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【第42回】 モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信 代表取締役社長兼CIO 康 祥修 氏 - 混乱する金融市場で勝つためには、運用哲学を堅持することが大切 - 投資信託

 

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【第42回】

モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信 代表取締役社長兼CIO 康 祥修氏

混乱する金融市場で勝つためには、運用哲学を堅持することが大切

欧州の財政問題や世界景気の先行き不透明感を背景に投資家のリスク回避の動きが強まり、世界的に金融市場は不安定な状況にある。
―混乱する金融市場でプロはどのように運用するのか―、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信の社長兼CIO(最高投資責任者)の康氏に聞いた。

混乱するマーケットの中で、どのように運用を行いますか。

康氏:

10年~15年前と比べると、現在のマーケット環境はかなり変化しました。

技術の進歩により情報の伝達速度が速くなり、世界の投資家は同じ情報を瞬時に把握できるようになりました。ネガティブな情報を知った投資家は売り逃げるときに自分だけはうまく先に売り逃げようと考えます。多くの投資家が同じように考えて行動することで売りが膨らみ、相場が想定以上に下落する場面が目立つようになりました。

典型的なのは、昨年の10、11月のスペイン国債、イタリア国債に売りが加速し金利が急上昇した場面です。イタリア国債が今すぐにでもデフォルト(債務不履行)するかのような報道が続いたため、欧州債券の投げ売りが加速する展開となりました。

更に、ここ数年のマーケットで厄介な点は、既に売られてファンダメンタルズの観点から十分に割安になった状態からさらに売り込まれてしまうことです。マーケットが一方向に極端に動きやすくなっています。

仮に10年前に現在のような欧州財政問題が起こっていたとしても、欧州の債券がここまで大きく売られて、マーケットが急激に変動することはなかったと思います。

そのため私どもは、以前なら割安と判断し買いを入れていたであろう価格水準になっても一度に全ての資金を投じることはせず、ポジションを組むスピードを緩めたり、より段階的に購入するなどして、ある程度のバッファーを持ちながら運用しています。

想定外にマーケットが大きく調整したときこそ、運用の基本である投資哲学を忠実に守り、根気よくポジションを積んでいくことが重要だと思います。


運用で大切なことは何ですか。

康氏:

運用者にとって大切なことは1つだけです。投資哲学、運用スタイルをいかなる市場環境においても堅持することです。投資哲学の一貫性がなければ、長期で安定したパフォーマンスを生み出すことはできません。

また、負けた後に投資方法を変えて、たまたま1回勝ったとしても、それが長続きはしません。

いかなる時も、これまで培ってきた経験や投資哲学を踏襲しながら、マーケットの状況を冷静に把握してポジションを調整していくことが大切です。

具体的な投資哲学、運用スタイルについて教えてください。

康氏:

長期的な観点から割安なものに投資すること。つまり、ファンダメンタルズ分析に基づいた「バリュー・アプローチ」という考え方です。チャーティストとは異なる、ファンダメンタルズ分析に基づいたコントラリアン(逆張り)といえます。投資判断はファンダメンタルズに基づいて、割高ならあえて買わず、割安な時に買います。

コントラリアン(逆張り)は順張りと比べて短期的にはパフォーマンスがぶれることがありますが、我々の運用哲学であるバリュー・アプローチは、長期的な観点からはシャープレシオなどのパフォーマンス評価指標は安定的になります。

私ども運用者は投資家の資産をお預かりして運用することが使命です。投資家の方々が御自身ではできないこと、つまり、付加価値をつけた運用をすることが求められます。

例えば、1つの資産に偏ったポートフォリオではなく、複数の投資戦略でポートフォリオを組み、丸まった運用をすることも付加価値といえます。

5つの投資戦略があったとして、「5勝0敗」や「4勝1敗」を目指すと極端に偏ったポートフォリオになりリスクが高まりますが、戦略の組み合わせを効率的に行い「3勝2敗」を目指すことにより運用に安定感や継続性がでると考えています。

負けることもありますが、そういう時こそ投資哲学を堅持すること、マーケットの状況を冷静に分析して投資戦略を立て直すこと、次にどのように挽回するかを考えることが重要だと思います。

パフォーマンスが良かったときはどのような時ですか?

康氏:

市場がセンチメント主導で売られて、ファンダメンタルズから大きく乖離した局面で積極的なポジションを取ります。例えば、リーマンショックなど今まで起きたマーケットのショック(暴落)の際に、積極的にポジションを組んだ時にはより高いパフォーマンスを実現することができました。2001年のエンロン事件をきっかけに、米国の企業の債券が大きく売られましたが、ショックに耐えられる企業を分析し選別してグローバル社債を買い続けました。

ここ数年、ショック時の下落幅が大きくなっていますが、現在の海外の社債と国債の信用スプレッドはファンダメンタルズからみて明らかに乖離しています。グローバル社債は短期的な需給の混乱により価格がファンダメンタルズから一時的に乖離したとしても、中長期的には十分なリターンが獲得できると思います。

現状では、投資適格やハイイールドの社債に注目しており、スプレッドが拡大しているトリプルB格およびダブルB格セクターのグローバル社債は特に魅力的といえます。


これからの世界の経済状況をどのように予想しますか。

康氏:

2012年前半までは、相場のボラティリティーは高いと思いますが、欧州信用不安に対する過度な悲観論は後退しており、「ユーロ崩壊」のような最悪の事態はメーンのシナリオとして考えていません。

ただ、欧州債務問題の根本的な解決には時間を要すると思います。ITバブルは企業のレバレッジの問題、リーマンショックは金融機関のレバレッジの問題でしたが、今回は、政府(国)のレバレッジが原因であり、その解消(=デレバレッジ)には数年かかると予想しています。

そのため、世界経済は潜在成長率を下回る、強い経済成長ではない「マイルドな経済成長」にとどまると思います。

マイルドな経済成長は社債の投資家にとって魅力的な環境です。緩やかな経済成長のもとでは、企業は守りの経営を続けるため、債務比率を下げたりキャッシュフローを確保する方向に動きます。その結果、年間の事業利益が支払利息の何倍であるかを示す「インタレスト・カバレッジ・レシオ」が高い水準になり、企業ファンダメンタルズの観点から社債投資が魅力的になります。

現在は、大企業の社債、大きなサイズで発行している流動性の高い社債に注目しています。ショックによってマーケットの流動性がいつ枯渇するかわからない状況において、ある程度の逃げ道を確保する必要があるためです。

御社の強みは何ですか。

康氏:

私どもの強みはグローバルな組織力を活かしたプロダクトを提供できる点です。今後のマーケットの見通しを立てて、グローバルなプロダクトの設計にフォーカスを当てていきたいと考えています。

日本の大手運用会社の公募投信のサブアドバイザリー・ビジネスにも力を入れていきます。

日本での創業25周年を迎える本年4月1日より「モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社」に新たに商号変更します。これは、ただ単に社名を変えるのではなく、私どもがグローバルに展開するモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント・グループの一員であるということを社名においても統一し、日本のお客様にグループのグローバルなプロダクトを提供していきたいという意思表明です。

編集後記

康氏は43歳と若くして運用会社のトップに立ちながらも、おごりや気負いは感じられず、市場の混乱した局面でこそ冷静に判断しようとする姿勢が印象的でした。

追い風とはいえないマーケット環境の中、今後、日本の投資家にどのようなプロダクトを提供していくのか注目されます。


聞き手:QBR 望月瑞希(掲載日:2012年01月31日)

康 祥修(こう よしのぶ)氏
モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信 代表取締役社長 チーフ・インベストメント・オフィサー 兼 債券運用部長 グローバル債券運用チーム所属のファンド・マネジャー

経歴

1994年、山一證券株式会社入社、シンジケート部配属。その後、山一投資顧問株式会社グローバル運用部にて、主にグローバル債券の運用を担当。1998年、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信株式会社に債券アナリストとして入社し、1999年12月にグローバル債券運用担当ファンド・マネジャーに転向。2005年6月、第二運用部長(現 債券運用部長)に就任。2010年6月、取締役に就任。2010年12月、代表取締役社長、チーフ・インベストメント・オフィサーに就任。
早稲田大学理工学部卒業。日本証券アナリスト協会検定会員。CFA協会認定証券アナリスト。

   
    

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