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【第36回】 投資信託協会 稲野 和利 会長 - 簡素化、分かりやすい情報開示は投資家の主体性を発揮させる手段 - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第36回】

投資信託協会 稲野和利会長

簡素化、分かりやすい情報開示は投資家の主体性を発揮させる手段

この6月から二期目に入った稲野投信協会長。同会長に一期目の成果と今期の課題について伺った。

■ 数ページになった交付目論見書

この2年の成果である交付目論見書の簡素化とファンドの新分類について。

稲野氏:

交付目論見書の簡素化はこの7月で実施から1年が経過して完全に一巡し軌道に乗りました。簡素化によりページ数は8~12ページと減り、項目の順番も統一感が出て読みやすくなったと投資家やファイナンシャルプランナーなどから伺っています。評価は概ね好意的です。用語については信託報酬を運用管理報酬としたり、特別分配金、普通分配金についても非課税分配金、課税分配金と呼ぶなど各社が工夫をしています。ただ運用会社間で必ずしも統一した用語が用いられているわけではありません。これもだんだんと分かりやすい表現に収束していくのではないかと見ています。

ファンドの新分類については、2009年1月にスタートしました。この背景となったのは、近年残高が拡大傾向にある外国債券に投資をするファンドは、旧分類ではバランス型に分類され収益の源泉となる資産が何なのか、分類名だけでは分からないことでした。また、株式投信の形態をとったのは、追加型公社債投信だと元本割れでは追加設定ができず、使い勝手が悪いからです。同タイプのファンドは、新分類では追加型投信・海外・債券と分類されることになり、投資家に分かりやすいものになっています。これからも新商品が出てきたり、それが相当な規模になったりすることがあると思いますが、分類を頻繁に変えるわけにはいかないので、安定性を考慮しながら投資家を混乱させない配慮が必要だと考えています。

 

■ 検索サイト来年5月稼働

現在取り組んでいる投信総合検索システムと運用報告書の簡素化とは。

稲野氏:

まず、投信総合検索システムは、本年9月に開発業者を選定して、本格稼働は来年の5月中を予定しています。協会のHP内に総合検索システムのサイトを立ち上げます。このサイトの目的は交付目論見書ファイルや基準価額データ等を集約してファンドの商品分類、基準価額等の複数の項目での検索を可能とし、その抽出結果を分かり易く表示、比較できるようにすることです。投資初心者を含む投資家に主体的に投資信託を選択する機会を提供するものとなっています。

運用報告書の簡素化は、交付目論見書の簡素化に続くものです。運用報告書は1964年から記載内容等について大きな制度変更は行っていません。改善する理由は、目論見書と同様、投資家が読んで理解しやすいものにするためです。投資対象や運用手法が多様化したことにより、現行の一律開示では情報の量が膨大で投資家にとって理解すべき情報が埋没してしまう。投資家にとって必要な情報は運用期間中の運用内容・経過、運用成果、コスト等であるはずです。簡素化の方法はいくつかあると思います。金商法上の継続開示と投信法上の継続開示という二つの法からの開示義務についてこれを整理するという考え方もあり得ると思います。そのように大きくとらえ直さないとしても、目論見書の簡素化の例が参考になります。運用報告書に記載されている情報を(1)交付義務のある交付運用報告書で開示する情報、(2)請求により交付する請求運用報告書で開示する情報の二本立ての制度として、(1)交付運用報告書には期間中の運用経過と結果、今後の見通しに関するファンドマネジャーの考え方等、期中の取引や費用の概要といった重要度の高い情報を、(2)請求運用報告書には個別の保有銘柄や財務諸表等を含むその他詳細な情報を開示するといった方向性が考えられます。金融庁が昨年12月に発表した新成長戦略(アクションプラン)において、「投資信託・投資法人法の課題の把握・見直しの検討」については、平成25年度までに制度整備の実施を行う、とありますので、運用報告書の簡素化の実現も要望しています。

金融資産税制の在り方について。

稲野氏:

望ましい金融資産税制の姿は、(1)分かりやすく、簡素なものであること、(2)金融商品全般について公平・中立に取り扱えるものであることだと思います。その意味で金融所得課税の一体化を引き続き要望していきます。軽減税率の延長は金融危機、その後の景気低迷等を踏まえて要望したもので、延長と引き換えに日本版ISAの実施が延期されたのは残念なことです。ISAは、少子高齢化という社会構造の変化の中で資産形成をサポートする仕組みだと認識しています。全ての日本国民が一定の年齢に達したとき一定の金融資産を有していることは十分に政策目的に足りると考えます。その意味でISAの導入は重要だと思います。

 

■ 金融リテラシーの向上は不断の啓蒙・教育

今後の資産運用業界の課題。

稲野氏:

高齢者が金融資産の多くを保有していることは別に悪いことではありません。問題は世代間のバランス、つまり受益と負担の在り方の見直しでしょう。現役世代が現在の高齢者並の金融資産を蓄積することのできる制度の構築支援です。そのためにも若年層の資産形成に投信が活用されるよう確定拠出年金のマッチング拠出の導入、非課税枠の拡大が望まれていましたが、本年8月に成立した「年金確保支援法」で投信業界が強く要望していたマッチング拠出が来年1月から導入されることになりました。大きな一歩だと思います。そして国民の経済的資産形成手段である投資信託の啓発・普及、金融リテラシーの向上は喫緊の課題です。HPの拡充、各種パンフレット、大学寄付講座、各都市でのセミナーの開催、教育の現場に身を置いていらっしゃる中高の先生を対象としたセミナー等、投資の啓蒙、教育に力を入れて行きたいと思っています。

 

ありがとうございました。


聞き手:QBR 小林新(掲載日:2011年08月24日)

用語解説
日本版ISA:日本版ISAとは、今後導入が予定されている投資信託や上場株式等のための非課税制度です。英国のIndividual Savings Account(個人貯蓄口座)を参考にした制度であるため「日本版ISA」と現在では呼ばれています。
 
マッチング拠出:企業型拠出年金では毎月の積立額(掛け金)は全額会社が負担しています。ここに従業員本人が会社の負担金を上限として拠出可能になる仕組みです。年金確保支援法の成立で日本でも来年1月1日から実施されます。


稲野 和利氏

経歴

出身:神奈川県
東京大学卒業
野村證券(現野村ホールディングス)入社後、野村證券副社長、副会長、野村アセットマネジメント社長、会長を歴任の後、現職野村アセットマネジメント取締役会議長

   
    

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