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(特集)2014年の経済、投資戦略を占う!(全3回)エコノミスト加藤出氏に聞く「2014年 日本経済の行方」

【著名人インタビュー】

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アベノミクスは成功するのでしょうか。株価は11月にかけて上昇トレンド。しかし、今年4月には消費税率の引き上げが待ち受けています。また、海外に目を向けると、米国では今年2月に再び、債務上限の引き上げ問題が紛糾する恐れもあり、まだ予断を許さない状況が続きそうです。果たして、2014年の日本経済はどうなるのか。東短リサーチ代表取締役社長で、エコノミストの加藤出氏に話を伺いました。


11月に入って再び、日本の株価が動意付き始めました。日本の景気は堅調に回復していると見て良いのでしょうか。

東短リサーチ代表取締役
社長 加藤出氏
加藤氏

昨年11月にアベノミクスが話題になり始め、日銀も量的金融緩和を加速する方針を打ち出してきました。これによって、民主党政権とは違うというイメージを海外投資家にアピールし、今年4月には黒田日銀総裁による異次元金融緩和が実施されました。結果、株価は加速度的に上昇しましたが、これはアベノミクスによる効果であると共に、世界経済の動きに押し上げられた側面があることにも留意しておく必要があります。

たとえば米国は財政の崖問題、政府閉鎖問題がありながらも景気が腰折れせず、欧州ではECBのドラギ総裁が、昨秋ユーロを救うためには手段を選ばないと公言し底割れを防いだ。さらに中国では習金平体制の下、改革を行いつつも成長の最低線は確保する方針が打ち出されました。これらによって世界経済は、昨年秋以降から徐々に上向き始め、そこにアベノミクスがうまく乗れたわけです。

つまり、日本経済の裏側には常に海外経済があって、米国をはじめとする海外経済が堅調であれば、日本経済も堅調に推移し、その期待感から日本株も買われます。また、12月にFRBは大規模資産買入策、いわゆる量的緩和策の縮小を開始しましたが、同時にゼロ金利政策の長期化をアピールしたこともあって、、米国の株価は更に上昇、円安が進んで日本株も高騰しました。

日本の景気回復など日本固有の材料が好意的に受け止められているわけではないのでしょうか。
加藤氏

海外投資家による日本株の買いは、構造改革が前提です。つまり、第三の矢に対する期待を想定しての日本株買いなのですが、現状ではまだ、ここがやや不透明ですね。日経平均株価は12月下旬に1万6,000円台に乗せましたが、上昇を持続させるには日本の構造改革に対する海外投資家の評価が必要になります。

ただ、これを実行するのが、容易ではありません。世界銀行は毎年「ビジネスのし易さインデックス」を発表しています。世界の中で日本は以前は10位前後にいたのですが、今年は27位に落ちました。成長戦略で民間の活力を引き出していかねばならないのに、これでは方向が逆です。内訳をみると、「税金の支払い」は140位、「起業」のし易さでは120位でした。こういった状況では海外からの直接投資も増えにくいと言えます。少子高齢社会の加速によって日本の財政はどんどん厳しい状況に追い込まれていくので、単なる法人税減税ではなく、税収が全体に増えるような対策が必要です。そのなかで女性の活用が叫ばれていますが、同時に優秀な移民を積極的に受け入れて、日本でビジネスを起こしてもらって、税金を落としてもらう必要があるでしょう。

この1年で日本経済は明るくなったことは好ましいのですが、容易ならざる問題点が解消されたわけではないので、構造改革を進めていく姿勢を国内外の投資家に示していくことが大事です。

アベノミクスの最優先事項はデフレ経済からの脱却ですが、成功すると見ていますか。
加藤氏

そうですね。もちろん直接Jリートに投資している個人も多いとは思うのですが、それ以上に投資信託で、Jリート特化型と呼ばれるファンド・オブ・ファンズを購入している投資家が大勢いらっしゃいます。投資部門別で投資信託の買いが順調に増えているのは、投資信託を通じてJリート市場に投資している個人が多いということです。

東京オリンピック開催が決まったことによる効果なども見られますか。
加藤氏

日銀は、2015年までに消費者物価指数で2%の上昇を目標に掲げています。しかも、瞬間風速でそれを達成すればよいのではなく、2015年以降も安定的に2%の物価上昇を維持するということですが、その実現可能性はかなり厳しいと見ています。
2008年に消費者物価指数が2.4%まで上昇しましたが、この時の主因はガソリン価格の高騰でした。このような外部要因があれば2%の物価上昇になることもありますが、それは本当の意味で、デフレ経済からインフレ経済に転換できたとは言えません。
大事なのは、賃金の上昇によって消費意欲が刺激された結果、消費者物価指数が上昇することです。そのような賃上げが持続可能かどうかということを、しっかり考えていく必要があります。
幸いにして、今は円安の効果もあり、企業業績は徐々に上向いてきています。このなかで賃上げが出来るのかどうか。賃上げを継続できる収益構造を、企業がつくれるかどうかが、これから問われてきます。

消費税率が今年4月から引き上げられます。日本経済に及ぼす影響をどのように考えますか。
加藤氏

消費者の購買力が一時低下するという意味で、日本経済にとってはマイナスになるでしょう。 しかし、消費税率を引き上げず、何も手を打たずにいれば、日本の財政赤字は今以上に深刻な状態に陥ります。最近では、イタリアが目覚ましく財政の立て直しにまい進しているだけに、先進国の中で最悪の財政赤字国というレッテルを貼られかねません。

実際、しっかりとした第3の矢が出て来なければ、日本は単に財務省がどんどん国債を発行してお金をばら撒き、日銀は国債を片っ端から買い入れて金利上昇を抑えるという政策をやっているのに過ぎなくなります。これは相当にヤバイ話です。それだけに、財政規律をしっかりしておかないと、あっという間に世界から最悪の財政赤字国と見なされてしまいます。

日本は米国と異なって基軸通貨ではないので、国債を大量に発行し、それを中央銀行に買わせてファイナンスするという構造は、海外からはいずれネガティブな評価になるでしょう。先日、ドイツの財界幹部と話す機会がありましたが、彼らの多くは今の日本の政策をかなり危うく見ている様子でした。
日本株が目先上昇して欲しいと思っている短期売買の海外投資家は消費税引き上げを喜んでいない可能性がありますが、より重要な長期的なスタンスで売買する影響力が大きい海外のファンドに日本に投資してもらうには、財政再建を粛々と進めていくという姿勢を見せる必要があります。

消費税率の引き上げは、このように非常に微妙な問題をはらんでいます。消費税率はすでに引き上げの方向で決まっていますから、それによって景気の落ち込みをどこまで抑えられるかという点が、これからの関心事になるでしょう。
政府は5~6兆円規模の財政対策を打ち出してくるので多少、ネガティブな要素は薄まるでしょう。あとは第3の矢を地道に打ち出しながら日本経済の中長期的な成長イメージを提示して株価が急落しないようする必要があります。

先ほど、日本経済の裏には必ず米国をはじめとする海外経済があるとおっしゃいました。今、世界経済の環境はいかがですか。
加藤氏

日本経済の今後は、今までと同様、世界経済の動向に大きく左右されるでしょう。
2015年10月の2度目の消費税引き上げを実施するか否かを政府は今年12月に決めるでしょう。その際、7-9月のGDP成長率が大きな判断材料になります。その点でも、政府は今年4月の消費税引き上げの悪影響が短期間で収束することを願っているでしょうから、海外経済も順調に推移するのか、かなり気になるところと思います。

したがって、これからの日本経済を占ううえでも、米国、欧州、中国が今、どういう状況下にあるのかということを、しっかり考えておく必要があります。
まず米国ですが、クリスマス商戦はやや弱めにスタートしていますが、これは住宅とクルマの買い替えにお金を投じた家庭が今年は多かったことが影響しています。よって、全体としては家計の支出はそう悪くはないようです。雇用の回復は続いてはいるのものの、まだゆっくりです。ただ、今年は昨年のような賃金税の増税はないので、前年比でみればそれは景気にプラス要因です。また、年明けに不安視されていたティーパーティ系議員の再度の抵抗による政府閉鎖の懸念も、幸い、与野党の話し合いにより回避される模様です。

このため、基本的には今年の米経済は回復を持続させると思います。ただ、リスク要因は、新議長の下でのFRBの金融政策でしょう。いつまでも今のような緩和策を続けていると副作用が酷くなるため、FRBは早ければ今年の10月に量的緩和策を終了させると思います。しかし、それが新興国のマネーフローを変えて、それらの経済が失速することがあると、日本の輸出が大きく悪化する恐れがあります。この半年以上、日本からの輸出は円安にもかかわらずあまり伸びていません。そこにそういったショックが加わるとまずいので、イエレン新議長は市場にショックを与えないような適切なコミュニケーション政策の実施を期待したいところです。

次に欧州ですが、心配される南欧も力強さにはかけるものの回復傾向が続いています。北欧州に関してはドイツを中心に底堅い状況です。ただ、ユーロ高になると南欧の回復が折れる恐れがあります。それを避けようとドラギECB総裁が一段の金融緩和策を行うと、既に問題になり始めているドイツの住宅バブルが過熱するでしょう。ドラギは非常に悩ましい金融政策を強いられることになりますが、追加緩和はあっても、引き締めに転換することは今年はないと思われます。

最後に中国ですが、シャドーバンキングが心配されるものの、今は住宅価格が上昇しているため、金融システム危機がすぐに起きるという状態ではありません。ただ、住宅バブルが崩壊すれば、かなり深刻な影響が生じてきます。今後の中国経済のポイントは、11月の三中全会で習金平体制が打ち出した全面的かつ驚くほど野心的な改革方針をきちんと実施できるかにかかってくるでしょう。そうなれば、この改革は2001年のWTO加盟に匹敵する経済効果を中国にもたらし、住宅バブルの問題も吸収可能となってくると思われます。日本では三中全会を冷やかに報じていますが、欧米企業の中には「新たな成長が来る」と期待して色めき立っているところが多いです。とはいえ、長期的に考えれば、中国経済は高度成長から中程度の成長スピードに落ちるのは避けられません。そのなかで、経済構造をどのように変えていくのかが、問われてきます。少なくとも、今の国営企業を中心とした経済構造では、中国経済が直面している問題をクリアすることはできないでしょう。既得権益の調整ができるのかが注目されます。もちろん、構造改革には痛みが伴いますから、瞬間的に中国経済がスローダウンすることもあるでしょう。いかにして不安心理を高めることなく改革路線を推し進めるか。それが今後10年の中国経済には必要です。

となると、2014年の日本経済はどうなるでしょうか。
加藤氏

基本的には回復が続いていくシナリオを見ています。ただ、賃金の上昇は全体としては緩やかでしょうから、2015年に日銀が今の量的質的緩和策を終われることはないでしょう。海外でインフレが2%以上の国は、賃金が毎年それ以上持続的に上がっているのが見て取れます。また、消費税引き上げの悪影響が日銀が想定するよりも深くなるケース、海外経済が不安定になるケースでは、日銀が追加緩和に動いて経済をサポートしようとするでしょう。ただ、追加緩和策を行えば行うほど、出口政策は困難になります。今年末の中央銀行の総資産のGDP比は、FRBは26%前後になりそうですが、日銀は58%前後に達しそうです。その巨大な資産の中身の大半は日本国債です。15年以降も世界に類を見ない中央銀行の異様な膨張が日本で続く恐れがあります。「第一の矢」と「第二の矢」に過度に依存する政策は危険ですから、「第三の矢」に移行していかねばならないでしょう。

ひとつ気になるのは、FRB議長交代時のジンクスです。ボルカーからグリーンスパンに代わった年に、ニューヨーク株式市場の大暴落がありました。バーナンキに代わった翌年にサブプライム問題が火を噴きました。議長の交代は、それまでの「膿み」を噴出させることがあります。今回はそういうジンクスが起きないことを願っています。海外のリスク要因の打撃を和らげるには、介護や医療などをはじめとする改革路線を、安倍首相がひとつひとつしっかり打ち出していけるかどうかという点にかかっています。



加藤 出(かとう いずる)氏プロフィール
東短リサーチ代表取締役社長、チーフエコノミスト。

東短リサーチ(株)代表取締役社長チーフエコノミスト。1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを兼務後、2013年2月より現職。 マネーマーケットの現場の視点から日銀、FRB、ECB、BOE、中国人民銀行などの金融政策を分析している。2007~2008年度東京理科大学経営学部非常勤講師。2009年度中央大学商学部兼任講師。
著書に「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社、2001年)、「東京マネーマーケット」(有斐閣、共著、2002年、2009年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社、2004年)、「バーナンキのFRB」(ダイヤモンド社、共著、2006年)など。また、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済、週刊エコノミスト、日経ヴェリタス、朝日新聞、ニッキンなどに寄稿。テレビ東京「モーニング・サテライト」、「マネーの羅針盤」、NHK「NEWS WEB」、TBS「ビジネス・クリック」などに出演。

掲載日:2014年1月6日



 
   
    

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