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中国エコノミスト柯隆氏が語る「これからの中国経済 投資する際の注意点」 - 著名人インタビュー - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF

 

東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第4回】

中国エコノミスト柯隆氏が語る

「これからの中国経済 投資する際の注意点」

中国の4~6月期のGDP成長率は、物価変動の影響を除いた実質ベースで、前年同期比10.3%と、2ケタ成長を維持しました。GDP総額は、今年にも日本を追い抜き、米国に次いで世界第二位になるのは確実。世界経済の牽引役として注目が集まっています。果たして、中国経済はいつまでこの高い成長を維持するのでしょうか。また、景気後退局面に入った時、世界経済にはどのような影響が及ぶのでしょうか。今回は富士通総合研究所の主席研究員、柯隆氏に、中国経済の今後と、投資する際の注意点などについて話を伺いました。
中国経済の2ケタ成長はいつまで続くのでしょうか。
柯氏
エコノミスト柯隆氏
富士通総合研究所主席研究員、柯隆氏
私は、「今日の日本は明日の中国」という言い方をよくしますが、その意味は、このままの状態で経済成長を続けたとしても、中国の成長にはどこかで限界が生じるということです。それは、今の2ケタ成長の構造が、かつての日本によく似ているからです。
中国の2ケタ成長の裏には、莫大な金額の公共投資があります。インフラ整備の名の下に、政府が橋を造り、道路を整備し、巨大な港を建築する。これらにかかっている莫大なお金が、中国経済を2ケタ成長に押し上げているのです。それは、かつて日本が高度経済成長期に行った、国を挙げての公共投資にだぶって見えます。
実際、GDPに占める民間消費の比率は、わずかに34%です。本来であれば50%を超えていないと経済は安定して成長しないのですが、中国の場合、とにかく民間消費の力が弱い。それを補う形で政府の公共投資が、経済を押し上げているというのが中国経済の実態です。
日本もバブル経済が崩壊してからの「失われた10年」で、公共投資をどんどん行い、何とか経済が完全に崩壊するのを防いできました。それが結果的に何をもたらしたのか。民間の活力は低下する一方で、国債の残高だけがどんどん積みあがっていきました。
中国が今の形のままで経済運営を続けていくと、いずれ日本と同じ轍を踏むことになります。それだけは、何とかして避けなければなりません。このような経済成長のあり方は、いずれそう遠くないうちに限界を迎えます。決してサスティナブルではないのです。中国経済のこれからを考えていく場合には、まずこの点をしっかり押えておく必要があるでしょう。
どうして中国では民間投資が活発にならないのですか?
柯氏
エコノミスト柯隆氏
理由はいろいろあると思うのですが、そのひとつとして、中国の金融市場が未熟であることが挙げられます。
中国の金融市場の歴史は、たかだか20年くらいのものです。一方、イギリスや米国など先進国の金融市場は、すでに100年、200年という時を刻んでいます。歴史という点では、比べ物にならないくらい中国の金融市場は浅く、喩えて言うなら赤ちゃんのようなものなのです。
こうした歴史の浅さに加え、中国の金融市場の特殊性という問題もあります。
本来金融市場が持っている役割とは、家計部門から企業部門に資金を配分することにあります。家計部門は貯蓄を抱えている。一方で企業部門は設備投資などを行うために資金を必要としている。だから、金融市場というパイプを通じて、個人から企業に資金を融通しているのです。
もっと言えば、企業といっても生産性の高い企業でなければ、誰も投資しようとはしません。生産性が低く、したがって利益も伸びないような企業に対して、誰も資金を投入しようとは思わないでしょう。つまり、本来の金融市場においては、自然と生産性の高い企業に資金が融通されることになるはずなのです。
ところが中国の金融市場の場合、ここに大きな特徴があるのですが、国有企業が中心となって資金調達を行っています。国有企業というのは、たとえ業績が悪化していたとしても、政府がなかなか整理しようとしません。もし、そのようなことをやったら、国有企業に勤めている労働者によるデモが勃発する恐れがあるからです。
また国有企業の側も、政府はそう簡単に潰せないということが分かっていますから、非効率な経営を続けようとします。そして、実際にお金を貸し出す金融機関の側も、国有企業が潰れないのをいいことにして野放図な貸し出しを行っています。このまま行くと、中国の金融機関が抱える不良債権問題がクローズアップされ、中国の金融市場が大混乱に陥るリスクがあります。
あるいは、株価乱高下の問題もあります。上海総合指数を見ると、最高値をつけたのが2007年のことで、6170ポイントまで上昇しました。ちなみに現在の値段は2500ポイント前後です。この動きは、まさに暴落といっても良いでしょう。
このように株価が大きく乱高下すると、機関投資家は投資のチャンスということで喜ぶのですが、一方で個人投資家は大きな損失を抱え込むことになります。すると、株式市場から個人投資家が離れてしまいます。また大きな含み損を抱えていると、投資行動も慎重になり、ここがチャンスという時に大胆な投資ができなくなります。結果、民間投資が落ち込み、その代わりとして公共投資を活発にするしかなくなっているのです。
自由・開放路線を突き進んできた中国経済の流れは今後も変わりませんか?
柯氏
今後の中国経済を見るうえで注目されるトレンドは3つあります。
第1点目は、今の価格競争力を維持できるのかどうかということです。これまでの中国経済は、人件費などの労働コストを極力抑えることによって、世界の工場としての地位を確保し、かつ価格競争力の高い製品を輸出してきました。加えて、人民元が経済の実勢に比べて安い水準に放置されていたことも、中国製品の価格競争力をさらに強めました。
ただこれからは、強い価格競争力の源泉となっていた安い労働コストと人民元が、確実に値上がりしていくはずです。
まず人民元の上昇については、まったく疑う余地はありません。これからは確実に米ドルやユーロなどの主要国通貨に対して、人民元は上昇していきます。人民元高になれば、中国製品の海外市場における価格競争力は、どうしても後退してしまいます。
次に安い労働コストですが、これもすでに中国のさまざまな企業でストライキが行われていることからも分かるように、今後は労働条件の見直しが行われ、徐々に労働コストは上がっていくでしょう。ちなみに広東省だけでも、この5月、6月で合計36回ものストライキが行われています。
このように、人民元高と労働コストの上昇が生じれば、中国製品の価格競争力は着実に後退します。中国経済にとっては大きな転換点ともいえるでしょう。
第2点目は、もっとオープンな経済になれるかどうかということです。自由・開放路線を推し進めてきた中国ですが、米国や欧州ではまだ中国の市場開放は十分行われていないという認識が一般的です。言うなれば、今はまだ守られた経済というわけですが、その開放が進めば、中国経済は大きく変わります。
そして第3点目は中国に滞留している巨額マネーの動きです。中国が保有している外貨準備は総額2兆5000億ドルにも上ります。それがどこかのマーケットに向かって動いたら、そのマーケットに大きなインパクトを与えてしまいます。
2009年には中国のエネルギー消費量が世界一になりました。このまま中国が資源をどんどん消費するようになったら、間違いなく世界は資源不足に陥りますし、豊富な資金力を用いて資源確保に動いたら、資源価格の急騰を招くことにもなります。巨大化している中国経済のインパクトは非常に大きなものになりますから、中国経済のビヘイビアが、国際ルールに則って動いてくれるかどうかという点が、これからの国際経済にとって、とても大切になってきます。現状、中国はWTOには加盟していますが、OECDやサミットには加盟していませんので、こうした国際協調の場に中国をどんどん招きいれていくという姿勢を、先進諸国が持つべきです。
中国に投資する際の注意点を教えてください
柯氏
エコノミスト柯隆氏
今後、日本と中国の経済関係は、さらに相互依存の度合いが高まっていくと思います。ただ、そのなかで大事なことは、過度に依存するのではなく、中国経済がスローダウンしたとしても、日本が独自に経済を運営していけるだけの分散を効かせるということです。つまり、10のうち全部を中国に依存するのではなく、6程度に抑えておき、残りはカンボジアやベトナム、その他の地域・国との経済関係をきちっと構築していくことが大切です。それは、個人の資産運用にも当てはまるでしょう。とにかく、中国一辺倒で投資しないようにして、分散投資効果を高めるようにする必要があります。
また、個人投資家の資産運用に絡んだところで話をするならば、知らないものに投資するのは極めて危険なので、もし中国企業に投資するならば、自分で徹底的に調べてからにすること。中国経済は成長しているから、何でも買っておけば良いといったような、安易な気持ちで投資しないようにしましょう。とにかく中国の株価は乱高下しやすいので、個別銘柄に投資するならば、買った後も状況をしっかりフォローしておくことが大切です。
このような手間をかける時間的な余裕がないという人は、プロに運用してもらえる投資信託やETFのような指数に連動したわかりやすい投資商品を買って、長期で保有するというのが、分散投資効果という点から考えても合理的だと思います。
掲載日:2010年月08月17日
柯 隆(かりゅう)氏柯 隆(かりゅう)氏プロフィール
富士通総研経済研究所 主席研究員
1992年 愛知大学法経学部卒業
1994年 名古屋大学大学院経済学修士
1994年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年 富士通総研経済研究所主任研究員
2005年 同上席主任研究員
2007年 同主席研究員

【主な著書】
2010年中国経済攻略のカギ PHP研究所『Voice』編集部 2010年1月
華人経済師のみた中国の実力 日本経済新聞出版社 2009年5月 共著(朱炎、金堅敏)
中国の不良債権問題 日本経済新聞出版社 2007年9月
中国の統治能力 慶應義塾大学出版会 2006年9月
中国に出るか座して淘汰を待つか! 中経出版 2002年3月
最新中国経済入門(共著) 東洋経済新報社



   
    

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