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日興アセットマネジメント ビル・ワイルダー 社長 兼 CIO 「独立性を発揮し、"日本一の運用会社に」--個人の大事なお金という意識忘れず - トップインタビュー(第9回) - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第9回】日興アセットマネジメント ビル

・ワイルダー社長兼CIO「独立性を発揮し、

運用資産残高11兆8000億円と国内第3位(2007 年3月末現在)の運用会社、日興アセットマネジメント。ビル・ワイルダー社長兼CIOが舵取りを始め、 今年7月で4年目を迎える。親会社日興コーディアルグループの不正会計問題で年初から逆風が吹いたが 、個人投資家のニーズを取り込んだ投資信託「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)」が5月末で 募集を一時停止するほど残高を増やし、新規に設定したファンドも好調だ。ビル・ワイルダー氏は「運 用の独立性を発揮し、『運用会社といえば、日興アセット』とだれもが口をそろえるような日本を代表 する運用会社になる」と語り、株式上場を目指す考えをあらためて強調した。

業績は好調ですね

ビル氏:

そうですね。ただ、2006年度の第4・四半期は伸びず、 多少フラットになりました。親会社の問題(日興コーディアルグループの不正会計問題)も多少関係し ましたが、日興コーディアル証券以外に販売網を広げていたことが功を奏しました。4月以降、新年度 入りもあって好調さを取り戻しています。

そうした中、5月には主力の投資信託「財 産3分法ファンド」の募集を一時停止すると発表しました

ビル氏:

はい、このファンドはJ- REIT(不動産投資信託)を組み入れる日本初の公募ファンドとして2003年8月にスタートしました。そ の後、多くの顧客の支持を集め、純資産総額は1兆3757億円(2007年4月末現在)になりました。このフ ァンドは約25%をJ-REITに投資する設計になっており、その額は約3400億円に上ります。J-REIT市場が 約6兆4000億円ですから、このファンド1本で5%以上を占めることになります。

いわゆる「池の中のクジラ」の状態にな ってしまった

ビル氏:

当社以外にもREITに投資す るファンドがあり、ファンドの設定でJ-REITの価格を上げてしまうことが考えられます。そこで、受益 者の利益を第一に考えて、REIT市場の規模が拡大するまでは、純資産総額1兆5000億円をめどにソフト ・クローズすることにしました。

郵政公社という販売チャンネルについて

ビル氏:

外から見ていると、品ぞろ えがいいと思います。

郵政公社が採用したファンドの中には、 個人のライフサイクルに応じたターゲットイヤー型があります

ビル氏:

2010年、2020年といったタ ーゲットイヤーの投資家への明確な説明がカギになるでしょう。お客様の立場からみて多様な選択肢を 用意している点は、高く評価しています。

顧客への情報提供に携帯電話を利用され ていますね

ビル氏:

販売会社やファンドの保有 者には、できるだけ情報を提供したい。情報は多いほどいい。携帯電話は非常に普及したので、有力な 手段だと思っています。

個人投資家のリスクは情報不足にあると 思います

ビル氏:

例えば、本日(5/30)の 中国市場は6%程度下落しています。6%の下落だけみるとパニックになる投資家もでてきます。この原 因は、中国で証券取引にかかる印紙税を従来の3倍にあたる0.3%に引き上げたことがきっかけと解説す ると「なんだそういうことか」と冷静に受け止めてもらえるのです。中国株式市場が史上最高値を更新 する中、中国政府は、目立ってきた投機的な動きを抑制する予防的な措置をしただけなのですね。これ についてはすぐに投資家向けレポートを配信しました。

個人投資家は最近リスクの高いものにシ フトしており、情報提供は大切です

ビル氏:

日本語で「リスク」という 言葉はあまり良い意味で使われませんね。でも、リスクがないとリターンは大きくなりません。リスク をちゃんと理解し、やりくりすればいいのです。たんす預金も泥棒に盗られるリスクがあります。個人 的な話ですが、最近土地を買ったんですよ。そうしたら、銀行で土地の権利書と印鑑は別の場所に置き なさいと言われました。泥棒に入られたら大変だと。

リスク分散ですね

ビル氏:

そうです。そして投資の世 界では、リスクは短期的な問題で、長期でみるとリターンになるのです。もちろん、許容できるリスク の度合いは人によって違います。先日、あるおばあさんが、書店で「四季報」を買っているのを見かけ ました。高齢の方でしたが、「四季報」を買うということは、個別銘柄への投資ですから、投資信託よ りも高いリスクをとることになるわけです。

毎月分配型の投資信託がよく売れていま す

ビル氏:

毎月分配は分配を受け取ることが目的ならばいいので すが、資産クラスや投資目的によってはあまりいい商品とは思いません。前の会社(フィデリティ投信 )で、基準価額が30000円台になった小型株ファンドがありました。個人投資家向けセミナーで、「分 配金はどのくらい出るのか」と尋ねられました。20000円ほど期待しているというのです。会場の400人 に私の方から「分配金が欲しい人は?」と聞くと、全員が手を上げました。そこでこう説明しました。


例えば分配金を出すために 、ちょうどよい状態でポートフォリオに入っている組み入れ銘柄を売却する。受益者のほとんどが分配 金再投資コースを選択している場合、出した分配金はすぐにファンドに戻ってくるので、組み入れ銘柄 を買い付ける。その結果証券会社にファンドから株の売買手数料を大量に払うことになりますよ、と。 そしてもう一度、「分配金が要る人はいますか?」と質問をしたところ、全員がノーでした。分配金が 欲しければ、ファンドを解約すればいいわけですからね。個人投資家は分配金がどこから出てくるのか 知らないのです。分配の仕組みをしっかりと説明すべきだと思います。

分配金の仕組みのほかに、株と投資信託 を区別できていないこともあります

ビル氏:

基準価額が高くなると、それと同じコンセプトの投資 信託を1万円で新規に設定したりしますね。運用会社が自らそのようなことをすべきではありません。 それに、株や投資信託で使われるベータ(※)という指標に誤解があります。株と同じよう考え、投資 信託の基準価額の変動でベータを求める人が専門家の中にもいます。しかし、投資信託は過去の保有銘 柄と現在の保有銘柄が異なります。投資信託の現在の組み入れ銘柄それぞれのベータをチェックし、加 重平均して値を求めて初めて、それは意味があるのです。

※ベータ 市場全体の値動きに対する個別銘柄の連動性を示す数値。 ベータの値が1なら市場と同じ動きとなる。1以上なら市場よりも大きく動き、マイナスになると市場と 逆の動きになる。

今後の投資信託の市場はどの程度の規模 を想定していますか

ビル氏:

欧米並みの規模が考えら れます。したがって、現在の110兆円の倍の残高があってもおかしくはない。銀行の窓販でいえば、特 に地方銀行で販売するファンド本数を増やす余地があります。預金量と比較してもウェートが低い。だ から、潜在的な成長力は大きい。2003年から日本の株式市場も健全化に向かっています。成功体験を持 った投資家も出てきました。401kもこれからです。

商品の展開について

ビル氏:

ヘッジファンドなどリスク に詳しい投資家向けや、BRICs以上にニッチな市場に投資する個人向けの商品を提供しました。投資家 層を分割・分類し、それぞれに商品を提供していくことも大切だと思います。運用体制についても、自 社がフォーカスしている日本を含むアジア投資は私たち日興アセットマネジメントの自社運用チームを 使います。もし当社よりもあるカテゴリーで優れた運用会社があれば、その運用会社を選別して商品設 計し、提供する「ワールドシリーズ」というプラットフォームを用意しました。当社の提供するBRICs ファンドはそのハイブリッドで、BR(ブラジル、ロシア)分は外部、IC(インド、中国)分は自社と運 用を分担しています。

オフィスを有楽町から東京ミッドタウン へ移転させますね

ビル氏:

9月には移転します。新居 の東京ミッドタウンでは「ファンドアカデミー」という場を設けます。投資信託の販売に携わる方だけ でなく、個人投資家も対象に、投資の教育や啓蒙の場として活用し、日興アセットのファンも育ててい きたいですね。うちは、日本を代表する運用会社になろうと考えていますから。株式の上場も目指しま す。

個人投資家に対する投資のアドバイスを

ビル氏:

「Risk is your friend」 と考えてください。そのためには、分散投資を心がけてほしいですね。それと、もし投資信託を販売す る金融機関から連絡があって、持っている投資信託を売って別のものを買うようにと勧められたら、な ぜ売らなければならないか理由を聞いてください。きちんと答えられなかったら、そのような販売会社 は頼らないほうがいい。私たちは運用の独立性を守ります。大きな資金を運用していますが、それは個 人の方のお金です。例えば、10兆円以上を運用している会社にとって20万円は小額ですが、個人にとっ てはとても大きなお金でしょう。私たちはそのお金を1日中、見ています。このフロア(ファンドマネ ージャーたちがいるフロア)の目的は、いい成果を残すということだけなのです。

長時間ありがとうございました


インタビュー:2007年5月30日 聞き手: QBR小林新、Fanet MoneyLife大谷篤

掲載日:2007年6月20日


後記

インタビューした5月30日は、たまたま中国の上海市 場が6%超の下落となった。日興アセットマネジメントは投資家への情報提供を迅速に行った。その後 、上海市場は5日間で13.1%の下落となったが、この大幅な下げに対するフォローも6月6日にレポート で提供されている。投資信託はリスク商品である。上がっても下がっても、きめ細かなフォローアップ がないと、個人投資家は長期間保有し続けることができない。同社の姿勢に今後も注目したい。
プロフィール
ビル・ワイルダー(Bill Wilder )氏

経歴

1950年 米ニューヨーク州生まれ
1976年 イーストフィールド大学卒
日本ヒューレット・パッカード株式会社、富士通株式会社、ウェスタン・エレクトリック社(現日本ル ーセント・テクノロジー)にてエンジニアとして勤務。
1986年 株式会社シュローダー・インベストメント・ マネージメント(現シュローダー証券投信投資顧問株式会社)に入社、日本株リサーチ部長。
1992年 フィデリティ投信株式会社に入社、日本株リ サーチ部長。
1995年 同社の代表取締役社長およびカントリーヘッ ドに就任。
2004年 日興アセットマネジメント株式会社代表取締 役社長兼CIO(チーフ・インベストメント・オフィサー:最高投資責任者)。同社のすべてのファンド の運用に携わる。

   
    

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