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中央三井アセットマネジメント株式会社 渡辺 輝夫 社長 「投信の本質は市場を通じて『リスクマネー』を個人が供給すること」 - トップインタビュー(第23回) - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第23回】

中央三井アセットマネジメント株式会社 渡辺 輝夫社長

投信の本質は市場を通じて「リスクマネー」を個人が供給すること

日本の運用会社のトップに、運用業務に永く関わって来た人が就くことは意外とまれである。中央三井アセットマネジメントの渡辺輝夫社長は、そのお一人。同社長に現在のような100年に一度の大きな調整局面で改めて「運用とは何か」、「投資信託の窓販」等を中心に同社の今後の戦略を伺った。

相場は大きく調整しています。

渡辺氏:

そうですね。原因は巷間で言われていることでしょうが、窓販が始まって以来の初めての試練だと思います。2000年初めのITバブル崩壊のときは、まだまだ銀行の取り扱う投信の販売残高は大きくありませんでした。しかし現在は、銀行の取り扱う金融商品のなかでも投信の占める割合は相当高まっており、その中には投信を初めてご購入いただいたお客様も多くいらっしゃいます。今回の調整局面では、こうしたお客様がダメージを受けている訳で、いろいろな意味において影響は大きいと思います。

永年、運用業務に携わって来たご経験から、運用を行ううえで最も重要な点は何かをお聞かせ下さい。

渡辺氏:

運用を行ううえで最も重要な点は?私はライアビリティ(負債)の期間等を考慮することが、最も重要であると考えています。お客さまから託された運用資金は、それぞれライアビリティの期間等が異なります。例えば、かつて事業会社の運用であったファンドトラストや特金と言われるものは、半年や1年で結果を求められます。年金基金のように本来長期運用を行う資金であっても、プランスポンサーである母体企業の決算に運用の成績が反映される時代には長期運用を基本としつつも1年、1年が勝負になります。

投信の運用はいかがでしょうか?

渡辺氏:

公募投信の資金の性格としては、本来個人のお客様のお金ですからコストのかかっているお金ではありませんね。従って、超長期のライアビリティが本質だと思います。

資金の性格から運用は変わるのでしょうか?

渡辺氏:

そうですね。短期でリターンを求める場合には、株式であればマーケットを意識した運用になりますね。

では長期のライアビリティを持つ資金の運用とは?

渡辺氏:

例えば株式の運用で言うと、長期的に成長が見込める企業の株式をいかにポートフォリオ構築することが出来るか、ということになります。旧三井信託銀行では、平成5年に信託銀行で初めて自前でリサーチ部門を持ちました。それまでは、ブローカー(証券会社)の調査部に依存していました。リサーチ部隊を作った動機は、他人の判断をベースにしていては「お客さまの大切な資金を運用しています」とは言えないという素朴な思いからでした。当社は、このリサーチ部隊を活用して、緻密な分析をもとに長期に安定的なリターンが期待できるポートフォリオ構築を行っています。

ところで窓販が開始されて10年が経ちます。投信のお客さまは育っているのでしょうか。

渡辺氏:

投資信託のお客さまは二つのパターンに大別できると思います。今まで証券会社で取り引きしてこられたお客さまは、長年のキャリアがありますので、リスクとリターンという概念が理解されています。かたや銀行で、主に定期預金により資金運用を行ってこられたお客様は、リスクとリターンの概念が今一つ腑に落ちにくいように思われます。このようなお客さまを意識して提供した商品の一つとして、条件付元本確保型ファンドなどの単位型投信があります。

現在のような相場の調整局面を迎えて銀行での投信販売の役割変化はありますか。

渡辺氏:

銀行では、今までは預金という形でお客さまに資金をご提供頂いてきましたが、資金を受けるサイドが借り入れだけではなく、いろんな調達手段を考えられるようになっています。このような変化に個人のお金が対応していくことが、世の中のためになるということを理解していただきたいと思います。つまり、投資信託を通じてリスクマネーを供給していくことが、日本や世界の経済成長に資するということです。このことをお客さまに言い続けることは、運用会社や販売会社の責務だと思います。そう考えると現在の相場調整局面は、お客さまに積極的に接して投信の知識、意識(リスクとリターン)を高めて頂く好機だと思います。

そのような局面で運用会社ができることは。

渡辺氏:

現在の販売現場の悩みは、販売員の方々がお客さまのポートフォリオの相談に乗りきれていないことです。その解決策として、運用会社が顧客向けセミナーの頻度を上げたり、販売の現場にお邪魔して販売員の方々向けに勉強会、研修を実施しています。これは手間暇がかかる方法ですけれど、一番の早道であると思います。われわれはここをサポートします。お客さまには、本当のトータル・ポートフォリオのリスクとリターンを理解していただくことを、地道にやっていくことだと思います。

よく耳にする言葉に営業員の面談率があります。お客さまをある預金レベルで切って、そのグループに声掛けができているかですが、、、

渡辺氏:

例えば面談率が30%とすると、70%程度のお客様に対して直接お話ができていないという意味ですね。最近では、これらの方たちのために勉強会やセミナーを企画するところも多くなってきています。今まで投信を積極的に購入してきた預金者が、今回の調整局面で動きがとりにくくなっているからです。販売サイドの動きとして単位型の商品、たとえば基準価額が12,000円になったら償還するような商品を投入して、まだ投信を保有していない顧客層を開拓しようとする動きもあります。

ところで世の中には良いファンドというものは存在するのでしょうか、、、

渡辺氏:

たとえば、お客さまが投信に何を求めているのかで決まると思います。そのニーズにマッチしているかの問題でしょう。お客さまのニーズが安定的な配当が欲しいということならば、そのようなファンドを紹介することが営業員に求められます。従って、営業員には、お客さまのニーズをしっかり引き出すような営業姿勢が求められます。

ところで御社の目指す方向は。

渡辺氏:

私どもは、昨年の10月に中央三井トラスト・ホールディングスの直接子会社になりました。このことは、個人の資産運用業務に従来以上に経営資源を投入するというグループの意志表明です。2008年10月末現在、投信残高でわが社は国内10位ですが、銀行系でトップクラスを目指します。そのためには私募投信に加え公募投信の資産残高を伸ばすことが急務です。また、投信残高の90%以上は中央三井信託銀行が販売したものですが、この数字を下げるように証券会社、地方銀行などの販売額を伸ばすことが必要です。

商品のラインアップではいかがですか。

渡辺氏:

商品のラインアップですが、どのアセットクラスを増やすなどとは考えていません。お客さまのニーズに応えることで結果としてアセットクラスは決まってきます。例えば、中国への投資です。これは、顧客ニーズでもあります。先日、中央三井トラスト・ホールディングスが発表した中国・上海の海通証券との業務提携実施に向けた協議もその一環です。海通証券は1988年に、中国で最も早く設立された業界大手の証券会社で上海証券取引所に上場しています。中国証券市場への投資を条件付きで認める「QFII(適格海外機関投資家制度)」についても、手続きを進めているところです。今後の世界経済を考えると中国・インド等のアジア諸国の成長がポイントになると思います。また、日本株に対する注目度の高まりも感じています。今年の初めにドバイ、カタールなど中東産油国を訪問して来ました。彼らが一様に興味を示したのはポートフォリオとしての日本株全体ではなく、技術力がある日本の個別企業でした。われわれは、同じグループ内の中央三井アセット信託銀行に個別企業を分析する約20名のアナリストと約10名のクオンツアナリストを擁しています。彼らが活躍するタイミングだと確信しています。

最後に個人の投資家に一言お願いします。

渡辺氏:

リスク資産への投資の心構えとしては、リスクをやみくもに恐れないことです。リスクはリターンのブレを意味し、運用に携わるわれわれは当たり前のように使います。ブレのことですから損失を被ることだけではなく、想定以上に利益を得ることもあるのです。本当のリスクを個人のお客様に理解してほしいと思います。一つの偏った商品しか持たないとなかなか理解できないとは思いますが。複数の商品を保有していただけると、その組み合わせでリスクをどうコントロールするかを実感できると思います。あらゆる意味で、まず始めてみることです。

長時間有難うございました。


聞き手:QBR 小林新

掲載日:2008年12月18日


渡辺 輝夫(わたなべ・てるお)氏
出身地:千葉県

経歴

1948年 千葉県に生まれる
1972年 早稲田大学法学部卒業
三井信託銀行株式会社 入社
1998年 同 受託資産運用部長
1999年 同 取締役 受託資産運用部長
2000年 中央三井信託銀行株式会社 執行役員 投資企画部長
同 執行役員 受託資産運用部長
2001年 同 常務執行役員 受託資産運用部長
2002年 同 退任
三井アセット信託銀行株式会社 取締役常務執行役員 受託資産運用部長
2003年 同 取締役常務執行役員
2006年 同 取締役専務執行役員
2007年 中央三井アセットマネジメント株式会社 取締役社長、現在に至る


   
    

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