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大和証券投資信託委託 樋口 三千人 代表取締役社長 「投資信託は『宝石箱』」――長期投資を根づかせることが投信の使命 - トップインタビュー(第7回) - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第7回】大和証券投資信託委託 代表取締役社長 樋口三千人 氏「投資信託は『宝石箱』」――長期投資を根づかせることが投信の使命

「大和投資信託の強みは?」とうかがうと、即座に「運用力」という言葉が返ってきた。ファンドマネジャーやアナリストを自社で育成し、外債運用も外部に委託しない自前主義を貫く。運用資産上位ファンドは、自前主義である「ダイワ・グローバル債券ファンド(毎月分配型)」(純資産残高1兆6000億円)と「ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型)(杏の実)」(同4100億円)。そして銀行と二人三脚で設定した「りそな・世界資産分散ファンド(ブンさん)」(同5600億円)。投資信託協会の会長でもある樋口社長に"わが国投信の今"を語っていただいた。

現在の投信市場はいかがですか

樋口氏:

ここ数年にわたる相場環境の良さからか、今回の2月末から3月上旬の株式と為替市場の波乱でもすかさず買いが入る状況です。ただ、これを単純に喜んで良いのかと考えてしまいます。

何か問題があるのでしょうか

樋口氏:

本当に投資を理解したうえでの行動だったのかということです。「儲かっているときにこそ、リスク教育の徹底を」と投信協会でも言っているところです。投資信託の魅力について、「小口から購入でき、いろいろなものに投資できます」というところまでは理解されてきていますが、「長期投資」の根づき方が必ずしも良くありません。


例えば、毎月分配型は、ファンドを長く持つという動機よりも、月々の分配金に関心が向き、結果として持ち続けているということではないでしょうか。

投資家が意図した長期投資ではないということですね

樋口氏:

そうですね。長期投資の重要性を認識していただくよう努力したい。とくに銀行窓販、郵政公社のお客様は本格的な投資が初めての方が多く、販売会社さんと一緒にこれを果たしていきたいと考えています。

郵政の投信販売に対する姿勢は並々ならぬものがありますが

樋口氏:

勉強会ひとつとっても力の入れ方はすごい。当社でも顧客セミナーや職員の勉強会は月間200回以上、30人近い社員がこれをサポートしています。ある程度、採算を度外視しても、当社としては投信普及のミッションと考えて取り組んでいます。

郵政公社の営業範囲は広く、投信の裾野を広げる効果が大きいと見ています。

銀行窓販向けは

樋口氏:

銀行窓販は郵政公社と同様に投信販売に重要なチャンネルです。これらのチャンネルに対して、サポート部隊は60名弱がついています。

一方、証券チャンネルはいかがですか

樋口氏:

大和証券は当社の最大販売会社でもあり、複数の専任担当をはじめ、横断的に全社をあげて対応しています。また、公販(公開販売)の証券会社さん向けにも専任の担当者が対応させていただいています。

商品のカテゴリーごとの販売チャネルの特色は

樋口氏:

純粋株投(インデックスファンドを除く日本株ファンド)は圧倒的に証券チャンネルです。大和証券グループとしては、長期的な観点から投資家の資金を、ファンドを通じて日本株に導入したいという思いがあります。昨年(2006年)1年間の相場環境は、多少アゲインストでしたが...。当社の株式投信全体の30%程度の約1兆5000億円が純粋株投です。他社と比較しても多いと思います。

なるほど日本株に対する熱い思いを感じますね

樋口氏:

大和総研の見通しなどから、日本の中長期的なファンダメンタルは良好で、増益基調が続いていくので、まだまだ割安感があること、そして新興国の躍進には日本企業の技術力があらためて着目されていると感じています。したがって、日本株の投資魅力は長期的な観点から評価しつくされているとは思っていません。

あらためて大和投資信託の強みについて

樋口氏:

ずばり運用力ですね。アナリストやファンドマネジャーを自前で養成していることです。両専門職で合わせて100名近くいます。特に日本株運用では複数の評価機関からのご評価もあるように、絶対的な自信があります。もう一つは、外債運用について外部委託をせず自前でやることを強く意識してきました。これは、外部委託する場合には仕組み上避けられないのですが、受益者に対する情報開示を外部委託先に依存することに、説明責任という点から不安を感じたからです。例えば、「ダイワ・グローバル債券ファンド(毎月分配型)」や「ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型)(杏の実)」は、自社運用で大きな成功をあげました。もちろん、自己の力の及ばない分野で、かつ情報開示に不安を覚えないパートナーには外部委託をしています。

強みのもう一つは、なんといっても販売サポート体制です。自分が2年前に着任したときに、「販売会社、特に窓販には販売サポートが絶対に欠かせない」と社内で宣言しました。販売会社さんと一緒になってやろうと、その思いを形にしたのが「地域応援ファンド」です。また特定の金融機関と販売のあり方から商品の設計まで一緒になって作り上げた典型が「りそな・世界資産分散ファンド(ブンさん)」です。

窓販では女性陣の活躍も見逃せませんね

樋口氏:

銀行の販売では多くの女性行員が活躍されています。そういった意味で、当社では顧客セミナーや行員研修の講師を女性のプレゼンターに対応させています。販売における悩みも同じ女性だから分かりあえることが多くあるようです。

金融商品取引法の施行や金融商品販売法の改正など販売の現場では法律が強化される方向です

樋口氏:

金融商品販売法の改正への対応が特に重要と考えています。 もともと投資信託は、商品を作って卸せばそれでいいというものではなく、販売会社さんと一緒になって取り組まないといけない商品です。お客様が理解していない、と営業員さんが判断すれば、売ってはいけないものです。

当社の商品を販売してもらうのですから、法改正にともなう説明カリュキラムの提供を考えています。今後政省令が出てくるのを待って、具体的に取り組むことになります。

団塊の世代について

樋口氏:

団塊の世代には、ファンドラップのようなオーダーメイドスタイルも考えられます。また、商品設計にあえて無分配を導入し、20年先から使うために退職金はまず増やしましょう、ということも考えられます。団塊の世代とひとくくりにできない多様なニーズがあり、販売会社さんごとに多彩な商品が提供されると想定しています。

ファンドのコストについてもいろいろ取り上げられる時代です

樋口氏:

ファンドオブファンズのコストが話題になることが多いようですが、仕組み上、選りすぐりのファンドを組み入れることの見返りにコストがかかるわけです。ただ説明のつかない不透明なコストがかかるファンドは自然淘汰されると思います。運用会社は運用体制の効率化などでコスト削減につとめており、なるべくたくさんの果実をお客様にお返しすべく経営努力をはかっています。コスト削減という意味では、ファンド統合は意義ある手法ですし、マザーファンドを組み合わせるのも有効です。ただ、効率化の名の下に運用環境が劣化することでは本末転倒です。例えば、ファンドのレポート作成に、ファンドマネジャーの能力が奪われるのでは意味がありません。わが社はレポートの作成を全面的にバックアップする組織をつくりました。この組織の使命は、わが社の運用力の確かさとその魅力をつぶさに伝えること、何かマーケットにショックがあった場合、すかさずその影響と先行きについてファンドごとにコメントを出すことです。

今後の投信マーケットについて

樋口氏:

日本の政策の軸足が「貯蓄から投資へ」移った状況で、税制の果たす役割は大きい。日・米・独の個人金融資産に占める投信のウエートを比較すれば明快です。過去15年でドイツの投信は、4%から12%になっています。当時のドイツ政府が公的年金の破綻リスクを何とかしようとし、優遇処置を講じた結果です。そして、ドイツでは現金・預金が15%近く減り35%になりました。いま日本でもドイツと同様なリスクが懸念されています。公的年金の不足を、個人の資産形成という自助努力でまかなってもらうほうが、税金を投入するよりもはるかに低コストだと思います。投資に対する税優遇によって、「貯蓄から投資へ」と山を動かすことです。証券税制の優遇措置が1年延長になったことは、望ましい第一歩と受け止めています。これを恒久なものにするために理解者を増やす努力を続けます。直近の日本の投信残高は、私募投信を含めて110兆円くらい。個人金融資産に占める投信は4%強に当たりますが、あと4~5年で10%に高まると想定しています。現在51%ある預金のウエートがドイツ並み(35%)に低下すると、そのうちのおよそ10%部分が投信にオンすることも考えられます。

投信ウエートが10%で150兆円、現状に10%オンすれば210兆円ですか

樋口氏:

大きな飛躍期に入ったと思います。

個人投資家に一言

樋口氏:

資産運用するのに投信はとても便利な「箱」です。これを宝石箱にするのは投資家ご自身です。そのためには、お任せにするのでなく、投信に組み入れている商品をぜひご自身で確認してください。しっかりご説明をいたしますのでしっかり聞いてください。もし理解できなければ購入はおやめください。投信は少額で分散投資できる便利な箱です。運用会社は世界中に投資できる商品をそろえています。

長時間ありがとうございました


インタビュー:2007年3月8日 聞き手:QBR 小林 新


後記

投信協会長である樋口氏。投資教育に話がおよぶと口元がゆるんだ。「大和証券グループは大学に対して寄付講座を実施しています。学生の反響は大変大きいです。もう一歩進めて小学生レベルにも「投資」の話が教育として入っていくようにしたい。自分の在任中に着手したいと思っています。米国と同様、業者も登録制になってきており、業者の良し悪しを判断するのは最終投資家です。その意味でも投資教育の必要性が高まると思っています」と。
プロフィール
樋口 三千人(ひぐち みちひと)氏
出身地:三重県

経歴

1946年 三重県に生まれる
1969年 早稲田大学第一政経学部卒
1969年 大和証券株式会社 入社
1995年 同社 取締役 法人副本部長
1996年 同社 取締役 事業法人本部 担当 兼 大和インベスター・リレーションズ株式会社 取締役
1997年 同社 取締役 事業法人営業本部長
1997年 同社 取締役 法人本部 事業法人営業担当
1998年 同社 常務取締役 法人本部 事業法人営業担当
1999年 同社 常務取締役 事業法人上席担当
1999年 大和証券エスビーキャピタル・マーケッツ株式会社
常務取締役 事業法人上席担当
2000年 同社 専務取締役 事業法人上席担当 兼 事業法人営業担当
2001年 大和証券SMBC株式会社 
専務取締役 投資銀行本部長
2002年 同社 代表取締役専務取締役 商品本部長
兼 株式会社大和証券グループ本社 特別執行役員
2004年 同社 代表取締役副社長
兼 株式会社大和証券グループ本社 取締役兼執行役副社長
2005年 大和証券投資信託委託株式会社 代表取締役社長
(現在に至る)

   
    

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