株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

【第47回】 国際投信投資顧問 副社長執行役員 山内 一三 氏 - 経済の爛熟期に資産運用ビジネスはミネルヴァの梟(フクロウ)たれ! - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第47回】

国際投信投資顧問 副社長執行役員 山内一三氏

経済の爛熟期に資産運用ビジネスはミネルヴァの梟(フクロウ)たれ!

今月(6月)27日に退任する国際投信投資顧問の山内副社長執行役員へのラストインタビューです。

現場主義のルーツは機屋さんのフィールド・サーベイ

山内氏:

自分が所属していた大学の経営学部はフィールド・サーベイが必須で、自分たちは、福井県内で従業員が数人しかいない機屋さんの経営分析をやりました。小さな機屋さんでも「モノ」と「お金」の流れを分析していると、日本経済の姿が浮かび上がるという貴重な経験をしました。現場で調査分析する仕事の存在を知り、当時のゼミの先生に就職の相談したところNRI(野村総合研究所)を紹介されました。NRIでは企業アナリストがスタートでした。担当は「紙・パルプ」業界で、その後大阪で家電産業、東京でハイテク産業等を担当しました。81年からNRIロンドンで、マクロにつながる金、石油、ヨーロッパの産業動向を調べていました。84年に帰国。そのころ日本では生命保険、信託銀行などの機関投資家が、政策投資から脱却しポートフォリオ運用を始めたころです。そこで機関投資家のポートフォリオ運用のアドバイスをするストラテジストが必要となり、NRIから野村証券に移ってストラテジストの草分けをやらせてもらいました。その後、90年に日本株バブルが崩壊し、機関投資家の運用も一段落した折に、外資系証券会社からの誘いがあり、日本の成長株を発掘する企業アナリストに転職しました。


二人のトップのアドバイス

山内氏:

当時システム運用(変率リバランス運用)をやっていた国際投信委託(現国際投信投資顧問)に訪問し、企業調査に基づいたアクティブ運用の必要性を訴えたところ、当時の社長が、それならうちに来て日本株のアクティブ運用をやったらということになり、93年に国際投信に入社しました。その後、株式市場が下げ止まらないなかで当社の経営環境も厳しくなり、98年には当時の社長のアドバイスで運用からマーケティング担当に転身しました。

グロソブとの出会い

山内氏:

投信の銀行窓販の開始を前提に1年前にグロソブを設定したのがスタートでした。従って、従来の投信とは全く違う商品、つまり「短期売買」ではなく、銀行の預金という長期資金を投信に結び付ける商品でした。グロソブは定期的に分配金を支払う投信で、金利が付く定期預金に類似した商品性で、銀行でも、用途と商品の仕組みを理解して説明しやすい商品でした。加えて、銀行の長期の貯蓄性資金であれば、投信本来の長期投資が可能になると考えました。このため、徹底した情報提供を行い、運用会社、販売会社、お客さまとの三位一体での情報共有をすることで、長期に安心して保有してもらえることにつなげていきました。私自身も情報提供のためのセミナーや勉強会、運用報告会に赴き、年間で多いときに80-100回程度は講師をしたと記憶しています。

販売員と投資家はどう変わったか?

山内氏:

投信の販売において銀行では、若い行員を当てるところとベテランの専任者を当てるところがあります。有価証券投資の販売にはやはりキャリアが必要なので、ベテランの専任者がいる銀行の販売額が多くなる傾向にあります。通常、銀行の販売員は早くて3年、長くて4-5年で交代することが多く、キャリアを積む前に他の部署に異動するケースがあります。その意味で途中採用などによる専任者の配置は戦力です。そして特に窓販の黎明期に間違いなく大きく貢献したのは旧山一証券の社員の方たちだと思います。実に、地銀の商品選定などの担当者は旧山一証券の方たちが多くいらっしゃいました。

個人投資家は、窓販開始の初めのころは顧客セミナーなどでの説明時間の大半はリスクの説明に費やされました。しかし、最近では団塊の世代の方が増加しているためか、会社で有価証券の積立型累投制度や、自社の持ち株制度の利用などでの投資経験者が増え、有価証券の持つ価格変動リスクなど説明しなくてもご理解いただいている方が多くなっています。投資に対する知識も高まって来て、この世代がネットでの投信売買を始めています。

我々が銀行窓販に的を絞ってきたことで、従来とは違った投信ビジネスモデルの確立につながりました。そのひとつに徹底した情報提供があったのですが、販売会社に対してファンドの運用情報の週次開示を始めたこともそのひとつです。どのように運用してどのような結果になったのかをコメントすることで、投資家に安心感を与えました。又、投資家にもカラー刷りの分かりやすい資料で分配金の仕組みや、分配金が支払われると基準価額が下落すること等、窓販の初期の段階から積極的に情報提供して来ました。

投資家は購入してしばらくすると「なぜ、分配金から税金の取られる時と取られない時があるのか」などの質問が出て来ます。これに正確に回答する過程で、投信の仕組みや定期分配の分配原資などへの理解が深まったと思います。

わが国は成熟債権国段階に入り、資産運用の時代は来ている

山内氏:

現在直面する投信業界の苦境は、わが国経済が円高デフレの罠にはまりやすいことに起因すると思います。簡単にいうと、お客さまにとってパフォーマンスのでない運用商品は意味がありませんし、厄介なものです。その意味で円高デフレが今回は5年にもわたって続き、投資信託の主力である海外資産投資や株式投資にとって、厳しい投資環境が続いています。投資信託は円高デフレで利益が出にくい状態が続いており、時々お客さまから「リスクとは上下に振れる変動幅のことだとの説明を受けたが、こんなに一方的に下振れするとは予想もしていなかった。」とお叱りを受けます。日本経済は少子高齢化が進行するとともに、経済発展サイクルから見ると「成熟債権国段階」を迎えていると思います。すなわち経済成長力が低下し、企業も個人もこれまで成長期に蓄積してきた巨額の金融資産の国内での投資機会が減り、カネ余り期を迎えます。このような国では、投信などの資産運用ビジネスが出番を迎え、夕暮れに飛び立つ「知恵の神であるミネルヴァの使いである梟(フクロウ)」に例えられます。産業界がかつて謳歌した国際競争力に陰りが見える頃に、個人や企業や金融機関が持つ大量の国内の余剰資金を、どのように運用するのかが課題となります。自国の経済成長率が高く企業の競争力が強いときは、海外の産業や企業には投資しようとはしません。しかし自国の産業の衰退が見える頃からは、客観的に海外資産を評価し投資する必要性が高まり、知恵が付いてきます。わが国も、国内の資金余剰が深刻化し、国際競争力の低下で貿易収支が赤字に転じており、海外資産での運用が本格化するときを迎えていると思います。

にもかかわらず、現在は、リーマンショック後に資産バブルが崩壊し、欧米先進国が金融経済危機を迎えたため、欧米の経済が長期停滞し金利が大きく低下、海外に資金が出るどころか、海外から資金が逆流し円高基調が続いてきました。

いずれ欧米先進国のバランスシート調整が進み、欧米経済が徐々に正常化して、欧米経済の成長力が戻り始めると、金利上昇が見込めるようになるでしょう。その時には、成熟債権国としての海外資産投資が本格化するでしょう。そして遠からず投信業界の役割が注目される時を迎えると思います。

グロソブの現在(いま)

山内氏:

現在のグロソブの純資産はピークの約3分の1となっていますし、基準価額も低迷してきました。それでもおかげさまで口数ベースでみれば半分近くが残っています。リーマンショック以降の長い期間にわたって基準価額の下落基調が続いたので、必死に情報提供努力を続けてきましたが、残念ながら解約が続いているのは仕方がないと思っています。私は、グロソブは白クマだと言っています。白クマは夏に必死に食物を探して太って秋までに一杯脂肪を貯めて冬眠に備えます。太陽が見えなくなる頃に冬眠に入り、その最中に雌熊は子供を産みます。この間一切何も食べないので痩せてしまいますが、病気などではありません。そして春に太陽が戻ってくると元気に活動を始め体重も回復します。

問題はここからで、今後円安過程に入って投資環境が好転して基準価額の回復が進む局面で、「我慢して持ってて良かった」という投資家の信頼感をグロソブが取り戻せるか否かです。回復局面でグロソブが何をアピールできるかです。私は、やはり相対的に価格変動が小さいというリスクの低さと、先進国の国債などソブリン投資の安全性と、商品の仕組みの分かりやすさという、これまでの長所が再び活きてくると考えています。リーマンショック後に様々な高分配商品が生まれましたが、昨年からの世界経済の調整局面では思わぬ下がり方をしたものも多いです。投資家はもう一回、取るべきリスクについて考える時期が来ていると思います。

今回の金融危機にもかかわらず、設定当初から保有してくださっている投資家は、分配金を含めれば20%以上プラスのリターンが出ていますので、長期保有すればリスクは緩和し、儲かって来るということが、基準価額が戻り出したら実感できると考えています。

かつて98年からロシア危機による円高局面で基準価額は2年で半分近くになり、販売会社の間では、「グロソブは死んだ」と思われていました。でも、見放さなかったのはお客さまでした。2000年の初めになると、基準価額が低迷しているにもかかわらずぱらぱらとリピート・オーダーが出始めて来ました。そこで販売会社が不思議に思ってお客さまに聞いてみると、そろそろこれ以上の円高にならないのではないかという意見が出始めていて、リスクを出し尽くした商品はもうそんなには損をしないのではとお客さまが言い始めているということでした。結局、お客さまが追加買いを入れ始めてくださっていることに販売会社が気付き、グロソブの復活劇が始まりました。基準価額がどんと下がった後でも、我慢をして長期に保有すれば、価格変動リスクは長期保有で乗り切れるという「グロソブ神話」が定着しました。価格変動が怖く、安心して保有できないうちは投機資金、すなわち小口のポケットマネーしか投信には入って来ません。しかし、円安局面が始まり基準価額が戻り始めると、安心感の持てるファンドには、お客さまの根っこの資金(預金)がファンドの購入に向かい始めると考えています。貯蓄から投資への流れの復活です。

ありがとうございました。


聞き手:QBR 小林 新(掲載日:2012年06月20日)

山内一三(やまうち いちぞう)氏
国際投信投資顧問株式会社 副社長執行役員

経歴

出身:大阪府
最終学歴:1970年 神戸大学経営学部卒
1970年 株式会社野村総合研究所入社
1990年 スミスバーニー証券会社入社
1993年 国際投信委託株式会社(現国際投信投資顧問株式会社)入社
1993年 同社 取締役
2006年 同社 取締役副社長
2009年 同社 副社長執行役員(現在に至る)

   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »