があると思います。それは世界に通用するプロの運用者、プロのアナリストが充分育っていないことです。わたしは1981年にCFAを取得しましたが、残念ながらバブル崩壊以降、若い人の縮み志向からか、資本市場で活躍できるCFAの受験者数が低水準に止まっています。中国、香港、韓国、シンガポールから毎年2000~5000人が受験するのに対し、日本からは1000人程度で資本市場の大きさから比較すると大きく出遅れています。資本市場の国際化、グローバル化を考えるとこれをサポートするプロの不足は由々しき問題です。

プロの存在のほか、運用業界が成長するために何が必要ですか

岡崎 社長:

投資家の意識を変えるためには、日本版401k(確定拠出型年金)の制度を整えることだと思います。企業型でいえば、従業員のマッチング拠出(※)を認めていないなど未整備の状態です。これが改善されれば、個人が資産形成について年金を身近に考えるようになり、一挙に制度も変わることになります。また、投資家の成熟度に応じて現在隆盛の毎月決算型も変化して行くことになると思います。

(※)米国の確定拠出年金は、従業員の拠出に企業が上乗せして拠出するマッチング拠出が可能。日本では「企業型」では企業からの拠出のみ、「個人型」では従業員からの拠出のみしか認められていない。(編集部注)

最後に個人投資家にメッセージを

岡崎 社長:

まず、リスク商品は短期、目先ではなく、長期的な視点で捉えないといけない。そして商品に対する充分な理解が必要です。充分理解しないで購入すると、ちょっとした変化で不安になってファンドを売却したりします。その結果、得るべき利益を得られないで終わってしまう。リスク商品は今上がっているからこのまま上昇していくだろうとか、今下がっているからこのまま下落し続けるだろうとか、言えません。だから分散投資をするわけです。投信はこのような前提で商品設計をしているので、付和雷同で買ったり売ったりするのは手数料を多く払うだけで馬鹿げています。運用フィー(運用報酬:投信運用会社に支払う報酬)を払ってプロの運用者に個別銘柄の売買は任せているのだから、投信を売ったり買ったりする必要はないはずです。

投資の世界の大原則はリターンとリスクはトレードオフ(二律背反)の関係で、ハイリターンの隣にはハイリスクがあります。リスクを下げながらリターンを上げる方法としては、分散しかありません。これを商品にしたのが投信です。このことを考えて頂きたいと思います。


インタビュー:2006年11月 聞き手:QBR 小林 新 (掲載日:2006年12月11日)

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プロフィール
岡崎義晴(おかざき よしはる)氏
出身地:茨城県

経歴

1943年 茨城県生まれ
1971年 ニューヨーク大学経営学部卒業
1973年 同大学院ファイナンス科を修了し、MBAを取得
1973年 フィデリティ投資顧問(株)入社
常務取締役ポートフォリオ・マネジャー
1988年 フィデリティインターナショナル持株会社(ロンドン)のディレクターに就任。以後、(株)エフ・アイ・エイ投資顧問社長、フィデリティ投資顧問(株)取締役副社長。
1995年 メリル・リンチ投資顧問(株)入社
1996年 ピクテジャパン株式会社(現・ピクテ投信投資顧問(株))入社
1996年 同社代表取締役社長
日本CFA協会名誉会長


   
    

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