エコノミスト武者陵司氏が語る「米国経済は立ち直り、先進国経済は回復へと向かう」 - 著名人インタビュー - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF
東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]
【第5回】
エコノミスト武者陵司氏が語る「米国経済は立ち直り、先進国経済は回復へと向かう」
- 中国やインドなど、新興国の経済が2ケタ成長を続けるなか、一方で先進国経済は元気がないように思えます。経済が成熟段階にあり、もはや新興国のような高い経済成長率は期待できず、リーマンショックやギリシャショックなど大きな経済ショックの震源地になり、加えて財政事情も厳しい、というのが現状です。果たして、米国や欧州、日本といった先進国経済に未来はあるのか。 ETFを活用した先進国グローバルマーケットへの投資を考えるにあたって武者リサーチ代表で、エコノミストの武者陵司さんに先進国経済の見通しについて話を伺いました。
- NYダウは5月まで順調に回復してきましたが、ここにきて乱高下が続いています。一部では二番底をつけにいくという見方も増えてきていますが、米国経済は回復するのでしょうか。
- 武者氏

武者リサーチ代表 武者陵司氏
- 結論からいえば、今の米国経済は踊り場にあり、回復ペースはスローダウンしています。実際、今の米国経済をめぐっては、さまざまな声が上がっています。「二番底をつけにいくのではないか」、「日本型デフレに突入してしまったのではないか」、「リーマンショックと同じような恐慌が来るのではないか」というのが、それです。
- 実際、どのような手段で株価に影響を及ぼすのでしょうか。
- 武者氏

- 中央銀行の金融政策というと、政策金利を上げるか、それとも下げるかという話に終始してしまいがちですが、決してそうではなく、今のFRBはさまざまな金融調節のチャネルを持っています。それらを縦横に使いこなせば、株価に対してプラスの影響を及ぼすことができます。
- 一方、企業部門のファンダメンタルズは、どの程度まで回復しているのですか?
- 武者氏
- 在庫調整はだいぶ進んでおり、2006年7月前後の水準まで減ってきました。雇用については、労働分配率といって国民所得のうち勤労者世帯が受け取る雇用者報酬に対して支払われた比率が過去最低水準まで低下しています。それだけ企業のコストが下がったということです。
- ギリシャ問題で揺れる欧州経済の行方はいかがでしょうか。
- 武者氏

- ゼロサムで考えると、ギリシャ経済が落ち込んだことによって、ユーロ経済全体に悪影響が及ぶということになりますが、プラスサムで考えれば、決してそのようなことはありません。確かにギリシャ経済は大きな後退を余儀なくされているわけですが、一方でドイツ経済にとって今の状況は決して悪いことばかりではないのです。
- 日本経済は回復するでしょうか。
- 武者氏

- 日本経済も、いずれは力強く立ち直ると思います。ただ、そのためには、ひとつだけ懸念材料があり、その払拭をどうするのかということが、大きなテーマになると思います。
- 掲載日:2010年月09月01日

1973年3月 | 横浜国立大学経済学部卒業 |
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1973年4月 | 大和証券株式会社入社 調査部配属、 ~1987年まで企業調査アナリスト、繊維、建設、不動産、自動車、電機・エレクトロニクスを担当 (1982年調査部の分離独立で大和証券経済研究所に出向、1989年大和総研設立により同社へ出向) |
1988年1月 | ニューヨーク駐在、大和総研アメリカでチーフアナリスト、米国のマクロ、ミクロ、市場を調査 |
1993年5月 | 大和総研企業調査第二部長 |
1997年1月 | ドイツ証券(旧称:ドイチェ・モルガン・グレンフェル証券東京支店)入社、2005年まで調査部長兼チーフストラテジスト |
2005年5月 | ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーに就任 |
2009年7月 | 株式会社 武者リサーチ設立 ドイツ証券株式会社 アドバイザーに就任 ドイツ銀行東京支店 アドバイザーに就任 ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 アドバイザーに就任 |
- 2002・2003年の米国Institutional Investorランキング日本株ストラテジスト部門1位。
- 2002年度信州大学経済学部、非常勤講師「日本経済論と株価予測の実践経済学」を担当。
- 2007年4月より埼玉大学大学院客員教授兼任。「日本経済と証券市場」を担当。
【主な著書】
日本株大復活(2009年7月)PHP研究所
新帝国主義論(2007年4月)東洋経済新報社
アメリカ 蘇生する資本主義(1993年)東洋経済新報社
摩擦と再編の構図(1982年)教育社