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【第37回】 日興アセット マーケティング副本部長 兼 マーケティング部長 今福 啓之 氏 - リスク商品販売の教育研修はどうあるべきか? - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第37回】

日興アセット マーケティング副本部長 兼 マーケティング部長 今福啓之氏

リスク商品販売の教育研修はどうあるべきか?

「日興AMファンドアカデミー」の立ち上げから現在まで関わってきた今福啓之氏に『リスク商品販売の教育研修はどうあるべきか?』についてお伺いした。

日興アセットのアカデミーの歴史、目的、役割について。

今福氏:

私が日興アセットに入社したときの大きなミッションはファンドアカデミーの立ち上げでした。入社後、半年かけて研修コンテンツとマーケティング戦略としての仕掛け作りをして2008年3月にアカデミーはオープンしました。もともとの発想・講想を打ち出したのは会長のティモシー・マッカーシー(以下「ティム」)です。投信という手触り感がないものを売る販売員の方々にそれをどう見せるかが彼の問題意識でした。アカデミーの施設内にあるメイン・カンファレンス・ルームで行われる運用会議をオブザベーションエリア(ガラス越しに見学するスペース)から販売員の方々に間近で見てもらい、「どんな人間が」「どんな空気感の中で」ファンドに関わっているのかを味わった上で、販売の現場に持ち帰ってもらうことが目的だったと思います。お陰さまで受講者数は、今年の7月に延べ7000名を超えました。

販売員の教育・研修で運用会社のできる範囲は。

今福氏:

アカデミーのコンテンツとマーケティング戦略を考える際、金融教育業者や販売会社自身の研修とどのように棲み分け、差別化するかが最も重要だと考えました。結果、コンセプトを「投資信託を"正しく・たくさん"販売するための実践的な知識」と定義し、コンテンツを作っていきました。日本に投信をもっともっと普及させるためには、彼ら販売員の方々にたくさんのお客様へ紹介してもらわねばなりません。しかし、正しい知識に裏打ちされていなければ、それは単なる売らんがための販売スキルになってしまう。「正しくたくさん」というコンセプトにはそんな想いがあります。投資信託に関する知識だけに絞り込んで、運用会社にしかできないものだけに絞り込んで、中身を作っていきました。したがって、ライフプラン、総花的なファイナンシャルプラン、税金などの話はしません。そして原則、個別商品のプッシュはしません。商品名を出す前にこそ、大事で深い話があるのだと思っています。

投信白書は今年で3回目です。

今福氏:

第1回目の白書は2009年2月でした。「より良い10年に向けて」と題してリーマンショック後の販売現場の様子と課題をお届けしました。第2回目は昨年2月「投信販売の現場が求める上司とは?」と題してリスク商品販売の担い手が求める上司像を描いたものでした。第3回目の今年は引き続き「投信上司」をテーマに「部下のやる気を引き出すには」「必要なマーケット知識」「正しくたくさん販売する知識」などより実践的な課題を取り上げました。来年は、「投信販売の背骨」というテーマを考えています。これは、投信を販売する一連の流れの明確化と、持つべきベースナレッジの体系化です。この背骨がしっかりしていればブレなくしっかり販売できる、そんなイメージです。当然、販売にあたってのマインドセット(思考の基本原則)にも関わる問題だと思います。最近、ティム会長が言っているのは「ノーブル・ミッション」(崇高な使命)という言葉です。ノーブル・ミッションは販売会社のトップにこそ分かって頂きたい言葉です。

Webやスマホ、タブレットなど情報伝達手段が多様化しています。

今福氏:

私はWebのエリアも見ていますが、これからの投資家は変わっていくと思っています。Webをそれなりに使いこなす人が退職金や親からの相続資金を受け取る時代がすぐ来て、販売員の方々の話の裏をWebを使って取りに来るようになります。投信会社にとってWebの重要性はまさにこれから始まるのではないかと思っています。もちろん、引き続き販売員の方々に対するタッチポイント(接点)でもあります。今、アカデミー講座の動画ミニライブラリー(テーマ毎に5分間から7分間程度)のHP公開を準備しています。投資家にも地方の販売員の方々にもアカデミーのエッセンスを体感していただき、当社のスタンスを理解してもらえればと思っています。

「分配金利回り」営業について。

今福氏:

良い悪いとか健全不健全の議論の前に、投資家にも販売員の方々にもまずは正しい理解を持って欲しい、マスコミも間違った情報で煽る前に、お願いだから正しく理解して欲しい、そういう思いです。分配金を出すファンドはキャッシュフローを創造するファンドであって、それ自体が悪いわけではありません。問題は投資あるいは投信の本質が正しく理解されないことです。

分配金利回りとはその値段で買うことによって決まる、その人固有の取り崩し率でしかなく、ファンドの現在の利回りでも今後の期待利回りでもありません。そもそも利回り、投資リターンというものは、最後に売ってはじめて決まるものです。これは毎月分配などない頃から変わらない投資の本質だったはずです。それが、途中途中で分配金が出ることで、利益を少しずつ確定しているような錯覚に陥ってしまうのだと思います。

インカムカバー率だとか分配原資があと何ヶ月分だという情報を平気で出している評論家やマネー誌を見ると、この単純な投資の本質をすっかり忘れ、運用報告書の数字をひっくり返して分かった気になっているだけなのではないかと感じます。基準価額とは別枠でインカムを取っておくプールや、分配原資というプールがあるとでも思っているのではないかと心配します。インカムが仮に20円相当入ってきたとしても、円高になったり債券などの価格が下がったりすれば20円など吹き飛びかねません。今月の基準価額がもし先月比マイナスだとしたら、まさにそういうことが起こったわけです。分配原資もその多寡はファンドの優劣をまったく意味しません。とにかく「(分配金は)出したら減る、だから減るより多く増えなければ基準価額は下がる。だから(それらの数値ではなく)アセットクラスの今後こそが大事」ということです。

業界全体としても、正しい理解の普及に向けて努力しているところだと思います。当社も引き続き、正しい理解の助けとなるような分かり易い情報発信を続けていくつもりです。

教育・研修で心がけて来たこと。

今福氏:

キーワードで言うと、タイムレスとベースナレッジです。金融教育業者や販売会社との棲み分けのほかに競合他社との差別化があります。たとえば、ホットなマーケット情報などはどこでも提供でき差別化が難しい。我々は投信販売らしい時間軸での、つまり古くなりにくいストーリーの構築方法や、どんな時でも背骨になりうるようなベースナレッジにこだわっていきたいと思います。

個人投資家のリスクウェートのアップは可能か。

今福氏:

投信の世帯普及率は80年代には日米の差がほとんどありませんでした。因みに85年の日本は12.8%、米国は14.7%。90年代になって米国は40%、日本は8%台と大きく差がついています。これは、日本国内の投資環境があまりにも厳しかったことに加えて、401kに代表される制度や税制面の差があると思います。そしてもう一つ強調したいのが本当の意味でのミドルリスク・ミドルリターンの商品が日本に無かったことです。結局のところ為替の円安にベット(賭ける)する商品やロングオンリー(買い持ち)商品がほとんどで、多かれ少なかれマーケットに勝負をしにいくことにならざるを得ない。最近よく思うのですが、多くの、特に銀行のお客さまは「投資家」になんてなりたくないのではないでしょうか。個人投資家になる気などさらさらない方に対して、マーケットの波に巻き込むことなく資本市場のメリットを享受してもらえる方法が今まであまり提供されてこなかった。つまり、ほど良いリスクリターンでマーケットにベットしない商品が、日本における投信の普及のカギだと感じます。国内外の投資環境が整ったり、そうした投資環境に左右されにくい商品が多く出てくれば、普及率のキャッチアップも十分可能だと信じています。もちろん売る方と買う方両方の正しい知識は大前提です。

ありがとうございました。


聞き手:QBR 小林新(掲載日:2011年09月07日)

今福 啓之(いまふく ひろゆき)氏
日興アセットマネジメント マーケティング副本部長 兼 マーケティング部長
日本証券アナリスト協会検定会員

経歴

出身:神奈川県
1990年4月 野村證券入社 支店営業、研修部、金融法人部など
2000年3月 フィデリティ投信入社 インターミディアリー・マーケティング部長を経て
2007年9月 日興アセットマネジメント入社 現在に至る

   
    

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