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不動産アナリスト石澤卓志氏が語る「REIT市場の今後の動向」- 著名人インタビュー - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF

 

東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第13回】

不動産アナリスト石澤卓志氏が語る

「REIT市場の今後の動向」

不動産投資信託のマーケットが徐々に回復しつつあります。東証REIT指数(終値ベース)は、2007年5月末に過去最高値の2,612ポイントをつけた後、サブプライムローンショックやリーマンショックの影響で2008年10月には704ポイントまで急落。しかし、2010年7月近辺から徐々に反転の兆しを見せ、11月には1,000ポイントに回復しました。日銀が量的金融緩和の一環として、不動産投資信託の買入れを発表したことも支援材料になっています。REIT市場は本格的に底を付けたのか。今後の動向について、みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏に伺いました。
東証REIT指数が1,000ポイントを回復してきました。不動産投資信託は底を打ったと見て良いのですか?
石澤氏
石澤卓志氏
みずほ証券チーフ不動産
アナリスト石澤卓志氏
東証REIT指数の動きを見ると、この4年間で非常に大きく振れたことが分かります。2006年11月から急上昇し始め、その動きは2007年5月まで続きました。そこからサブプライムローン問題が浮上し、リーマンショックにつながり、東証REIT指数は2年間にわたって下落しました。それがようやく落ち着いたのが、昨年2月のこと。そこから上昇、下落を繰り返し、今年7月から上昇傾向が続いています。
東証REIT指数(終値ベース)は、わずか2年間で2,612ポイントから704ポイントまで下げたわけですが、このように急激な下げとなったのは、保有株主に偏りがあったことが一因です。
実際、不動産投資信託の発行済み株式数の約半分は、銀行などの金融機関によって保有されていました。そして、2007年6月からの下げ局面で、多くの金融機関が持ちきれずに損切りをした結果、REITの株価は下落していったのです。
本来、ここまで株価が下がれば、通常はリスクマネーが底値を拾いに来るものですが、サブプライムローン問題の深刻化などによって外資系ファンドの力も衰えていたため、なかなか買いが入らず、さらなる株価の急落を招きました。
ただ、昨年10月以降、金融機関の間で不動産投資信託への投資を見直す動きが出てきました。株価が急落した結果、配当利回りが上昇したからです。また、株式市場の低迷が続き、有望な投資対象が少なくなったことも、不動産投資信託の見直しにつながりました。
特に今年10月あたりから、不動産投資信託に投資したいという声が、地方銀行などを中心に高まってきています。私も地方に招かれてREIT市場についてご説明申し上げる機会が急増しています。
このように、地方銀行を中心に金融機関の動きが見えるようになると、外国人投資家も不動産投資信託に食指を伸ばしてくるようになります。外国人投資家は、不動産投資信託の発行済み株式の半分近くを金融機関が保有しており、市場への影響力が強いことを知っていますから、金融機関に不動産投資信託を買う動きが出てこないと、買ってきません。ここに来てようやく、金融機関の間で不動産投資信託を見直す動きが出てきたことから、外国人投資家も動き始めました。
国内の金融機関、外国人投資家が不動産投資信託に注目し始めましたから、東証REIT指数も底値を付けたと見て良いでしょう。ここから先、東証REIT指数は1,200ポイントから1,300ポイントくらいの上昇は期待できそうです。
図表1:東証REIT指数とTOPIXの推移
図表1:東証REIT指数とTOPIXの推移
(注)
1.2002年10月1日~2010年11月24日の東証REIT指数とTOPIXの推移を示したもの。
2.2002年10月1日~2003年3月31日の東証REIT指数は、みずほ証券が算出した。
3.TOPIXは、2003年3月31日を 1,000として指数化した値である。
出所:東京証券取引所の資料により、みずほ証券が作成
日銀が量的金融緩和の一方策として、不動産投資信託の買い入れを行うことを発表しました。マーケットに及ぼす影響をどう見ていますか?
石澤氏
当初、ETFと不動産投資信託の合計で5,000億円規模の買い入れということでした。日銀が買い入れ措置を公表したのは10月5日ですが、9月末時点の時価総額は不動産投資信託が約3.1兆円、ETFが約2.3兆円だったので、不動産投資信託については少なくとも半分程度、2,500億円程度の買い入れがあるのではないかという期待感がありました。実際に発表されたところでは、不動産投資信託の買い入れ額は500億円にすぎず、残りの4,500億円がETFということですから、不動産投資信託の買い入れ額はかなり少額に止められたということになります。
ただ、よく考えてみると、日本の不動産投資信託市場は、配当利回り狙いで投資する投資家が多いため、頻繁に売り買いを繰り返すよりも、中長期に保有し続ける傾向が強く、流動性が低くなりがちです。
図表2:J-REITの平均配当利回り等の推移(時価総額加重平均)

図表2:J-REITの平均配当利回り等の推移(時価総額加重平均)
出所:みずほ証券
日銀は来年11月末を目処に限度額まで買い入れる「有言実行」の対策としているので、どのくらいの金額まで買い入れることができるのかを詳細に精査したうえで、500億円という数字をはじき出したのだと思います。つまり、500億円という買い入れ額は、実行性の高い数字なので、この分は着実に、マーケットにインパクトを与えます。その意味では、相応に評価できる金額だと考えています。
これに加え、日本の不動産投資信託市場をターゲットにしたファンド・オブ・ファンズの新規設定が、これから増えてくる可能性があります。
これまで米国やオーストラリアなどの不動産投資信託を組み入れて運用するグローバルタイプのファンド・オブ・ファンズが主流でしたが、グローバルタイプのファンドは海外資産を組み入れて運用するため、円高が進むと為替差損が発生し、基準価額が下落するリスクが浮上します。特にここ最近、急速に円高が進んだことから、為替リスクに対して慎重な投資家が増えてきました。そのため、グローバルタイプのファンド・オブ・ファンズよりも、日本の不動産投資信託を組み入れて運用するファンド・オブ・ファンズの関心が高まってきているのです。
図表3:REITを運用対象とするFOFの状況
図表3:REITを運用対象とするFOFの状況
(注)ETFを含む
出所:みずほ証券
このように、日本の不動産投資信託を組み入れて運用するファンド・オブ・ファンズの新規設定が増える気配が見られることも、不動産投資信託のマーケットにとっては追い風になっています。
国内の不動産市況はどうですか?
石澤氏
東京の丸の内、大手町は底入れしてきたと思いますが、やはりまだ地域によってまちまちです。たとえば東京都内を見ても、西新宿や大崎、五反田あたりの需要は減少傾向にあります。西新宿では、今年2月にオープンしたテナントビルの入居がゼロというところもあり、地区の空室率は過去最悪の状況にあります。
基本的にオフィスビルは景気に遅行する傾向がありますが、住宅は一歩先に回復する傾向があります。住宅は個人ユーザー中心のため、金利低下や減税などの措置が需要に直接的に影響し、また関連産業のすそ野が広いため景気への波及効果も大きいのです。
実際、マンションについては今年3月あたりから回復傾向が見られ、売行きを示す契約率も70パーセント後半から80パーセント程度と高くなってきています。これまで市況が冷え切っていた大阪でも、マンション市場については5月頃から回復してきました。こうした動きを見ると、現物不動産市況も、最悪期は脱したといえるでしょう。
不動産投資信託のマーケットは、これから本格的な回復局面に向かっていくのでしょうか。
石澤卓志氏
石澤氏
サブプライムローン問題やリーマンショック以降、国内の不動産投資信託マーケットでは、上位REITと下位REITの二極化が進んできました。言うなれば、買われるREITと売られるREITがはっきりと分かれてきたのです。
不動産投資信託のマーケットは、前述したように東証REIT指数で1,200ポイントから1,300ポイント前後の上昇が見込まれますが、恐らく、上位REITと下位REITの二極化は、これからますます進んでくるでしょう。特に、これから地方銀行などの金融機関が、不動産投資信託への投資を積極化させるとしたら、なおのこと、その傾向は強まります。というのも、金融機関が不動産投資信託を購入するとしたら、やはり信用力のある上位REITを中心とせざるを得ないからです。
また、一部の下位REITのなかには、ファンドの継続そのものに疑義が生じている銘柄もあります。このところ、不動産投資信託同士の合併が行われるようになり、それによって信用力を高めようという動きもありますが、なかには弱者連合で合併が行われたケースもあります。このように弱い者同士で合併が行われた場合、結局のところ信用力を高めることができず、借金の返済が滞り、破綻に追い込まれてしまう恐れが生じてしまいます。
以前、「ニューシティレジデンス投資法人」が資金繰りの悪化などから経営破綻に追い込まれましたが、不動産賃貸事業は好調だったことなどから、例外的な事例と解釈されました。
しかし、再び不動産投資信託で経営破綻が生じたら、もはや不動産投資信託の破綻は例外的であるという言い逃れはできなくなります。つまり、一般企業と同じように、不動産投資信託の破綻は頻繁に起こりうると見なされるようになり、結果的に不動産投資信託の資金調達にマイナスの影響が及ぶ恐れがあります。これが、今の不動産投資信託市場の最大の懸念材料です。
とはいえ、前述したように現物不動産マーケットに回復の兆しが見られるとともに、不動産投資信託のマーケットに金融機関や外国人投資家の資金が入ってくる可能性が高まっていますから、これから徐々に底固めの段階に移っていくでしょう。下位REITが浮上するチャンスは限られていますが、信用力の高い上位REITや、配当利回りの高い中堅REITの人気は高まってくると予想されます。これから不動産投資信託を購入するのであれば、買えるREIT、買えないREITの見極めが重要になってくるでしょう。
掲載日:2011年月01月12日
石澤卓志氏(いしざわ たかし)氏プロフィール
みずほ証券チーフ不動産アナリスト
石澤卓志氏(いしざわ たかし)氏
みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。
慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。
長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。



   
    

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