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【第49回】 パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長 杉浦 和也 氏 - 時代の変化とともに運用商品は必ず陳腐化する。今、求められるのはトータルリターンが分かりやすい単位型商品 - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第49回】

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長 杉浦和也氏

時代の変化とともに運用商品は必ず陳腐化する。今、求められるのはトータルリターンが分かりやすい単位型商品

2009年の末に社名がAIGからパインブリッジに変わり約3年が経過した。社長に就任して2年目に入る杉浦和也氏に同社の特色、同社の目指すものについて伺った。

まず、パインブリッジの特色について

杉浦氏:

引き出しの多さです。もともと大きな保険グループの運用会社としてミッションを背負っていました。そのミッションは、さまざまな運用対象を相手に、できるだけトータルとしての保険資産の運用ニーズに見合うものをお届けするというものでした。その引き出しの中には今でも「原石」のようなものがあります。パインブリッジとしては、「原石」を持ちながら結果的にはお客さまのニーズに合う運用商品に徐々に集約していくというプロセスにあると思います。当社の強みは独立系運用会社としてスタートした運用会社にはない商品の品揃え、つまりお客さまの個々のニーズに応えるための運用機能を今も有していることです。

したがって、顧客ニーズの見極めが当社の生命線です。特に銀行等の窓販では、この10年間継続して担当している者が私も含めて3人います。日本にいる陣容は70名で、広い意味での営業、運用、ミドル・バックが各々3分の1ずつです。バランス型の運用商品が変額年金向けにあるので、日本株と債券の運用部隊があるのも特徴の一つです。国内系運用会社と比較すると外資系は一般的に転勤や配置転換が少ないと思います。運用資産残高の構成は、日本の場合、4分の3が投信ビジネスで4分の1が投資顧問ビジネスです。


単位型の設定に注力し始めた背景は?

杉浦氏:

投信の歴史をひも解くと1980年代の中盤から末まで、主役は単位型で追加型は亜流の商品でした。ところが、1998年の銀行窓販開始から銀行は仕切り販売はしないから単位型という商品はだめ、原則追加型で一旦商品を採用するとその商品を継続販売する、なぜなら募集期間に区切りがあるのは銀行の商品としては不適切だから、というのが一般的な認識になりました。ところが、リーマンショック以降、市場環境が一変して保有していれば儲かるというものではなく、分配金をもらっていても元本はどんどん減ってしまうという事実がだんだん分かってきました。一方で、追加型運用商品を数多く採用してしまったため本数もあり、管理も運営も大変。つまり品数があるので新しいものを採用するインセンティブがかつてより少ない。高分配型投資商品の次に来るものの答えがない状況でした。

そうした中、ある一時期にあれだけ売る保険商品は、ある意味で単位型ではないかと気付いたのです。銀行では個人向け国債や仕組み預金などの募集物の販売はできています。しかし投資信託は募集物はやらないという誤解がありました。それは、投資信託は価格で売買するものであって、価格は時価。時価が変動することは良いことで、時価を決めてある時にしか買えないというのは良くないと考えていたからではないでしょうか。つまり株式型、特に外債の為替オープン型の販売を前提にしたような思考回路です。しかし、ヘッジ型の運用商品が銀行の売れ筋商品になってきてその考え方に一部変化が出ています。ヘッジをしているので価格はあまり動かない。価格が動かないものに投資をするならいつ買っても同じではないか。一方で保険等の募集物に実績が出てきた。そこで、もしかしたら投信も募集物でやったら販売できるかも知れないと考える人も出てきたのです。

もうひとつ、これは私見ですが、高分配型商品に決別するには「トータルリターン」の思考が必要です。「トータルリターン」の思考は単位型のほうがしやすい。入口が一点ですので、どこまで持ったかで決まるからです。こういう投資対象をこういう期間で組入れますと提案すれば自ずと運用期間の採算が出てきます。このセールストークは「トータルリターン」の説明になるからです。トータルリターンで追加型を売ろうとすると入って来る始点がバラバラで、出て行く終点がバラバラだから期間中のリターンでものごとを考えることは難しい。一方、始点が一つ、終点が償還という単位型商品は説明しやすいのではないでしょうか。

バンクキャピタル証券ファンドについて

杉浦氏:

単位型で組成する中身は債券です。一部に組入れている運用会社もあると思いますが、バンクキャピタル証券を切り取って組成した商品を提供している運用会社は限られています。バンクキャピタル証券のみで組成したファンドは2009年7月が第一号でした。構想はその4か月前です。銀行の劣後債を入れる商品はリーマンショック後、価格が半分になるものも出ていたものの、当時は、なかなかこの証券を使うことができませんでした。一方、日本人特有のホームマーケットバイアスがあり、メガバンクには格付けでは語れない信頼度があります。メガバンクを素材とした運用商品だったら多くの行員が多くのお客さまに紹介できると考えました。単位型商品はある一定期間にお客さまにアプローチするので販売員全てが理解する必要があります。現在、バンクキャピタル証券の市場は10兆円以上あります。バーゼルIII問題で、古いものはカウントされないというリスクがありますが、投資家にとっては繰上げ償還されることで歓迎されるものだと理解しています。

タイミングで単位型を設定することはあると思いますが私たちは利回り商品(トータルリターン)で売ろうとしています。また、銀行さんにはこの方が合うと思っています。

現在、投信は投資配分を固定するパッケージ商品と投資配分に自由度があるアクティブ運用商品とに分かれてきています。世の中がこれだけ変化する時代に、一度決めたアロケーション(投資配分)を3年、5年、10年と継続するメリットはなかなかありません。この学習効果でパッケージからアクティブに商品が移ってきています。

お客さまの意識はパッケージだったら単位型、追加型ならアクティブというステージに入ったのかなと認識しています。本来運用商品は自由裁量を持っている運用者がいて、彼らに運用フィーを払う仕組みです。パッケージにして配分を固定すると販売員は説明しやすいと思いますが、自由裁量を放棄することになります。

時代の変化とともに投資信託の運用商品は必ず陳腐化してしまう。これが日本の投資信託の歴史です。ファンドの無期限化も当時の理屈でした。実は、お客さまは期限のあるものの方が分かりやすいと私は思います。ある一定期間預けていれば償還で資金が戻ってくるというほうが目途が立ちます。期限が無期限になるといつ売却したら良いか、あるいはいつ戻ってくるのか目途が立たないため分配金に目がいってしまうと思うのです。

主として地方銀行をお客にした理由は

杉浦氏:

当時は自分たちのように窓販に本格参入しようとした外資系は数多くありませんでした。地銀さんは各々戦略があるのでその戦略にこちらの提供商品が合致すると採用ファンドの残高は急増します。大垣共立銀行、広島銀行、静岡銀行グループなど同じ地域で差別化を志向する銀行さんとは長いお付き合いです。また、一度理解いただくと継続的に資金が流入する性格があるので運用会社にとってもありがたい資金です。

日本の個人投資家に訴えたいこと

杉浦氏:

投資家の投資理解度が思ったほど進んでいません。投資信託という商品は勧められて買うもので、自分でいいなと思って購入するものにはまだなってないと思います。だから投資信託が有利な運用商品の一つだという成功体験が必要です。そのためには、安定的なリターンがあるものを運用会社が提供することです。投資信託という商品はいろいろあります。そんな中で、ご自身の投資目的に合致しているものが何かを考えて欲しいと思います。2012年の今年はモメンタムのない(方向性のない)年です。どこでモメンタムが出てくるか分かりませんが、ご自分の投資資金の一部を償還までのリターンが見込まれる単位型ファンドでご検討頂ければと思います。そして成功体験を得ることです。

ありがとうございました。


聞き手:QBR 小林 新(掲載日:2012年10月01日)

杉浦 和也(すぎうら かずや)氏
パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長 CEO 兼 投資信託本部長

経歴

昭和60年03月 学習院大学 経済学部経済学科 卒業
昭和60年04月 野村証券投資信託委託株式会社(現・野村アセットマネジメント)
平成07年06月 ノムラ・アセット・マネジメント・シンガポール・リミテッド 課長、ビジネスデベロップメント・ヘッド
平成11年02月 野村ブラックロック・アセット・マネジメント株式会社 マーケティング部長
平成11年12月 プルデンシャル投信株式会社 営業部 次長兼銀行チャネル・リーダー
平成12年08月 メリルリンチ・インベストメント・マネジャ-ズ株式会社 投資信託部 ヴァイス・プレジデント
平成14年01月 同社 ディレクター、投資信託部門 投信営業部長
平成14年06月 AIG投信投資顧問株式会社 執行役員投資信託本部長
平成16年07月 同社 常務執行役員投資信託本部長
平成20年12月 パインブリッジ・インベストメンツ株式会社(旧AIGインベストメンツ株式会社) 常務執行役員投資信託本部長
平成23年06月 パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長 CEO 兼 投資信託本部長 就任

   
    

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