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エコノミスト柯隆氏に聞く 「シャドーバンキングと中国経済の行方」

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【著名人インタビュー】

エコノミスト柯隆氏に聞く
「シャドーバンキングと中国経済の行方」

中国のバブル崩壊懸念と共に話題になりつつある「シャドーバンキング」。日本では聞き慣れない言葉ですが、シャドーバンキングとは一体何なのでしょうか。中国経済に及ぼす影響は?成長率が7%に低下した中国経済の行方も含めて、富士通総研経済研究所主席研究員の柯隆さんに話を伺いました。
富士通総研経済研究所
主席研究員の柯隆氏
そもそも「シャドーバンク」とはどういう金融業態のことを指しているのでしょうか。
柯氏
まず、シャドーバンクという言葉については、正式な定義というものが存在しません。一般的には金融監督当局の監督を受けない証券会社、あるいはファンドなどのノンバンク金融機関を指すと言われていますが、中国にはこの手の概念の金融機関そのものが存在しない。なので、中国においてシャドーバンクという場合は、民間で行われている高利貸しを中心にした地下金融などの非正規金融システムのことを指すと考えられます。 「地下金融」などというと、何やら非常にいかがわしい組織が行っている非正規金融という印象を受けますが、中国の地下金融は、もちろんその手の組織もありますが、すべてがそうだということではありません。
要は金融監督当局の監督を受けない金融機関すべてが地下金融の概念に含まれますから、実にさまざまな金融業態が含まれます。マイクロファイナンスもそうですし、質屋、融資信用保証会社、私募投資ファンド、あるいは農村資金互助組織なども含まれています。ちなみに農村資金互助組織というのは、かつて日本に存在していた無尽講、頼母子講のようなものです。日本の場合はこうした講が相互銀行になり、さらに普通銀行に転換したという経緯があります。
シャドーバンクの規模は、どのくらいあるのですか?
柯氏
人民銀行が発表しているデータによると、2012年末現在、中国にはマイクロファイナンスを行っている会社が6,080社もあり、融資残高は5,921億元にも達しています。質屋は6,084社あり、質の残高が706億元。融資信用保証会社は8,590社あり、村レベルの資金互助組織は1万6,000箇所にも上ります。
シャドーバンクの何が問題なのでしょうか。
柯氏
いろいろ考えられますが、まず中央銀行の監督下に置かれていない金融システムですから、中央銀行の金融政策によるコントロールが全く効きません。正規の金融システムの外側で動いているのですから、当然のことです。
規制を受けないから、資金の貸し借りに関するルールも確立されていません。結果、借りたお金の返済が出来なくなった企業や個人は、トラブルに巻き込まれるリスクが高まります。きちっとした契約書を交わさずに、口約束で取引を行うという商慣習が根強く残っているため、トラブルはさらに深刻化する恐れがあります。
また金利も恐ろしく高い水準です。正規金融機関の場合、きちっと中央銀行の金利規制を受けていますから、表向き、お金を借りた側もそれほど高い金利負担を強いられずに済みます。ちなみに現在の水準で言うと、預金金利が年3%、貸出金利が年6%です。
これが現時点において、中国の正規金融機関が提供している金利水準なのですがシャドーバンクになると、一気に金利水準が跳ね上がります。昨年末時点では年45%。これでも非常に高いわけですが、2013年6月末時点におけるシャドーバンクの融資金利は年65%にまで上昇しました。
ここまで金利水準が跳ね上がると、中国の民営企業の経営そのものが維持できなくなります。これだけの金利で資金を調達しても、それに見合う利益が出せないからです。ある調査によると、中国では民営企業が設立されてから倒産するまでの「平均寿命」が4年半と言われています。これだけ、短命に終わる一因は、資金調達コストが高いことと関係があります。
どうしてシャドーバンクが出てきたのでしょうか。
柯氏
そうならざるを得ない状況があったからです。「改革・開放」政策のなかで、家計の可処分所得は徐々に増え、銀行に預金する需要が高まりました。それと共に、銀行は家計の預金を吸収するため、普通預金と定期預金に加えて、積立預金など貯蓄性の高い金融商品を開発しました。
しかし、大きな問題は、銀行の融資が相変わらず国営企業に向けられていたことです。当時、都市部周辺の農村には「郷鎮企業」と呼ばれる部品製造業の小さな会社がたくさん設立されましたが、それらは銀行から融資を受けることができず、親戚や村民からお金を借りるしかありませんでした。これがシャドーバンクの始まりと言われています。
1980年代の中国では、民営企業の存在そのものが「資本主義的である」という理由で、認められていませんでした。そのなかで、集団所有制の企業として何とか認められていたのが郷鎮企業です。それが90年代に入り、さらに経済が自由化されたことによって、本物の民営企業が設立されました。ところが前述したように、こうした民営企業でさえも、融資を受ける際にはシャドーバンクを利用するしかありませんでした。結果、中国経済の資本主義化と成長が進むにつれて、シャドーバンクの活躍の場が飛躍的に増え、現在のように極めて大きな融資残高を持つまでになったのです。
つまりシャドーバンクは悪い側面ばかりではなく、必要とされている側面もあったということですか。
柯氏
そうです。正規の金融機関にとって、少額の融資を行うことはコストに見合わず、リスク管理も難しくなります。そのため、正規金融機関は郷鎮企業など小規模経営の会社に対する融資には消極的であるばかりか、全く融資を行おうとしませんでした。その穴埋めとしてシャドーバンクが小規模の融資を行ったため、正規金融機関からすれば、コストとリスクを抑えることができました。その意味で、シャドーバンクの存在は必要だったというわけです。
もっとも、シャドーバンクのように金融監督当局の管理下に置けない金融業態というのは、経済がキャッチアップの段階にあった時には必要だったのかも知れませんが、ある程度、経済規模が大きくなった以上は、やはり正規の金融システムに組み入れる必要があります。日本の講なども、そうして正規の金融システムに組み入れられてきました。
その際の問題点としては、中国の金融市場改革が遅れているということです。つまり、国営銀行を民営化させる必要があるのですが、現状、国営銀行の民営化を推し進めると、経営が悪化する恐れがあります。そのため、中国政府としても国営銀行の民営化に踏み切れないわけですが、その問題がある以上、シャドーバンクを正規の金融システムに組み入れるのは困難です。
シャドーバンクの存在が金融不安につながるリスクは?
柯氏
その恐れは十分にあると思います。最近のシャドーバンクは、業態が大きく変わってきました。かつてのように民営の零細企業や個人に融資をするという形態が減少し、その一方でレバレッジを効かせ、より高いリターンを追求する投資が増えています。ビジネスで成功したお金持ちが多額の資金を出し合い、私募ファンドを組成して不動産投資を行っているのです。こうした私募ファンドの暗躍が、都市部での不動産価格の高騰につながりました。
ただ前述したように、私募ファンドを含めたシャドーバンクは、中国の金融規制監督の外にあるため、その活動が活発になることで、正規金融や経済全般に及ぼす影響が懸念され始めています。かつて、シャドーバンクは地下に潜っていたのが、徐々に正規金融とのつながりを持つようにもなってきています。この状態でシャドーバンクが破綻に至れば、正規金融にも悪影響を及ぼし、金融システムリスクに発展する恐れがあります。
そのような事態に陥らないようにするためにも、シャドーバンクをしっかり監督下に置くための制度整備が必要になってくるのです。
中国初の世界経済パニックが生じる恐れはありますか。
柯氏
現状、そのリスクは低いと見ています。確かにシャドーバンクの問題、国営企業、国営銀行の民営化問題など、中国経済を取り巻く諸問題点はたくさんありますが、問題の所在が明らかであれば、いずれ解決に向けて状況を改善させていくことは可能です。
実際、中国経済のファンダメンタルズが大幅に悪化しているかというと、決してそうではありません。政府債務残高もそれほど大きく積み上がっているわけではありませんし、自動車の生産台数も今年は2,000万台に達するでしょう。
ただ、かつてのように2ケタの経済成長は期待できません。が、それでも7%の経済成長率を持っています。その成長率を受け入れることが大事なのだと思います。
掲載日:2013年月09月06日

柯 隆(か りゅう)氏プロフィール

富士通総研経済研究所 主席研究員
1992年 愛知大学法経学部卒業
1994年 名古屋大学大学院経済学修士
1994年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年 富士通総研経済研究所主任研究員
2005年 同上席主任研究員
2007年 同主席研究員

【主な著書】
2010年中国経済攻略のカギ PHP研究所『Voice』編集部 2010年1月
華人経済師のみた中国の実力 日本経済新聞出版社 2009年5月 共著(朱炎、金堅敏) 中国の不良債権問題 日本経済新聞出版社 2007年9月
中国の統治能力 慶應義塾大学出版会 2006年9月
中国に出るか座して淘汰を待つか! 中経出版 2002年3月
最新中国経済入門(共著) 東洋経済新報社



 
   
    

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