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ピクテ・アセット・マネジメント(スイス・ジュネーブ) 萩野 琢英 マネージング・ディレクター 「ファンドはエキサイティング!」――グロインの次も特色ある株式投信 - トップインタビュー(第14回) - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第14回】 ピクテ・アセット・マネジメント(スイス・ジュネーブ) 萩野琢英 マネージング・ディレクター「ファンドはエキサイティング!」――グロインの次も特色ある株式投信

2007年12月、ピクテ投信投資顧問の常務からスイス・ジュネーブのピクテ本社のマネージング・ディレクターに就いた萩野琢英氏は、ピクテの看板ファンド「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」(「グロイン」)の生みの親である。グロインは07年5月から募集を停止していたが、同年11月に再開した。萩野氏はこれからもグローバル市場をつぶさに見つめながら、「分かりやすくてエキサイティング、そしてピクテならではの特色ある株式ファンドを開発したい」と語った。

経歴から

萩野氏:

ピクテ・アセット・マネジメント(スイス・ジュネーブ) 萩野琢英マネージング・ディレクター

証券会社の国際部で自動車やガラス・土石などのアナリストをやった後、欧米の機関投資家を相手にしたセールス・アナリストとしてロンドンやニューヨークの海外現地法人に勤務していました。証券会社を辞めた後、2年ほど日本の製薬会社の財務部に籍を置き、ピクテに2000年1月に入りました。製薬会社と証券会社の違いは大きかったですね。当時の製造業は短期的に数字を上げることに対するプレッシャーがあまりなく中長期的な視点に立ち、共同体的な意識で会社のために協力し合うというカルチャーがありました。

当時身につけた考えが現在の会社で生かされていますか

萩野氏:

私の担当するマーケティング部は、営業や商品企画、ファンドアナリスト、目論見書、週報・月報や販売用資料を作成する部署、レポーティング(年金関係)部門を抱えています。一部門制のフラットな組織にしてコミュニケーションよいグループを常に目指しています。引き受け的な感覚で投資信託をボンボン産んでいくスタイルだとその後フォローができなくなります。長期に残高を増やそうとすると、一部門制によるグループアプローチしかないと思ったわけです。

そのような体制からグロインが開発されたのですね

萩野氏:

ピクテ・アセット・マネジメント(スイス・ジュネーブ) 萩野琢英マネージング・ディレクター

高配当でかつ増配、増益が見込める株などを調べていて、ああこれは面白いファンドができるな、と考えたのです。ファンドの開発段階の2004年9月ごろ、世界の公益株の予想配当利回りは5.3%前後と世界の国債利回りよりも高かったわけです。グローバルに見ると、決算日も違うわけで、これなら毎月分配型も可能と考えました。ピクテ本社には水道事業などの公益株で運用する専任チームがいたことも大きかった。一人のファンドマネジャーに任せると、どうしても世界株価指数のようなベンチマークを意識してしまいますからね。

2年余りで追加設定を一時停止します

萩野氏:

残高の急増に充分なフォローアップ体制が追いつかなかったことが主因でした。2006年11月に残高1兆6300億円で受益者約40万人だったのが、2007年5月に約2兆7000億円、60~70万人に急拡大したのです。

一時停止の背景に流動性の問題はありましたか

萩野氏:

当時、同じ質問をかなり受けましたが、その点に問題はありませんでした。ファンドの組入れ銘柄数は60数銘柄と確かに少ないように見えますが、うち95%は大型株です。これらの銘柄の1日あたりの市場での平均売買高は、24~25兆円です。またロンドンでファンドの一部、例えば500億円分を売却しようとすると同代金の1ベーシスポイント(0.01%)の手数料で可能です。公益株は同じ業種なので分散されないという指摘もありましたが、米国の公益株とヨーロッパの公益株の相関係数は0.6で、通常の株式の0.8に比べて分散効果があるのです。

11月12日にグロインの募集を再開しました

萩野氏:

理由は、まずサブプライムローン問題で相場の調整があり、金融商品取引法の影響もあって投資信託の販売が落ちてきて、そろりと再出発するのに絶好の時期でした。募集停止期間に受益者60~70万人の10%を対象にお客様セミナーを開いたら再開すると春に約束していたこともあります。この間、お客様セミナーの人員体制も10人強から20人強に倍増しました。

毎月分配型ファンドが日本の投信の主流となっています

萩野氏:

ピクテ・アセット・マネジメント(スイス・ジュネーブ) 萩野琢英マネージング・ディレクター

グロインもその一つです。最初のころ、分配金はファンドから払われるものという認識がない人が多かったと思います。ですから、「分配金の分だけ基準価額が下がっている」と電話が入ることもありました。今ではこのような誤解は少なくなっています。セミナーで分配金に対する誤解を解消するように努力した結果です。そこでは、分配金の額は、マーケットの環境や基準価額の水準、3カ月前と比較して上がったか下がったか、などで決定されると説明しています。また、日本の株式投信マーケットには基準価額が11000円を超えたら解約が起きるという"経験則"がありました。それでしたら、分配金を出して利食いをしちゃえ(笑い)、ということで四半期ごとのプラスアルファの分配を考えました。ただし、ボラティリティー(値動きの振れ幅、変動率)もあるので、無理な高額分配は避けるようにしました。

今後はどのようなファンドの開発を考えていますか

萩野氏:

開発のポイントは、分かりやすくて、エキサイティングで差別化できる商品。ピクテが得意としているけれど、公募ファンドとして導入していないものは、エマージング(新興国)です。アジアや東欧が得意です。パフォーマンスの劣化しない運用環境を運用担当者に与えられるかが重要で、エマージング株について公募を断わってきたのはそのためです。しかし、今はエマージング株も市場規模が大きくなってきているとの認識を持っています。始めるのなら、グローバルに分散されていて、流動性を確保できるものですね。ピクテは、お客様とともに繁栄しようとする考え方に立った経営ができている数少ない金融機関の一つだと思っています。今まで培ったブランド、顧客基盤、それに基づき中長期的な考え方で経営ができている会社です。私は2007年12月から約1年半ピクテ本社で仕事をします。ピクテはパートナー制(8人の経営陣)をとっています。パートナーの一人、イワン・ピクテがこの東京事務所を1981年から見ていて、初代の澤上篤人(現・さわかみ投信社長)、2代目の岡崎義晴の両社長を任命してきました。現在、イワン・ピクテと共同でルノー・デプランタが東京を見るようになり、3年が経過しています。私がピクテ本社で一緒に働くことによって、「あうん」の関係を構築したいと思っています。こうした中で、日本の投資家のためになるファンドもきっと見つかるはずです。

日本の投資信託市場について

萩野氏:

ピクテ・アセット・マネジメント(スイス・ジュネーブ) 萩野琢英マネージング・ディレクター

将来的に投資信託は個人金融資産の20%程度を占めると思っていますが、今は大きく成長するかどうかの分岐点に立っています。運用会社が5年から10年の投資収益リターンを踏まえた節度ある商品を提供できるかがポイントとなります。ですから、体力以上の分配金を出している外債ファンドについて懸念しています。仮に分配金が減少した場合、投信市場全体へのインパクトが大きいからです。高金利通貨債券ファンドやデュレーションの短いものも出てきていますが、金利環境が変化した場合には債券部分から分配金は出しにくくなるのではないでしょうか。分配金が出なくなるリスクをしっかりお客様に理解していただくことが大切です。長期的にリターンの高いものが分配金も多くなるのであって、長期的にはやはり株式なのです。

金融商品取引法の運用業界への影響は

萩野氏:

金融商品取引法は運用会社の資質をクリアに見せる試金石です。単に販売会社の意向に沿ってファンドをつくり、売っていてはだめです。目先の動きに振り回されて商売しても、駆逐されるだけです。我々は絶対に迎合しない。運用会社が哲学を持っているかどうかが、そこで試されるはずです。株式のファンドを本格的に育成することができるかどうかがわが社の課題です。

最後に個人投資家に一言を

萩野氏:

長期投資かつ分散投資を考えてもらいたい。3年くらいだと景気サイクルの途中なので、10年はファンドを保有してほしいですね。そうすると、投資が「資産」になる。投機はいつまでも「資金」でしかないですから。

長時間ありがとうございました


インタビュー:2007年11月19日 聞き手:QBR小林新、Fanet MoneyLife大谷篤

掲載日:2007年12月12日


後記

43歳という若さの萩野氏からピクテの"神髄"を聞けた思いがした。スイスのジュネーブに居を構え、200年の間、欧州の貴族をはじめとする富裕層の資産を運用・管理してきたピクテ。その投資哲学のルーツは、プロテスタントのカルヴァン派にあるそうだ。質素と堅実。禁欲と合理性。資本主義を発展させてきたともいえる「精神」はピクテのカルチャーとして息づいている。ちなみに、萩野氏の夢は「日本の投信業界にお父さんは貢献したんだぞ」と将来、愛娘に胸を張ってみせること。その夢がかなう時、日本の個人投資家の夢も開いているに違いない。
プロフィール
萩野 琢英(はぎの・たくひで)氏
出身地:東京都

経歴

1964年 東京都に生まれる
1987年 学習院大学法学部卒
1987年 山一證券入社、ロンドン支店、ニューヨーク支店勤務
1998年 山之内製薬(現・アステラス製薬)入社
2000年 ピクテ投信投資顧問入社
2006年 ピクテ投信投資顧問常務取締役チーフマーケティングオフィサー
2007年12月 ピクテ・アセット・マネジメント(ジュネーブ)のマネージング・ディレクターに就任
これまでに、ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドピクテ・インカム・コレクション・ファンドピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドユーロ・セレクト・インカムなどを開発してきた。
日本証券アナリスト協会検定会員、米国公認会計士。

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