株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

【第51回】 鎌倉投信 社長 鎌田 恭幸 氏 - 三つの「わ」を育む場を提供。鎌倉投信が取り戻したい、資産運用を通じた社会の繋がり - 投資信託

 

投資信託 [ トップインタビュー ]

【第51回】

鎌倉投信 社長 鎌田恭幸氏

三つの「わ」を育む場を提供。鎌倉投信が取り戻したい、資産運用を通じた社会の繋がり

日本の会社(投資先)を元気にするためには健全な金融の再生が何よりも必要。その担い手である投資家(受益者)の育成は不可欠。公募、直販の投資信託にこだわる理由を中心に鎌倉投信鎌田恭幸社長に伺った。

独立系の投信会社の設立の背景について。

鎌田氏:

当社の成り立ちですが、BGI(バークレー・グローバル・インベスターズ 現ブラック・ロック)グループの日本法人出身4人が設立メンバーとなりました。私は、2008年1月にBGIを辞めました。直接的な理由は日本法人の統合ですが、世の中の金融の動きが、とりわけ2000年くらいから短期的な利益を求める志向性が強くなり、金融が社会に役に立っているという実感が自分にとって少しずつ薄れてきていたことです。辞めて金融から距離をおいてみたわけですが、いろいろな方々と話をするうちにあることに気づかされました。それは、金融が健全に機能しないと、どんなに素晴らしい企業やどんなに素晴らしい活動をしようとする人がいても、社会の中でよりよく発展しないというものです。そこで、自分の経験の中で何かできることはないかと考えた時、投信会社の設立に思い至ったのです。

鎌倉投信の創業の「志」(こころざし)は、三つの「わ」を育む場を提供することです。

それは、日本の普遍的な価値を感じることができる「和」、会話や言葉に溢れ、夢や希望を分かち合う「話」、人が集い、言葉が集い、夢が集い、そしてそれが広がる「輪」です。これは、古くからある普遍的な価値を大切にしながら新しいものに取り組んでいくという考え方です。金融の役割機能はお金を融通したり、お預かりした資産を増やしたりすることですが、資産運用では金融を通じて社会にどういう価値をもたらすかが大切です。言葉を換えると、人と人との繋がり、価値や富を次の世代に継承する世代と世代の繋がり、私たちが経済優先、合理主義優先で見失って来た『繋がり』を、資産運用を通じて取り戻そうと考えています。


ところで「結い2101」というファンド名の由来ですが。

鎌田氏:

ファンド名の「結い」は、人々が助け合い、協力し合っていく大切な日本の文化を受け継いでいこうという想いです。「2101」は次の世紀(22世紀)につながる価値を皆で創っていこうという意味です。100年続く投資信託を通じて200年、300年発展する企業を応援していこうという想いが「結い2101」に込められています。そこで、私たちがこだわったのは投資信託、公募、直販でした。投資信託にすることで満期のない金融商品の提供が可能となり、公募にすることで不特定多数の投資家が少額から参加でき、直販にすることで投資家の皆さんの大切なお金がどのような考え方で、どういった先に投資されているかが一目瞭然になると考えました。


ファンドのスタート直後の受益者の方たちの意識と、それがどう変化して来たかと認識されていますか?

鎌田氏:

最初のうちは社会性と利益性が同じ方向で交わるという考え方が素直に受け入れらなかったのではないでしょうか。私たちは投資の果実(リターン)=資産形成×社会形成×こころの形成と捉えていますが、一般的な投資家は、投資のリターンは社会性を犠牲にして利益をとっていくという、二項対立と捉えがちで、本当に社会性と利益性が同一方向で成り立つのかという疑問を持つ傾向にあります。しかし、中には鎌倉投信の理念に賛同して受益者になられる方も少なくないのです。鎌倉投信は、いい会社に投資をして、いい会社が発展成長して、働くひとが幸せになり、社会に価値をもたらし、利益を産み出し税金を納める。このような企業を支える投資家は社会貢献以外の何者でもないという投資に対する発想の転換が必要だとお伝えしています。受益者の方たちは、ここ2年半の経験(受益者総会やいい会社訪問など)の積み上げで本当に価値のある事業をしている企業があるということを認識され、社会性と利益性の両立に対する疑問が氷解しつつあると思います。


「結い2101」ファンドの受益者像について。

鎌田氏:

今、約3,800名の受益者がいらっしゃいます。投資のタイプ別では約65%が毎月積立投資、残りの35%がスポット投資(受益者の判断で随時投資をする方法)です。年代別では、30歳代、40歳代の方たちが60%超と一般的な投資信託保有者像に比べかなり若いと思います。この姿は、働き盛りでこれから資産形成をお考えの方たちがコツコツ投資をしているということでしょうか。一方、価値観に共感されるご高齢の方たちが退職金の一部を投資されているケースや法人のお取引も増えてきています。


ファンドの特性について。

鎌田氏:

リーマンショックのような不測の出来事はいつ起こるか分かりません。したがって、リスク管理は日々、独自の手法で見ています。運用者は特に下振れリスクを意識しています。運用の数値目標は、リスクを10%(年率)以内に、リターンを4%(信託報酬控除後)以上でターゲットにしているシャープレシオ(1リスク当りのリターン)は0.3から0.4です。運用開始以来2年半強の実績を見ると、リスクは目標の範囲に収まっていますが、リターンがやや目標より低い水準です。リスク管理にもつながるのですが、キャッシュポジションは約30%と比較的高位を維持しています。

理由は、(1)投資先企業を分散するのと同時にキャッシュを多く持つことでリスクを調整しながら運用している、(2)いつでも買い増しをできる状態にしておく、(3)中小型のポートフォリオを構成しているので解約対応の流動性を確保するためなどです。ファンドの規模が大きくなれば銘柄数が多くなり分散効果が期待できる分、キャッシュポジションは縮小することになります。


今後の目標と強化する施策は?

鎌田氏:

現在のファンド規模は20億円強ですが、当面の目標として100億円を目指そうとしています。

当初設定の7倍程度になったわけですが、設定から現在までは無名である鎌倉投信を世の中に知って頂いた2年半でした。今後の展開ですが、次の三つを考えています。 

まず、従来と同じように地道な活動によって広く知っていただく横の展開です。二つ目は試行期間を終了した既存のお客さまに積み増しをしてもらうためにコミュニケーションの頻度と質を高めることです。現在行っている、いい会社訪問や受益者総会も継続してより善いものにしていきます。三つ目が投資の価値観を共有できる法人など新たなお客さまの開拓です。


人材の継承について。

鎌田氏:

基本的には、経営理念と投資の考え方を文化としてきちんと根付かせることです。そういう意味ではまだ不十分でその努力が必要です。会社を設立する前に創業者同志で確認していることは(1)上場しないこと、(2)大手金融資本を入れないということです。資本構成の変化で自分たちの考え方を貫けない局面が出てくると思うからです。海外の運用会社で企業風土が変わらず100年以上も続いているのは独立系の運用会社です。私たちの目標はそこにあります。



聞き手:QBR 小林 新(掲載日:2012年12月05日)

鎌田 恭幸(かまた やすゆき)氏
鎌倉投信 社長

経歴

1965年島根県生まれ。47歳。
日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長を務める。
2008年11月に鎌倉投信(株)を創業。現在に至る。

   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »