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ファイナンシャルプランナー藤川太氏が語る「資産運用相談の傾向と資産形成のポイント」 - 著名人インタビュー - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF

 

東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第7回】

ファイナンシャルプランナー藤川太氏が語る

「資産運用相談の傾向と資産形成のポイント」

再び円高、株安が進行しています。外貨に投資すれば為替差損、株式を保有すれば値下がり損ということで、資産運用に対して腰が引けてしまう方も多いのではないでしょうか。こうした状況のなかで、個人はどういう資産運用を考えているのか、それは正しいことなのかどうなのか、個人の資産形成に必要なことは何なのかということを、ファイナンシャルプランナーの藤川太さんに伺いました。
今年に入って円高と株安が進みました。個人の方から受ける資産運用相談の中身に、何か変化は現れてきていますか?
藤川氏
ファイナンシャルプランナー藤川太氏
ファイナンシャルプランナー
藤川太氏
やはり運用がうまくいっているという人は、非常に少なくなっていますね。なかには人生が変わるくらいの損失を出している人もいます。当然、そうなると運用を止めようと考える人が増えるのも、仕方がないことだと思います。
今、損失を被っている個人には、2003年以降の新バブルともいうべき時期から投資を始めたという方が大勢いらっしゃいます。日本の株価は2003年以降、景気の回復とともに比較的堅調に推移していましたから、多くの方が「投資って上手くいくものなんだ」と思うようになりました。ところが、そこにサブ・プライムローンショックとリーマンショックという、大きな金融ショックが起こり、株価は大暴落。大きな損失を被ってしまったのです。
ただ、考えてみれば、この手の経済危機というものは、これまでも10年に2回くらいは生じていました。ここで注目すべき点は、こうした株価の大暴落を受けて、心が完全に折れてしまったという人と、そうでない人とに二分されていることです。
その明暗を分けた一番のポイントは、やはり過剰なリスクを取っていたのかどうかという点に尽きるでしょう。
過剰なリスクを取っていた人は、自分自身の体力以上のリスクを取って運用していた人です。結局、儲けることにばかり目が向いてしまい、大半のお金を投資に注ぎ込み、気がついたら資産が半分になってしまったというケースです。
これに対して過剰なリスクを取っていなかった人は、儲けることよりもリスクに目が向いていました。株価は下がることもあるから怖い。そういう気持ちが強かったので、自分の体力以上のリスクを取らずに済んだのです。言い換えれば、資産運用で大きく稼ぎ、人生を変えようなどとは考えていなかった人です。
結局、前者のケースだと、ギリギリのお金で投資をしているので、資金繰りが厳しくなってきた時に、含み損の出ている株式を売却していかなければなりません。つまり損失を実現せざるを得ない状況になります。
これに対して後者は、当面、使うお金で投資をしていなかったので、とりあえず長期投資をすることができる。株価が回復するのを待つことができるわけです。この点は、資産運用をする際に必要なリスク管理を考えるうえで、とても重要になってきます。
自分自身で負えるリスクを超えてしまった人と、そうでない人との明暗を分けたのは、何だったのでしょうか。
藤川氏
「自分でリスクを管理しながら運用しましょう」と言うのは容易いことなのですが、実際にはとても難しいことです。上手く行っている時は、誰もが調子に乗りやすいからです。儲かるようになると、もっと儲けたいという気持ちになりますし、「簡単に儲かるんだ」という油断も生じてきます。結果、投資のポジションをどんどん高めてしまい、挙句の果てに大きくやられてしまう。そういう人がたくさんいらっしゃいます。
どうしてそうなるのかというと、運用の目的がしっかり見えていないからです。子供の教育資金、住宅資金のために運用したいというように、運用の目的が明確に見えている人の場合は、比較的リスクが抑えやすくなります。たとえば、子供の教育資金を運用するのに、全財産を失うようなリスクを取ろうなどとは、誰も考えないからです。
ただ、一方では運用する目的がないという方もいらっしゃいます。
そういう方に対してアドバイスをする場合は、まず、どういう運用をしたいのか、ということを聞くようにしています。それは、人生を変えるくらい大きく儲けたいのか、そこそこ儲けたいのか、インフレヘッジをしたいのか、とにかく元本を守りたいのか、ということです。
とにかく人生を変えるほど儲けたいというのであれば、分散投資などをしている余裕はどこにもありません。もっともリスクの高い運用になりますが、自分の得意な投資対象を使って、一点集中で、大きく儲けるような戦略が必要です。
そこそこ儲けたいという場合は、一点集中型とまではいかないまでも、やはり多少のリスクを取った運用が必要になります。
インフレヘッジが目的であれば、全資産のうち1~2割程度をリスク資産にしておけば良いでしょう。
そして、絶対に元本を守りたいという場合は、リスク資産などいっさい組み入れずに、預貯金のみの運用に徹するべきです。
いずれにしても、リスクの上限を決めることが大事です。私が資産運用のアドバイスをする場合は、まずその点を重視します。それさえ決めてしまえば、あとはマーケット次第です。マーケットが良ければ儲かりますし、悪ければ損をします。
そしてその時、どんな投資対象で運用するのかという問題が浮上してきますが、大半の方は「自分で選ぶのは難しい」と考えています。なので、投資信託やETFを使ってマーケットの動きに乗っていく、ということになります。
リスクの上限を決めた後、実際に、どういう流れで具体的なポートフォリオの比率を決めていくのですか?
藤川氏
どうやって投資するかということですが、全資産のうちどこまでリスクを押えるかということが決まったら、後はどういう資産にお金を配分していくのかということを考えるだけです。
ただ、投資の内容を考える前に、ひとつだけ確認をします。
たとえばリスク資産の比率を2割、あるいは3割という具合に決めたとしたら、そこから目標リターンを計算することができます。目標リターンは、リスク性資産で5%程度、安全性資産で1%というのが、目安です。ですから、もし絶対に元本を守りたいという考えなら、安全性資産を100%組み入れることになり、目標リターンは1%になります。
これに対して、リスク性資産を全体の25%組み入れると、ポートフォリオ全体の目標リターンは2%、50%まで高めた時の目標リターンは3%、75%組み入れれば4%、全部をリスク性資産にすれば5%ということです。
ですから、インフレリスクに対応するためのポートフォリオを組みたいというような場合には、せいぜいリスク性資産を20%程度にしておけば、十分ということになります。
でも、実際問題、このようにして比率を決めていっても、損失が生じた場合には、心が折れてしまうケースがあります。資産運用は継続しなければ意味がありません。途中で心が折れて、もう資産運用は嫌だ、ということになると、損を覚悟で資産を売却しなければならなくなります。そうならないようにするためにも、今回のような経済ショックにどこまで耐えられるのかということを、確認するようにしています。
ファイナンシャルプランナー藤川太氏
そのために、どこまで損をしたら資産運用が嫌になりますか、ということを、必ず確認します。金額ベースで100万円ですか、10万円ですか、それとも1000万円ですか、というように聞いていき、そこで出た金額を3倍にします。それが投資の限界金額になります。そして、先ほど申し上げた、目標リターンから弾き出したリスク性資産の組入比率で計算される金額と比較し、どちらか低い方で、最終的なリスク性資産の額を決めるのです。
たとえば、300万円を、目標リターン3%で運用したいという場合、リスク性資産の組入比率は50%ですから150万円です。で、その人が40万円までの損失になら耐えられるというのであれば、それを3倍にすると120万円。つまり、リスク性資産に投資する金額は120万円が限度ということになるのです。
そこまでリスク管理を行えば、あとは何を買ったとしても、そう心が折れることはありません。
実際には、その後に何を組み入れれば良いのかという問題になるかと思うのですが、やはり複数資産への分散は必要ですか?
藤川氏
ギャンブラー型の人だと、個別銘柄での運用を好む傾向がありますが、個別銘柄投資というのは、5割程度の損失が生じるリスクを覚悟しておく必要があります。これに対して、分散の効いたポートフォリオなら、3割程度の損失で抑えられますが、結局のところ、リスクの上限を決めてしまえば、あとはその人の好みということになります。個別銘柄なら、大きく損するリスクがある分だけ、投資できる金額は小さくなりますし、逆に分散の効いたポートフォリオなら、投資できる金額は大きくなるというだけの違いです。
ただ、相談に見えられる方の傾向をお話すると、どちらかといえば分散投資型のポートフォリオを前提に運用しようという方が大半です。そこで、何に分散すれば良いのかという問題が生じてくるのですが、かつて分散しようとしたら、株式と債券、せいぜい不動産というくらいしか選択肢がなかったのですが、昨今は投資信託やETFの種類が多様化したので、かなり幅広い資産に分散できるようになりました。
たとえばETFだけでも、不動産やコモディティにまで投資できるわけです。かつてコモディティに投資しようとしたら、それこそ先物取引か、商品ファンドくらいしか投資手段が無く、分散投資の一環として、一部に組み入れるという使い方が難しかったわけですが、コモディティに投資できるETFが登場したことによって、この不便さは一気に解消されました。特にコモディティの価格は、株価との相関性が低いので、分散投資のツールとしては非常に有効です。
マーケットの先行きは不透明ですが、もう投資はしたくないという方は増えていますか?
藤川氏
実は、逆に今がチャンスと考えている方が増えています。ただ、話を伺っていると、運用する目的を持たずに、ただ漠然と今がチャンスと思っている方が多いですね。景気もいい加減底を打っているようだし、ふと気がつくと株式がこんなに安くなっている。だからチャンスだと考えているのだと思いますが、とにかく明確な目的があるわけではないので、先にお話したような流れで、どういう資産運用をしたいと考えているのかを探っていくことになるのです。
まずは目的をしっかり決めておくこと。そのうえで、どこまでリスクが取れるのかを決めること。そこから資産運用が始まるのです。
掲載日:2010年月09月21日
藤川 太藤川 太(ふじかわ ふとし)プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFPR認定者)
家計の見直し相談センター ( http://370415.com )
生活デザイン株式会社 代表取締役
山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していた。「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。2001年の設立以来13000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。

【主な著書】
お金が貯まる生き方 編集協力 プレジデント社
小遣いは削るな! サンマーク出版
20代から始めるお金の設計 だいわ文庫
貯まる!資産3倍手帳 朝日新聞出版
サラリーマンは2度破産する 朝日新聞出版
週刊朝日別冊「家計見直し計画」 編集協力 朝日新聞社
週刊朝日別冊「年金力をつけよう」 編集協力 朝日新聞社
生命保険料は半額になる! 共著 大和出版
生命保険お得な見直し法 共著 毎日新聞社
得するあなたの資産運用早わかり 共著 実業之日本社
最新 あなたの生命保険 共著 日本実業出版社 など



   
    

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