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【第38回】 野村アセットマネジメント シニア・エコノミスト 住田 友男 氏 - リーマンショック以降の投資信託に対する意識調査 - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第38回】

野村アセットマネジメント シニア・エコノミスト 住田友男氏

リーマンショック以降の投資信託に対する意識調査

今回で6回目を迎えた野村アセットの投信の意識調査。リーマンショック以降で変化はあったのか?1回目からこの調査の当事者である研究開発センター資産運用調査室シニア・エコノミスト住田友男氏に投資家の意識の変化についてお伺いした。

まず、リスク商品販売を考える上で、最終投資家の意識調査をするのはなぜか。

住田氏:

販社さんとのコミュニケーションはいろいろなレベル、例えば販売員との勉強会や本部企画担当との会話やトップマネージメント同士の話などがあります。しかし我々は運用会社なので、直接最終投資家の皆様と会う機会がありません。そこで、最終投資家の皆様がどういう意識なのか聞く必要があります。また、同時に非保有者の声もダイレクトに取ることは大切です。アンケート調査の結果はメディアに公表したり販社との商品戦略にも生かされています。


ところで今回の調査で投信の重要性について変化は?

住田氏:

投信保有者の家計資産の構成を聞きますと投資信託は25%程度と上昇しています。但し、国内株式の比率が低下、預貯金比率が45%程度と上昇しました。結論としては投信の重要性は高まりましたが全体では国内株式の低下をカバーできず、預貯金比率が上昇したと言えます。年収や年齢など、いろいろな条件で見ても投資信託の構成は30%程度が上限だと思います。個人金融資産に占める投信のウェートは3.6%ですが、これを引き上げるには過去の調査と概ね変わっていない投資信託の保有率(17%程度)を引き上げることです。非保有者はリスクに対して抑制的であり回避的です。そのような人たちを投資家にするには彼らに相応しい商品があると思います。

毎月分配型投信の世代別保有の特色は?

住田氏:

投信保有者全体の毎月分配型ファンド保有率は約65%と予想通り高い結果となりました。世代別には50歳代、60歳代では平均を上回りました。毎月分配型投信の保有率の高さは分配金の必要性にも表れています。5年前の調査と比較して分配金は必要だという声が15%(54.2⇒69.4%)も上昇しました。分配金の使途も生活費・年金・小遣いの足しとの回答が60歳代では約35%を占めました。投資の初心者では、決算通知書が投資の安心感や実感になり運用状況を知るきっかけになるといった意見もあります。分配金の使途状況をもう少し詳しくみると「使わずに貯金している」「使わずに再投資している」が30%台と高いことが分かります。このことから「分配金は必ずしも高い必要はないのではないか」「分配頻度は必ずしも多くなくてもよい」と考えることも可能で、このことは、販売金融機関の商品戦略にも参考になるのではと思います。


分配金の必要性


分配金使途


リーマンショック以降の意識の変化は?

住田氏:

今回の意識調査で顕著に変わった点が2つあります。一つ目は投資家が意識する長期投資の時間軸です。2007年と比較すると1.5倍の約9.2年になりました。特に投信保有者の女性は、2007年の調査では30歳代から60歳台となるにつれて5.89年から6.91年と若年層のほうが短いという状況でした。それが、今回の調査では、11.33年から8.51年と「若い人ほど時間持ち」という結果です。2007年当時は女性の場合、結婚、出産、教育(家族)、リタイア、介護といった壁がたくさんあり長期が見渡せない状況があったのではないでしょうか。男性の場合、住宅ローンを抱えると30年、40年先を考えるようになると言われます。投信の保有のきっかけは周りの人がやっているとか漠然とした将来の不安かも知れません。社会保障制度という公助の不安から自ら将来の備えをする自助の手段の一つとして投信を選択する動きが特に時間持ちである女性の若年層の時間軸を10年超に延ばしたのではないかと推測されます。

二つ目は、期待リターンの低下です。ここでは、投資信託を購入してから手放すまでどれくらいのリターンを期待して投資をするのかを聞いています。2006年調査のときは、19.1%でしたが今回は11.1%と5年前と比較して半分となりました。この調査で現れた投資家像は資産運用を現実的に捉えている投資家です。


今回の調査の総括としては。

住田氏:

投資信託は二つの性格を有している商品です。一つは相場商品です。これはテーマファンドに代表され主に証券会社が得意な分野です。二つ目は制度商品です。これは仕組み売りという側面です。毎月分配型ファンドは仕組み売りの側面です。こうした中で長期投資のイメージが10年まで長くなったのは長期保有の重要性を訴え続けて頂いた販売会社のメッセージのお陰です。これから運用会社に求められるのは非投信保有者を保有者に変える商品の開発、投入でしょう。これによって個人金融資産に占める投信比率(3.6%)を引き上げ資産運用の裾野を拡大することです。私がこの業界に入った理由の一つは「日本人のサイフの中身を変えること」でした。つまり、貯蓄から投資の流れを加速させることです。そのためには投資家が「今何を求めているか」を知る不断の努力です。我々が資産運用という複雑なことを易しく伝えようとするとき投資家の理解や関心がどこにあるかを知ることが重要です。

ありがとうございました。


聞き手:QBR 小林新(掲載日:2011年10月05日)

住田 友男(すみだ ともお)氏
野村アセットマネジメント 研究開発センター 資産運用調査室 シニア・エコノミスト

経歴

出身:神奈川県
1989(平成元)年慶應義塾大学経済学部卒業
1998(平成10)年野村アセットマネジメント入社
入社来、マクロ経済調査、金融市場分析、マーケティングリサーチ、投資教育などに従事。現在に至る。

   
    

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